【バレエ】後藤晴雄、入魂の由良之助「ザ・カブキ」東京バレエ団
ベジャールの「ザ・カブキ」は常々一度観てみたいと思っていたのですが、今回都合がついて観ることができました。なかなか面白かったです。今回の公演のNBSの公式サイトはこちらです。
「ザ・カブキ」の原作は、歌舞伎の「仮名手本忠臣蔵」です。歌舞伎ファンのぽん太にはおなじみの演目。日本に関心の深かったベジャールがどうバレエ化したのか、とても楽しみでした。黛敏郎の音楽も、「涅槃交響曲」など、普段はあまり聴けない曲が入っております。ちなみに「ザ・カブキ」の初演は1986年、東京バレエ団によって上演されました。また「仮名手本忠臣蔵」に関しては、例えばこちらの「独立行政法人」日本芸術文化振興会のデジタルライブラリーをどうぞ。なんか、仕分けした方がいい気がするサイトですが……。
冒頭の現代の若者が過去にタイムスリップして行くという設定は、今となってはちょっと古くさく感じます。舞台上にテレビが置かれ、若者たちが遊んだり、歯を磨いいたり、一斉にロボットのように仕事をしたりという描写は常套的でした。
その後は、兜改め、おかる・勘平の逢瀬、松の廊下の刃傷、判官切腹、城明け渡し、山崎街道と、忠臣蔵のストーリーが足早に展開して行きます。感情移入する間もなく塩冶判官が切腹。ぽん太は歌舞伎で何度も観てますが、筋を知らない一般バレエ・ファンは理解できたでしょうか?山崎街道では、おなじみのイノシシもお目見え!斧定九郎が「五十両〜」とばかりに財布を口にくわえます。
また、定式幕(じょうしきまく:黒・緑・茶の縦縞の幕)が引かれたりし、附け打ち(つけうち:舞台上手でバタバタバッタと木で音を出すこと)もあります。もちろん黒衣(くろこ)も登場。小道具の受け渡しをしたり、衣装を見栄えのいいように持ち上げたり、ダンサーをリフトしたりします。ぽん太は以前にノイマイヤーの『人魚姫』を観たとき、能や歌舞伎が取り入れられ、黒衣も使われていることに驚いたのですが、ベジャールの先例があったのですね。あ〜無知はイヤだ。ちなみに『人魚姫』の初演は2005年、『ザ・カブキ』は先ほど書いたように1986年です。細かいことを言えば、山中であることを現す「山おろし」という太鼓の効果音(ドドンドンドンドンってやつです)が、勘平の家の場面で使われているといった間違いはありますが、は大したことじゃありません。
バレエとしての面白さは、後半になってから出て来たように思います。一力茶屋でのしっとりとしたパ・ド・ドゥもよかったし、討ち入りの男性群舞は迫力がありました。東京バレエ団って、こんなに男性ダンサーがいるんですか?他から借りて来たのでしょうか。女性客には、赤ふん一丁の男性ダンサーによるサービスつき。ただ最後の日の丸を背景に切腹する場面は、ちょっと勘弁してほしい気持ちでした。
踊りとしては、高橋竜太の判内が、妖しさやコミカルさを見せつつも、美しい動きがすばらしかったです。大星由良之助の後藤晴雄も気持ちが入った表現力ある踊りで、1幕の最後のソロも思わず引き込まれました。これでもう少しダンスとしての面白さがあるといいのですが。水香ちゃん、もっと見せ場があるといいのに。
なかなか面白かったし、歴史的な作品を見れてよかったです。外人さんもたくさん観に来てました。もう一息ダンスとしての面白さがあれば……。
東京バレエ団
「ザ・カブキ」(全2幕)
2010年4月25日、Bunkamuraオーチャードホール
振付:モーリス・ベジャール
音楽:黛敏郎
大星由良之助:後藤晴雄
直義:柄本武尊
塩冶判官:平野玲
顔世御前:上野水香
力弥:井上良太
高師直:木村和夫
判内:高橋竜太
勘平:長瀬直義
おかる:小出領子
現代の勘平:梅澤紘貴
現代のおかる:高村順子
石堂:宮本祐宜
薬師寺:安田峻介
定九郎:松下裕次
遊女:西村真由美
与市兵衛:永田雄大
おかや:田中結子
お才:井脇幸江
ヴァリエーション1:松下裕次
ヴァリエーション2:長瀬直義
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