【バレエ】都ちゃん凄いけど、マクミラン振付けはちょっと病的?「ロミオとジュリエット」英国ロイヤル・バレエ団
いや〜、吉田都ちゃん、すばらしかったです。小惑星探査機「はやぶさ」、サッカー・ワールドカップ、吉田都ちゃんと、日本人が世界で活躍しているのを見ると、なんか自信と元気が湧いてくるな〜。客席も大興奮。暖かい拍手のカーテンコールが何度も繰り返されました。公式サイトはこちらです。
吉田都は、ロイヤルのなかに入ると、本当にちっちゃくてかわいいです。最初の登場シーンで乳母とじゃれているところなど、あどけなくて、ぬいぐるみ持ってたりして、まるで小学生みたいでした。ロミオのスティーヴン・マックレーも若くて小柄。しかしシェイクスピアの原作では、ジュリエットは14歳(!)ですから、実はこれが本来の年齢設定に近いのかもしれません。
この若い二人が恋をし、そして悲劇の主人公へと変わっていくわけですね。バルコニー・シーン、すばらしかったです。若い二人が、恋という生まれて初めての感情に戸惑いながらも、悦びに身を委ねていくという感じでしょうか……。別に悲しいシーンじゃないですけど、おやじタヌキのぽん太も、目がうるうるしてしまいまいした。
バレエの動きは、なんか日本人がやるとぎこちないのに、欧米人だととても自然に感じます。ぽん太は、バレエの身振りは欧米人の身体構造にしっくりくるように作られているので、日本人ダンサーがいくら頑張っても、欧米人にはかなわないのではないかと思ってました。しかし吉田都は、日本人的な身体性を持ちながらも、バレエとしてすばらしいものでした。日本人もやれるんですね!
また、踊りだけでなく演技力もすごかったです。睡眠薬を飲む場面や、ラストシーンなど、とっても感動的でした。
ただ、マクミランの振付けには少し違和感を感じました。先日の「うたかたの恋」と同じようなおどろおどろしさが、本日の「ロミオとジュリエット」にも感じられました。ジュリエットがパリスを嫌がる様子は、恐怖症を思わせる病的なところがあります。ジュリエットは家族から、さらに家族が体現する社会全体から、すっかり浮き上がっています。またラストのロミオとジュリエットのパ・ド・ドゥも、遺体(仮死状態ではありますが)と踊るというのが猟奇的ですし、リフトされてぐったりしている様子があまりに生々しいです。表現がリアルすぎて、劇として距離感をもって見ることがでず、悲劇を「楽しむ」ことができませんでした。また、ロレンスの伝言がロミオに伝わらない、というシーンが省略されてました。このシーンがあることによって観客は、劇が悲劇的結末に向かって突き進んでいくのを、はらはらどきどきしながら見守ることになるわけです。マクミランは、ドラマチックな構成よりも、一つひとつの場面の迫真性に重きを置いていると思いました。
英国ロイヤル・バレエ団
「ロミオとジュリエット」
2010年6月28日ソワレ 東京文化会館
振付:ケネス・マクミラン
音楽:セルゲイ・プロコフィエフ
美術/衣裳:ニコラス・ジョージアディス
照明:ウィリアム・バンディー
ジュリエット:吉田都
ロミオ:スティーヴン・マックレー
マキューシオ:ブライアン・マロニー
ティボルト:トーマス・ホワイトヘッド
ベンヴォーリオ:セルゲイ・ポルーニン
パリス:ヨハネス・ステパネク
キャピュレット公:ギャリー・エイヴィス
キャピュレット夫人:ジェネシア・ロサート
エスカラス(ヴェローナ大公):ベネット・ガートサイド
ロザライン:タラ=ブリギット・バフナニ
乳母:クリステン・マクナリー
僧ロレンス:アラステア・マリオット
モンタギュー公:アラステア・マリオット
モンタギュー夫人:ローラ・マッカロク
ジュリエットの友人:リャーン・コープ、べサニー・キーティング、イオーナ・ルーツ、
エマ=ジェーン・マグワイア、ロマニー・パジャク、サマンサ・レイン
3人の娼婦:ヘレン・クロウフォード、フランチェスカ・フィルピ、ラウラ・モレーラ
マンドリン・ダンス:ホセ・マルティン、
ポール・ケイ、蔵健太、ミハイル・ストイコ、アンドレイ・ウスペンスキー、ジェームズ・ウィルキー
舞踏会の客、街人たち:英国ロイヤル・バレエ団
指揮:ボリス・グルージン
演奏:東京フィルハーモニー交響楽団
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