【演劇】三谷幸喜のシリアス・サスペンス!?「ろくでなし啄木」
三谷幸喜ということで行ってきました。公式サイトはこちらです。三谷と俳優3人のコメント動画付き!
今回の舞台はお笑い満載のドタバタではなく、シリアス・サスペンス風。もちろん随所にギャグもちりばめられており、期待を裏切りません。藤原竜也(啄木)、中村勘太郎(啄木ファンのテキヤのにいちゃん)、吹石一恵(啄木の愛人の女給)の3人が温泉宿に泊まっているという設定で、まず、吹石一恵の視点から一夜の出来事が演じられます。そして休憩をはさんで第二部になると、同じ出来事が、今度は勘太郎の視点から演じられるという趣向。
舞台装置は、左右に延びる廊下があって、その手前と向こう側に対称的に客室がある構造。第1幕では、手前側が藤原竜也と吹石一恵の部屋、向こう側が勘太郎の部屋になっておりますが、第2幕では反対側から見ている設定となり、手前が勘太郎、向こう側が藤原と吹石の部屋です。
同一の出来事の表と裏を見て、「ここではホントはこう思ってたのか」とか、「陰でこんなことが行われてたのか」とかいうあたりの面白さは、三谷幸喜の真骨頂。非常によくできていて、よく考えつくなと思います。
これで終わりかと思ったら、最後に既に死んでいる啄木が現れて、第3の真相を語ります。芥川龍之介の『薮の中』を思わせます。しかし残念ながら、この3番目の部分が、いまいちインパクトがありませんでした。あっと驚く意外な真相が欲しかったです。また、あの一夜の体験によって、啄木の心境が変化し、田舎から出て来た妻子と暮らす決意をするというあたりに、心理的な説得力がありませんでした。
藤原竜也、女たらし・男たらしのろくでなしぶりがよく出てました。こちらのasahi.comのサイトにインタビューが出てますが、「三谷さんの演劇作品も演出を受けるのも初めて」とのこと。あれれ、大河ドラマの『新撰組!』は?そうか、作は三谷幸喜だけど演出は違ったのか……。吹石は、舞台は初めてとのことですが、純な感じでありながらフェロモンが出ていてなかなかよかったです。勘太郎、汗をかきながらの大熱演ですが、ちょっと力を入れすぎか。ふっと力を抜いて笑わせる、父ちゃんの芸を盗め!でも、くれぐれも歌舞伎の道を踏み外さないようにお願いします。
サスペンスあり、笑いあり、感動ありで、とても楽しめました。
「ろくでなし啄木」
天王洲銀河劇場 2011年2月24日
作・演出 三谷幸喜
出 演 藤原竜也 ・ 中村勘太郎
With 吹石一恵
音楽 藤原道山
美 術 堀尾幸男
照 明 服部 基
音響 井上正弘
衣裳 黒須はな子
ヘアメイク 河村陽子
舞台監督 松坂哲生
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