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2011/06/27

【映画】こわおもしろい『ブラック・スワン』(ネタバレ注意)

 「バレエ」と「狂気」ということで、見てきましたが、こわおもしろかったです。公式サイトはこちら、goo映画はこちらです。
 バレリーナのニナは、「白鳥の湖」の公演で主役の座を射止めます。内気で神経質な彼女は、元バレリーナのステージママに牛耳られており、純真な「白鳥」の踊りはテクニックも演技も完璧ながら、「黒鳥」を踊るための妖艶さや邪悪さがありません。公演に向けて踊りこむなか、彼女の精神は次第に異常をきたしていきます……。
 とにかく、ニナを演じるナタリー・ポートマンがすばらしかったです。前半の内向的でおどおどした感じと、後半のうってかわった鬼気迫る姿が、見事に演じ分けられておりました。バレエ・シーンもすばらしかったです。子供の頃バレエを習っていたことはあるそうですが、その後ダンスやバレエのトレーニングを継続していたわけではなく、この撮影に向けて1年間の特訓をしただけなんだそうです。それだけでこんなに踊れるとは。身体もかなり絞り込んだとのことで、体型もバレリーナそのものでした。すごい女優ですね、初めて見ました、と思ったら、ググッてみたら『レオン』や『スター・ウォーズ』に出てたとのこと。どっちも見てるはずだがね。『レオン』って、あの赤毛の女の子の役か?ぜんぜんわかりませんでした。
 さらに彼女は、ハーバード大学で心理学を学んだらしい。なるほど、心理的な変化がうまく演じられておりました。当初の、ステージママの支配下にあって、感情に乏しく、世間知らずでおどおどしている状態。彼女は葛藤を自覚することもできず、小児のように背中を掻きむしることしかできません。
 そこから自我の芽生え、母親との闘いとなっていくのですが、ヴェロニカの挑発に乗るかのようにして出かけた夜遊びで、麻薬の誘いを一度は断ったものの、こっそり飲み物に入れられて気がつかずに飲んでしまいます。ここがぽん太にとっては残念な部分で、以後の幻覚と現実が入り乱れる場面が、なんかぽん太には薬物中毒の症状に見えてしまいました。明瞭で現実的な視覚体験を伴った幻覚・妄想状態は、薬物による精神病でよく見られます。例えば覚せい剤精神病では、電信柱の影に、自分を見張っている警察官が見えたりします。映画のなかの場面が、どこまでが現実で、何処からが彼女の狂気が生み出したものなのか、見ている方も次第に混乱してきて、こちらの精神状態がアヤシくなってくるような感じだと良かったのですが、「クスリの影響」という印象を受けてしまいました。推測ですが、映画の製作にあたって、麻薬体験者がアドバイスをしていたのでは。
 ということで、殺したと思ったら実は殺してなかったとか、シャワールームのドアの下から血が流れ出しているのは錯覚だった、とかいうシーンは、ぽん太はあまり怖くありませんでした。壁一面に張られた絵が動いて笑っているように見えるシーンなどは、ちょっと陳腐でがっかりしました。実はぽん太が一番怖かったのは、ニナが遅くまで残って練習している時に、伴奏をしていたピアニストが急に演奏を止めたシーン。ニナが「何で止めたの」と聞くと、「こんな遅くまでやってられるか」みたいなことを言います。なんてことはない普通の会話なんですが、不意打ち、思いがけない拒絶と敵意、取り残されたような不安・恐怖感が感じられ、恐ろしかったです。
 バレエ・シーンには、アメリカン・バレエ・シアターが協力をしているそうな。映画中の『白鳥の湖』の舞台セットがやけに簡素に見えましたが、あんなもんなんでしょうか?もっと豪華にすればいいのに。
 しばらくは、バレエで『白鳥の湖』をみるたんびに、この映画を思い出しそうです。


「ブラック・スワン」(Black Swan)
監督 ダーレン・アロノフスキー
製作年 2010年
製作国 アメリカ

キャスト(役名)
ナタリー・ポートマン(Nina Sayers)
ヴァンサン・カッセル(Thomas Leroy)
ミラ・クニス(Lily)
バーバラ・ハーシー(Erica Sayers)
ウィノナ・ライダー(Beth Macintyre)
バンジャマン・ミルピエ(David)
クセニア・ソロ (Veronica)
クリスティーナ・アナパウ (Galina)
セバスチャン・スタン(Andrew)
トビー・ヘミングウェイ(Tom)

脚本 マーク・ヘイマン
アンドレス・ハインツ
ジョン・マクラフリン
音楽 クリント・マンセル

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