【歌舞伎】「舞鶴雪月花」が見応えあり。平成中村座2012年3月昼の部
2月の新橋演舞場に続いて、3月は平成中村座での勘九郎襲名披露。
最初は海老蔵の「こども暫」。だだっ子みたいな鎌倉権五郎を初めて見た時は、思わず笑ってしまいましたが、改めて観るとなんだかこれでもよいような気がしてくるから、人間の適応力というものは不思議です。でも、高音が鼻声になるのは、やはり聞き苦しいです。鼻腔に響かせないで、地声でやればいいのに。
続いて「一條大蔵譚」。直球勝負の勘九郎の作り阿呆ぶりは、「一生懸命たわけております」という感じで、お父さんみたいな思わず吹き出してしまうような愛嬌はないのですが、これが勘九郎の持ち味なのかもしれません。
で、ぽん太が苦手とする所作事の、「舞鶴雪月花」が、一番見応えがありました。「さくら」では、幕が開くと舞台一面が桜の花。そこに幹からひょこっ覗いた七之助の満面の笑顔が、まさにパッと花の咲くごとくで、客席からどよめきがあがりました。「暫」の女なまず、「一條大蔵譚」のお京とはまた違った、若い娘らしい色気の漂う踊りでした。続く「松虫」は、仁左衛門と、孫の千之助の共演。孫かわいやの情に流されず、秋らしい冴えざえとした風情のなかに深い情愛が漂っていました。最後に花道のすっぽんで消えて行くときの仁左衛門の凛とした表情が、目に焼き付いております。
そして勘三郎の「雪達磨」が秀逸。舞台上には雪だるまがひとつ。しばらく音楽が流れた後、右手が出て来てちょと動いて引っ込み、またしばらくすると左手が出て来てちょと動いて引っ込みます。ただそれだけでなのですが、手の動きといいタイミングといいリズム感といい、惚れぼれ浮きうきしてしまいます。バレエの「ボレロ」(Youtube)は、暗闇のなかにスポットライトで照らされた手の動きで始まりますが、それに勝るとも劣らないすばらしさです。次いで雪だるまの後ろからひょっこり勘三郎が現れますが、化粧が白塗りの顔に炭団のような目鼻口で、オバQというか、ハットリ君というか、思わず吹き出してしまいました。踊りも滑稽ながらも味があり、最後に日が昇って溶けそうになるのを、雪をかき集めて必死に防ごうとしている姿も、おかしいのに哀れさも漂わせていました。う〜ん、エンターテナー勘三郎、完全復活か?
中村勘太郎改め
六代目中村勘九郎襲名披露
平成中村座 三月大歌舞伎
平成24年3月・昼の部
一、歌舞伎十八番の内 暫(しばらく)
鎌倉権五郎 海老蔵
那須九郎妹照葉 七之助
鹿島入道震斎 猿 弥
桂の前 吉 弥
成田五郎 男女蔵
加茂次郎 進之介
清原武衡 我 當
二、一條大蔵譚(いちじょうおおくらものがたり)
檜垣
奥殿
一條大蔵長成 勘太郎改め勘九郎
常盤御前 扇 雀
八剣勘解由 亀 蔵
鳴瀬 小山三
鬼次郎女房お京 七之助
吉岡鬼次郎 仁左衛門
三、舞鶴雪月花(ぶかくせつげっか)
<上の巻> さくら
桜の精 七之助
<中の巻> 松 虫
松虫 仁左衛門
同 千之助
<下の巻> 雪達磨
雪達磨 勘三郎
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