猛暑のなか、行ってきましたロイヤル・ガラ。とっても質の高い公演でした。公式サイトはこちらです。
幕開きの「ラ・ヴァルス」からぽん太はすっかり魅了され、目を見開き口もあんぐりという状態になってしまいました。「ラ・ヴァルス」は曲としては生演奏も含めて何度も聞いておりますが、バレエを見たのは初めてでした。これまで頭のなかで想像していた以上にすばらしかったです。
「ラ・ヴァルス」はフランス語で「ワルツ」という意味ですが、初版の楽譜には、次のような標題がつけられていたそうです。「渦巻く雲の中から、ワルツを踊る男女がかすかに浮かび上がって来よう。雲が次第に晴れ上がる。と、A部において、渦巻く群集で埋め尽くされたダンス会場が現れ、その光景が少しずつ描かれていく。B部のフォルティッシモでシャンデリアの光がさんざめく。1855年ごろのオーストリア宮廷が舞台である」(Wikipedia)。今回の舞台では、雲の合間からダンサーたちが浮かび上がって来る様子が、見事に表現されていました。そして女性の黒いグラデーションの入った衣装や、色調・明暗の具合は、ドガの絵を彷彿とさせる美しさでした。
今回の振り付けはアシュトンでしたが、もともとはどうだったんでしょう。上にリンクしたWikipediaによれば、「ラ・ヴァルス」はディアギレフの依頼を受けて作曲したものでしたが、できあがった曲を聴かせたところバレエには不向きだと拒否され、以来二人の仲は悪くなったそうです。この曲のバレエとしての初演は、はっきりしないそうです。いったいどのような振り付けだったんでしょうね。
ラベルのこの曲は、最初こそウィーン風の流麗なワルツですが、だんだんと爆発音がも加わって崩壊を呈していきます。しかし今回のアシュトンの振り付けは、それを「ダイナミックさ」に変え、最後まできっちりと整ったスタイリッシュな群舞に仕上げてました。なんかイギリスのバレエは、「ロミオとジュリエット」や「シンデレラ」、先日の「不思議の国アリス」もそうですが、優雅でスタイリッシュなものの裏に、おどろおどろしさ、不安な感じを平気で内包しているように感じられます。
ダイナミックな群舞ですっかり気分が良くなったところで、次の演目は「コンチェルト」。気品あるパ・ド・ドゥで、ハミルトンのポーズの美しさが目を引きました。「クオリア」はコンテンポラリーの作品で、キレとタメがありました。「アゴン」はストラヴィンスキーの現代音楽風の曲に振り付けたバレエ。ゼナイダ・ヤノウスキーの貫禄はさすがでしたが、なんか動きがカクカクしていて、振り付けが退屈でした。あとで見たらバランシンの振り付けとのこと。確かにストラヴィンスキーの「音」はカクカクしてましたが、それが表現する持続的な情緒があったと思います。しかしバランシンの振り付けはカクカクばかり取り上げ、情緒が表現されてなかったような気がします。
「雨の後に」は「不思議の国のアリス」の振り付けをしたウィールドンの振り付け。アルヴォ・ペルトの音楽にのせたしっとりとした踊りで、とても雰囲気がありました。「ドン・キホーテ」第3幕のパ・ド・ドゥでは、スティーブン・マックレーのテクニックが光りました。スペインっぽさはありませんでしたが、ジャンプや回転がすばらしく、特に連続回転ジャンプから前後開脚ジャ〜ンプという技(いつもながら専門用語がわからず申し訳ありません)が見事でした。ロベルタ・マルケスは長いバランスもを見せましたが、一部ふらつきも。
前半の〆は「うたかたの恋」第3幕より。とてもドラマチックで、コボーのルドルフははまり役で、以前に全幕でも見ましたが、コジョカルのマリー・ヴェッツェラ役の迫真の演技には驚きました。ぽん太はコジョカルは可愛らしい印象しか持ってなかったので。
第二部に入り、「白鳥の湖」のパ・ド・カトル。最初「4羽の白鳥」と間違えて、「なんか渋い演目だな〜」と思ってたのですが、全然違ってました。原曲でいうと3幕のパ・ド・シスの音楽に振り付けた4人の踊りです。よく聞く曲としては、黒鳥のヴァリアシオンで使う蛇使いみたいな曲や、たまに32回転で使うパ〜ラ〜パ〜ラパパパの曲が入ってました。振付けは地味。
「温室にて」は歌手が舞台上で歌を歌います。振り付けがけっこう地味なので、歌の方に目が行ってしまいました。「春の声」は、ヨハン・シュトラウスのワルツに乗せた流麗な踊り。はちきれんばかりの笑顔が可愛い崔にピッタリでした。「眠れる森の美女」の目覚めのパ・ド・ドゥは、金子扶生が踊りました。今夜のガラ、日本人が多かったですが、日本公演ということで故郷に錦を飾るという配慮でしょうか?日本人が外国のバレエ団で大勢活躍していることは、うれしい限りです。「ジュビリー・パ・ド・ドゥ」では、「不思議の国アリス」でハートの女王を怪演したモレーラが、明るく生きいきと踊ってました。「マノン」第1幕第2場のパ・ド・ドゥ。ベンジャミンとアコスタが、素晴らしいテクニックで愛の高まりを見事に表現しておりました。完璧な踊りを見た感じでした。最後は「シンフォニー・イン・C」の最終楽章。ぽん太はこれまで日本人でしか見たことがなくって、くるくるちまちましたダンスかと思ってたのですが、すごくダイナミックで迫力があるのに驚きました。
オケは東京シティ・フィル。なんかNBSのガラはセミプロみたいなオケが多かったですが、さすが東京シティ・フィルのクラスだと迫力が違います。NBSさん、今後もよろしくお願いします。
英国ロイヤル・バレエ団<ロイヤル・ガラ>
2013年7月10日 東京文化会館
【第一部】
「ラ・ヴァルス」
振付:フレデリック・アシュトン/音楽:モーリス・ラヴェル
小林ひかる、平野亮一、
ヘレン・クロウフォード、ブライアン・マロニー、
ローラ・マカロック、ヨハネス・ステパネク
「コンチェルト」 第2楽章
振付:ケネス・マクミラン/音楽:ドミートリ―・ショスタコーヴィチ
メリッサ・ハミルトン、ルパート・ペネファーザー
ピアノ:ケイト・シップウェイ
「クオリア」
振付:ウェイン・マクレガー/音楽:スキャナー
リャーン・ベンジャミン、エドワード・ワトソン
(※特別録音された音源を使用)
「アゴン」 パ・ド・ドゥ
振付:ジョージ・バランシン/音楽:イーゴリ・ストラヴィンスキー
ゼナイダ・ヤノウスキー、カルロス・アコスタ
「雨の後に」
振付:クリストファー・ウィールドン/音楽:アルヴォ・ペルト
マリアネラ・ヌニェス、ティアゴ・ソアレス
ヴァイオリン:高木和弘
ピアノ:ロバート・クラーク
「ドン・キホーテ」 第3幕よりパ・ド・ドゥ
振付:マリウス・プティパ/音楽:ルートヴィク・ミンクス
ロベルタ・マルケス、スティーヴン・マックレー
「うたかたの恋」 第3幕より
振付:ケネス・マクミラン/音楽:フランツ・リスト
アリーナ・コジョカル、ヨハン・コボー、リカルド・セルヴェラ
【第二部】
「白鳥の湖」 パ・ド・カトル
振付:フレデリック・アシュトン/音楽:P. I. チャイコフスキー
エマ・マグワイア、高田茜
ダヴィッド・チェンツェミエック、ヴァレンティノ・ズケッティ
「温室にて」
振付:アラステア・マリオット/音楽:リヒャルト・ワーグナー
サラ・ラム、スティーヴン・マックレー
メゾ・ソプラノ: マリア・ジョーンズ
「春の声」
振付:フレデリック・アシュトン/音楽:ヨハン・シュトラウスⅡ世
崔由姫、アレクサンダー・キャンベル
「眠れる森の美女」 目覚めのパ・ド・ドゥ
振付:フレデリック・アシュトン/音楽::P. I. チャイコフスキー
金子扶生、ニーアマイア・キッシュ
「ジュビリー・パ・ド・ドゥ」
振付:リアム・スカーレット/音楽:アレクサンドル・グラズノフ
ラウラ・モレーラ、フェデリコ・ボネッリ
「マノン」 第1幕第2場よりパ・ド・ドゥ
振付:ケネス・マクミラン/音楽:ジュール・マスネ、編曲:レイトン・ルーカス
リャーン・ベンジャミン、カルロス・アコスタ
「シンフォニー・イン・C」 最終楽章
振付:ジョージ・バランシン/音楽:ジョルジュ・ビゼー
サラ・ラム、ヴァレリー・ヒリストフ
マリアネラ・ヌニェス、ティアゴ・ソアレス
崔由姫、アレクサンダー・キャンベル
イツァール・メンディザバル、リカルド・セルヴェラ
指揮者:ボリス・グルージン、ドミニク・グリア
オーケストラ: 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
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