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2013年7月の10件の記事

2013/07/30

【東日本大震災】石巻は2年たっても復興がすすんでニャイ!

Img_5465_2 東日本大震災のあと、その年の5月下旬にぽん太とにゃん子は松島を訪れ、津波の猛威を目の当たりにしました(そのときの記事はこちら)。その時は、物見遊山で行くのが気が引けて、石巻まで足を伸ばすことができませんでした。しかしあれから2年たったので、その後の復興の様子を見る意味もこめて、6月下旬に石巻に行って来ました。
Img_5374 石巻というと、石ノ森萬画館の被災と再開がよくとりあげられますが、その近くにある旧石巻ハリストス正教会を話題にする人は多くありません。この教会は1879年(あるいは1880年)に造られたもので、現存する最古の日本の教会建築です。1978年の宮城県沖地震で被災し、新しく建て替えられることになったのを機に、昔の建物が現在の場所に移築・復元されました。そして今回、東日本大震災で再び壊滅的な損傷を受けましたが、いまだ再建には手が着いていないようです。
Img_5376 石巻まちなか復興マルシェ。復興をめざして新たな観光拠点として作られたものですが、平日であったせいか、ちょっと寂れた雰囲気でした。
Img_5462 石巻漁港。トラックを追いかけるカモメの大群。魚市場の建物は、一部を除いてかなり再建されておりました。
Img_5467 旧北上川を渡って門脇地区に入ります。津波による被害が大きかったところです。一面の野原ですが、以前は住宅地だったところでした。
 記事の冒頭の写真は、この近くにあった車のスクラップの集積場です。
Img_5387 報道でよく見かけた「がんばろう!石巻」の看板。もともとは、この場所に店を開いていた人が、廃材などを使って個人的に作ったものだそうです。向かって左にあるポールの先端が、ここを襲った津波の高さです。想像を絶するとしか言いようがありません。向かいの仮設商店で地元の産物を売っている人に話しを聞いたところ、最初は「これ以上何を頑張れって言うんだ」という思いもあり、詰めかけるマスコミに対しても「自分たちの不幸を仕事のネタにしやがって」などという気持ちが正直あったそうです。「でも今はもう二年もたったんだから、観光客にも来てもらわないと」と言う表情には、まだ笑顔はありませんでした。
Img_5469 山側の方では仮設住宅も見かけましたが、写真を撮る気にはなりませんでした。あれから2年もたって、ちっとも復興がすすんでいない状況に、ぽん太も怒りと悲しみを感じました。復興予算がまったく違うところで使われていることも、ぽん太は納得できません。「失望」という気持ちがわき起こりそうになるのを、必死に抑えました。

Img_5472 さて、オマケです。仙台松島道路(三陸自動車道)の松島大郷インター付近から見えた、不思議な煙突。この造形は得点が高いです。ぐぐってみると、松島町初原浄水場の給水タンクのようですが、詳しい情報はありません。う〜ん、もっと話題になってもよさそうなのに。謎です。
Img_5475 美味しい牡蠣でも食べたいと思って塩釜水産物仲卸市場を訪ねたのですが、時間が遅すぎて何もありませんでした。たまたま通りかかった、しおがま・みなと復興市場(たとえばこちらをどうぞ)の「いとう水産」で、ウニとカキを戴きました。新鮮で美味しかったです。

2013/07/29

【旅館・海鮮】もうちょっと高いコースにすればよかったヨ・追分温泉(★★★★)

Img_5397_2
 6月下旬の話しが続いてますが、月山から車で石巻に流れ、追分温泉に泊まりました。石巻から車で小一時間の山中にありますが、海鮮料理が評判の宿です。公式サイトが見当たらないので、石巻観光協会のページにリンクしておきます(こちら)。
 Img_5457 石巻市内から車で北上します。次第に道が細くなり、心細くなってきたところで宿の前に出ます。
Img_5455 山の中の一軒宿にしては敷地が広く、木造の建物が分教場のような趣きです。
Img_5456 玄関前には2台のクラシックカーが。宿のご主人の趣味でしょうか?
Img_5430 内装もシンプルかつ明るく賑わっている感じです。布団は、折り畳んであるのを自分で広げるシステムです。多くの客を安価で受け入れているという感じですが、まったく不愉快さはなく、甲斐がいしさを感じます。
Img_5391 こちらが客室です。軽くて素っ気ない感じが心地よい和室です。歓楽温泉旅館風の媚はなく、湯治風のボロさもありません。
Img_5396 お風呂も明るく広々しております。冒頭の写真もご覧下さい。浴槽はカヤの木で作られているそうです。お湯は無色透明ですが、残念ながらカルキの匂いが強いです。泉質ですが、館内に掲示が見当たりません。ググってみると、温泉法に該当していないという説もあり、ちょっと疑問があるところ。
Img_5404 夕食は部屋食でいただきました。お造りは新鮮で美味しかったですが、あまり目新しい食材はありませんでした。左下に写っているウニのお料理や、貝のお鍋は流石でした。ぽん太とにゃん子が好きな山菜類も多く、天ぷらも美味でした。
Img_5406 それに熱々の炊き込みご飯がつきます。
 う〜ん、美味しかったけど、「海鮮料理が自慢」というほどではないぞ。食べ切れないと思って一番安い料金にしたのが失敗か……。ぐぐってみると、刺し盛りなどを追加注文するのがコツだったようです。あゝ、くちおしや。
Img_5425 こちらが朝食です。朝からサンマ丸ごと一匹。完食いたしました。
Img_5429 館内のあちこちに「野良猫が入るので戸を閉めて下さい」という貼紙がありました。とかいいつつ、食事の残り物をあげているようで、広い敷地内をネコちゃんたちが元気に飛び回っておりました。
 夕食が期待ほどではなかったのですが、翌日トラックから調理場に、美味しそうな魚介類が丸ごと次々に運び込まれるのを見ました。う〜ん、これを胃袋におさめてあげたかった。値段の設定を失敗しました。皆さんが行く時は、食事の内容をよく相談して値段を設定されるといいでしょう。温泉力は?なので、今回は非温泉部門での評価とします。ぽん太の夕食では3点ですが、翌日見た素材から本当の力量を推定すると、文句なく4点の評価となります。

2013/07/28

【ハイキング】ブナの原生林と歴史ある道・山形県立自然博物園ネイチャーセンター半日体験コース(無料です!!)

Img_5361  6月末の話しですが、志津温泉仙台屋さんの山菜尽くしのお料理で得たカロリーを消費するため、ちと歩く必要があります。目の前にそびえ立つ月山に昇りたいところですが、時間が足りません。そこでぽん太とにゃん子は、宿から車で数分のところにある、山形県立自然博物園ネイチャーセンターの半日体験コースに参加しました。自然博物園の公式サイトはこちらです。
 山形自然博物園は、月山は姥ヶ岳の山麓にある野外自然学習施設で、広さは245ヘクタールもあり、広大なブナの原生林を擁しています。ネイチャーセンターは拠点となる建物で、様々なイベントを行っています。半日体験コースは、ガイドさん(自然解説員)の案内を聞きながら、約2時間30分のコースを歩くもので、1日2回行われています。なんと無料!! ぽん太とにゃん子は前日にネイチャーセンターを訪れた時、この情報を仕入れていたのです。
 ふだん山のなかをぼーっと歩いているだけではわからない、色々な知識を教えていただき、本当にためになり、かつ面白かったです。

 

【山名】なし
【山域】姥ヶ岳(月山)
【日程】2013年6月25日
【メンバー】ぽん太、にゃん子、自然解説員さん
【天候】晴れ
【ルート】ネイチャーセンター9:30…湯殿山碑…元玄海…月山の湧水…大トチの木…ブナ広場…周海沼野鳥観察小屋11:09…元玄海…カワクルミ広場…ネイチャーセンター11:56

【見た花】ギンリョウソウ、タムシバ、ムラサキヤシオ、クロウスゴ、ミズバショウ、ブナ、??、サンカヨウ、エンレイソウ、??、ミネザクラ
【マイカー登山情報】R112号の月山湖の北側から、月山スキー場に向かう道に入ります。志津温泉街を越え、数分行ったところでスキー場方面に右折。ちょっと行って、案内板に従って左折すると、ネイチャーセンターです。駐車場完備です。
【関連リンク】・山形県立自然博物園内のマップhttp://gassan-bunarin.jp/image/map.jpg

 

Img_5320 さすが豪雪地帯。ブナの幹も雪の力でこのように折れ曲がっています。
Img_5327 ミズバショウはほとんど終わっていましたが、雪解けが遅れた場所に咲き残っていました。
Img_5328 ブナの雄花(のつぼみ)です。ブナの木はいやというほど見てますが、花は初めてです。こういうのは、解説をしていただかないと、なかなか気がつきません。
Img_5332 ん〜なんかの花。忘れてしまいました。
Img_5333 元玄海(もとげんかい)の石碑群です。この道は、玄海古道と呼ばれ、古くは湯殿山の参詣者で賑わったんだそうです。玄海古道の地図は、例えばこちらのページにあります。それを見てみると、ぽん太とにゃん子が昨日泊まった志津温泉から北上してネイチャーセンターの前を通り、そこから石跳川沿いにさらに北上して、姥ヶ岳と湯殿山の鞍部を越え、湯殿山に下っていったようです。元玄海を通るルートは、石跳川沿いが通れない時の巻き道のようです。
 むかしぽん太が湯殿山神社から月山に登った時、途中に月光坂や装束場なとどいう地点がありました。てっきり月山山頂を目指す宗教登山に由来する地名だと思っていたのですが、実は玄海古道による湯殿山神社の参詣に由来するものだったのですね。玄海古道は最近になって地元のひとによって整備され、歩くことができるようです。玄海古道の歴史については、ちとググってみたのですがあまり情報がありません。そのうちみちくさしてみたいと思います。
Img_5336 ツルアジサイをびっしりとまとったブナです。なんだかジブリの世界みたいですね。
Img_5338 ブナの原生林。なにやら女性が集まってひそひそ話しをしているみたいです。
Img_5340 池のなかにはサンショウウオの卵が。
Img_5342 池の上の笹についている土塊みたいなのが、モリアオガエルの卵だそうです。雨の日に孵化してぽたぽたと池のなかに落ちるのだそうですが、晴天が続いているので死んでしまうかも……だそうです。ちなみに冒頭の写真がモリアオガエル君です。
Img_5344 こちらが大トチノキです。カメラに入り切りません。
Img_5345 ブナに着生している植物です。確かヤシャビシャクと聞いたと思うんですが……。よく見るヤドリギはブナに根を張って、ブナから栄養を得ているので「寄生植物」といいますが、ヤシャビシャクはブナの上の落ち葉やコケから栄養を得ているだけなので、「着生植物」と言うそうです。
Img_5346 残雪のなかが緑色になっていますが、雪上藻と呼ばれる藻類のためだそうです。こんな冷たい雪のなかで生きているなんてすごいですね。まわりの茶色いのは、冬のあいだブナの芽を覆っていた芽鱗(がりん)です。落ちた芽鱗が雪の上に一面につもった様子は、「雪紅葉」とも呼ばれるそうです。
Img_5351 周海沼です。美しいとしか言い様がありません。
Img_5366 ううう、忘れました。ツノハシバミの花かな?
Img_5372 ネイチャーセンターまで戻ってくると、ちびっ子たちがお弁当を食べてました。この広場は玄海広場と呼ばれ、昔は湯殿山参りの人々のための、宿泊施設や祈祷所がありました。広場に点在する石は、そうした建物の基礎だったものだそうです。

2013/07/26

【歌舞伎】「加賀見山再岩藤」は脚本がつまらん・歌舞伎座2013年7月昼の部

 河竹黙阿弥作の「加賀見山再岩藤」を観るのは初めてだったので、どういう演目か楽しみにしていたのですが、脚本がダメで楽しめませんでした。公式サイトはこちらです。
 散乱している岩藤の骨が徐々に集まって骸骨となる「骨寄せ」の仕掛けが、この芝居の眼目かと思います。CGもなかった当時の観客にとっては、目を見張るようなスペクタクルだったことでしょう。ぽん太もとっても面白く感じました。
 一転して岩藤が、満開の桜の上を日傘をさして浮遊する場面となりますが、これも美しく、かつ前の場面との対比が面白かったです。ただ、どうせなら、傘をもっと身体から離し、一見して力学的に「ありえない」感じになってた方が良かったかもしれません。また、せっかく現代の装置を使っているのですから、もっとふわふわ動いて欲しかったです。
 しかし他の場面は、よくあるお家騒動、よくある切腹、よくある足なえのやつし……など、既視感のある定型的な場面ばかりでした。夜の部の「東海道四谷怪談」が文化文政期の猥雑なエネルギーを感じさせるのに比べ、常套的・観念的で表面的な印象を受けました。
 ストーリ的にも、岩藤復活が眼目だとすれば、甦った岩藤の力によって悪が力を得、そして最後には岩藤をやっつけることで正義が勝つという風でないと辻褄があわない気がします。
 望月弾正がなぜか岩藤に姿を変えて尾上を草履で打つという場面は、唐突でよくわからなかったのですが、後から調べたら、この狂言の元になっている「加賀見山旧錦絵」をふまえているんだそうな。ううう、教養が足りんかった
 松緑、菊之助、染五郎の二役も、同じ役者が別の役を演じることでの面白さが感じられませんでした。
 黙阿弥の原作の問題なのか、上演のための改作・演出がよくないのか、原作を読み直す気力もないので、ぽん太にはよくわかりません。
 この演目、以前に勘三郎や猿翁も舞台にかけたそうな。どちらも見てみたかったな。
 松緑、健闘してましたが、あいかわらずセリフが一本調子。菊之助、前述のように二役の演じ分けが不満でしたが、そもそも演じ分けられるような場面が設定されていないので仕方ありません。愛之助、こういった役はお手の物。染五郎、多賀大領のような鷹揚なお殿様役はいいです。同じようなキャラの安田帯刀との二役は、何のためなのかよくわかりませんでした。ぽん太の好きな壱太郎、短い出演ながらも存在感抜群。玉太郎くん、大きくなったでちゅね。いじめや殺人の絶えない昨今、花道での芝居を観客全員が胸に痛みを覚えながら見つめてました。琴の演奏もお見事。


歌舞伎座新開場柿葺落
七月花形歌舞伎
歌舞伎座
平成25年7月25日 昼の部

通し狂言 加賀見山再岩藤(かがみやまごにちのいわふじ)
  骨寄せの岩藤

  発 端 多賀家下館奥庭浅妻舟の場
  序 幕 浅野川々端多賀家下館塀外の場
      浅野川々端の場
      浅野川堤の場
  二幕目 八丁畷三昧の場
      花の山の場
  三幕目 多賀家奥殿草履打の場
  四幕目 鳥井又助内切腹の場
  大 詰 多賀家下館奥庭の場
   
岩藤の霊/鳥井又助 松 緑
二代目尾上/お柳の方 菊之助
望月弾正 愛之助
蟹江主税 亀 寿
又助妹おつゆ 梅 枝
花園姫 右 近
奥女中関屋 廣 松
又助弟志賀市 玉太郎
松浪主計 廣太郎
梅の方 壱太郎
花房求女 松 也
若党勝平 松 江
蟹江一角 権十郎
多賀大領/安田帯刀 染五郎

2013/07/23

【温泉・山菜】月山の大自然に囲まれた山菜が美味しい宿・志津温泉仙台屋(★★★★)

Img_5310 今年の春は山菜に燃えたぽん太とにゃん子、6月末に月山の麓にある志津温泉の仙台屋に泊まってきました。美味しい山菜がいただけることで有名な宿です。いわゆる「山菜」には少し時期が遅かったのですが、ちょうど月山筍の季節で、焼き物・天ぷらにお味噌汁と、堪能することができました。公式サイトはこちらです。
Img_5291 こちらが仙台屋さんの建物です。レトロモダン風に新築した新館と、リニューアルされた本館からなっております。
Img_5297 志津温泉があるのは月山のお膝元。宿の前からは、まだ雪を戴いた月山が見えます。手前の沼は五色沼です。案内板によると、この場所にはむかし不動院があり、大きなブロンズ製の不動明王が祀られていたそうですが、廃仏毀釈のおりに取り去られてしまったそうです。
Img_5302 こちらが玄関です。オシャレな喫茶店みたいな感じですね。新館は、一つひとつの客室が、それぞれ欅、楓といった木をテーマにしたインテリアになっているそうです。
Img_5305 ですが、部屋にはあんまりこだわらないぽん太とにゃん子は、リーゾナブルな本館を選択。こざっぱりとした和室で、申し分ありません。
Img_5287 こちらがお風呂です。清潔なタイルの浴室で、木が装飾に使われ、暖かい雰囲気です。お湯は無色透明。泉質はナトリウム - 塩化物泉で、なめるとしょっぱいです。塩分濃度が濃すぎるため加水をしており、また循環加熱もしているそうです。
Img_5308 さて、お待ちかねの夕食は、別室でいただきました。小鉢に様々な山菜がもられていて、ぽん太とにゃん子は大喜びです。この時期に採れるという月山筍が新鮮でとても美味しいです。このほか岩魚が珍しい唐揚げで、またカルパッチョも運ばれて来ます。
Img_5312 そして天ぷらです。ここでも月山筍がみずみずしくて美味しいです。黄色いバナナの皮みたいなのが、なんとニッコウキスゲ!う〜ん、ニッコウキスゲを天ぷらでいただくなんて、ぽん太は生まれて初めてです。
Img_5319 こちらが朝食です。右下のお味噌汁のなかの月山筍に注目。その左のマヨネーズがかかったのが「シオデ」で、ちょっと珍しい山菜だそうで、ぽん太は初めていただきました。炊き込みご飯もおいしかったです。
 とにかく山菜・筍をふんだんに使った料理が魅力。建物もきれいで暖かいサービスにも満足。山菜好きは一度は訪れるべし。

2013/07/17

【歌舞伎】菊之助・染五郎の「東海道四谷怪談」は本格歌舞伎でありつつも現代を写し出す・2013年7月歌舞伎座夜の部

 「東海道四谷怪談」というと、ケレンに満ちたおどろおどろしい怪談話だと思ってましたが、菊之助のお岩は本格的な歌舞伎の芸を見せてくれました。特に二幕目が絶品でした。公式サイトはこちらです。
 二幕目では、伊右衛門の子を産んだお岩は、血の道に効く薬と信じて飲んだ毒薬によって醜い顔に変貌します。真実を知ったお岩は、復讐のための身支度をするうちに、死んでしまいます。いわゆる「怪談もの」の見せ場ですから、普通は後半でおどろおどろしさを強調し、観客を怖がらせようとするところですが、菊之助のお岩はあくまで型をくずしませんでした。薬を飲むために病んだ身体を引きずって水を取りに行ってくるところ、貴重な薬を一粒たりとも残すまいと飲み下すところ、細かく丁寧な演技の積み重ねの美しさにぽん太は見とれてしまいました。これぞ歌舞伎の芸という感じです。そしてその芸に支えられて、お岩の誠実さが伝わってきて、醜い顔にななっていることを知らずに可憐に振る舞う姿は、哀れでなりませんでした。とはいえ、もっぱら古典的というわけではなく、現代的なセンスも感じられ、立ち姿など玉三郎かと思うような彫像的な美しさがありました。
 民谷伊右衛門の染五郎も、世話物っぽくしないで、菊之助にスタイルを合わせてました。セリフの内容は忘れてしまったのですが、染五郎がお岩に対して大声を張り上げるセリフがすばらしく、歌舞伎座全体が数秒にわたって凍り。それはまさしく現代の若者のキレた時の口調で、その生々しさに観客全員が凍り付き、数秒にわたって劇場が静まり返りました。染五郎はこのセリフで、「四谷怪談」が単なる過去の怪談話ではなく、現代の人間関係をもえぐり出していることを示しました。染五郎の現代劇っぽいところはぽん太は嫌いなのですが、今回に限っては深く感心いたしました。
 松緑は、一幕目は勢いがあってよかったけど、三幕目はいつもの棒読みっぽい。小山三さん、中村屋以外でも出るんですね。序幕の菊之助の与茂七との掛け合いのセリフ、聴いてるだけで気持ちよくなりました。
 「滝野川蛍狩の場」はぽん太は初めて観ました。お岩と伊右衛門が愛し合っていた頃の回想シーンという感じで、これまた見ていて、身につまされるというか、胸が締め付けられました。ラストの雪は省略し、夏の芝居として仕上げてました。

歌舞伎座
歌舞伎座新開場柿葺落
七月花形歌舞伎
平成25年7月14日

通し狂言 東海道四谷怪談(とうかいどうよつやかいだん)
 
  序 幕 浅草観音額堂の場
      宅悦地獄宿の場
      浅草暗道地蔵の場
      浅草観音裏田圃の場
  二幕目 雑司ヶ谷四谷町伊右衛門浪宅の場
      伊藤喜兵衛内の場
      元の伊右衛門浪宅の場
  三幕目 本所砂村隠亡堀の場
  大 詰 滝野川蛍狩の場
      本所蛇山庵室の場
   
お岩/佐藤与茂七/小仏小平 菊之助
直助権兵衛 松 緑
奥田庄三郎 亀三郎
お袖 梅 枝
お梅 右 近
四谷左門 錦 吾
按摩宅悦 市 蔵
後家お弓 萬次郎
伊藤喜兵衛 團 蔵
民谷伊右衛門 染五郎

2013/07/16

【バレエ】ねっとり系バレエも悪くない・ルジマトフ「バレエの神髄 2013」

 ルジマトフの「バレエの神髄」を観て来ました。公式サイトはこちらです。
 先日観た「ロイヤル・ガラ」に比べると、アスレチックな要素が強いような気がしたのですが、あるいは久々に席が前の方だったので、ダンサーの動きがよく見えたため、よけいそう感じたのかもしれません。
 「パキータ」は、キエフ・バレエによる群舞やヴァリアシオンが着いてました。英国ロイヤルに比べると、エレガンスさや柔らかさに欠けますが、テクニックは見応えがありました。キエフ・バレエのペアで、カテリーナ・クーハリはちょっとアジア系が入ったエキゾチックな顔立ちで、とても安定してました。グラン・フェッテでは、シングルではありましたが、最後はスピードを上げて音楽を追い抜いていきました。オレクサンドル・ストヤノフは手足が長く大きな踊りでした。
 ついでお待ちかね、ルジマトフの登場。最初は外套を着ていたけど、途中で脱いでお決まりの上半身裸に。う〜ん、体のラインは崩れてません。すごいな、このおっさん、いったい何歳なんや……とググってみると、1962年生まれとのこと。ぽん太とあまり変わらないやん。民族音楽にのせた、「気」の入ったパフォーマンスでしたが、なんとなく武術風。ロマノフスキーという人の振り付けらしいけど、プログラムを買わなかったので、どういう人なのかよくわかりません。もうちょっと「踊り」を観たかったです。
 3番目は岩田守弘の「海賊」。場内放送によれば、初日の公演中に足を痛めたため「ナヤン・ナヴァー」だけ踊る予定でしたが、幸いなことに「海賊」も踊ることになったとのこと。あゝ、よかった。ところが相手の女(チェプラソワ)がでかいです。しかもどちらかというとムッチリ系。当初予定してたハニュコワから変更になったようですが、岩田さん、足を痛めてるというのに大丈夫かしら。ピルエットのサポートも大変そう、と思ってたらリフトで落としてしまいました。さすがに自身のジャンプの高さやピルエットの早さは素晴らしかったけど、ちと気の毒でした。つられてかチェプラソワも、グラン・フェッテに2回転をおりまぜていたものの、最後は観客に背を向けて止まってしまい、なんかグズグズの舞台になってしまいました。ところでチェプラソワは昔マリインスキーの来日公演で観ましたが、キエフに移ってたんですね。
 ルジマトフに負けないねっとり系のフィリピエワの「瀕死の白鳥」。羽の動きが素晴らしかったです。「得意技を踊ったるわ〜」という感じで、儚さにはちと欠け、むしろ強さのようなものを感じました。
 第一部の最後は「ドンキ」。マリインスキーのエレーナ・エフセーエワが、キエフ・バレエのセルギイ・シドルスキーと踊りました。エフセーエワがパワー全開。扇子のソロもテンポが速かったし、グランフェッテでは前半はドゥブルを交え、後半では片手を水平に開き、もう片手でスカートの端を持ってのピルエットでした。最後のピルエットしながら直線上に進む技も、すごいスピードでした。なんか競技を観てるみたい。10点満点!
 第2部の幕開きは、クーハリ、ストヤノフの「ロミジュリ」からバルコニー・シーン。あれれ、なんだか不思議な振り付け。最初の飛び跳ねるような音楽のところで、普通はロミオが踊るのに、ジュリエットが踊ってました。片手リフトも入ってたり。振り付けのシュケロという人は知りませんが、悪くはなかったけど、はっきりとしたプラスの部分があるわけでもなく、それだったらわざわざ振り付けを変えずに、マクミラン版でもよかったような気がしました。決して欧米の真似はしないってか?なんか昔の冷戦時代を思い出すにゃ〜。それはさておき、クーハリは魅力的ですね。
 次は岩田守弘の「ナヤン・ナヴァー」。世界初演です。なんかケルトっぽい感じもする音楽で、途中雨の音が聞こえたりして、「アイヌが神様に捧げる踊り」みたいな雰囲気でした。プログラムを立ち読みしたところでは、蒙古襲来によって生来の土地を離れなければない人たちの捧げる祈りを意味しているそうです。やっぱり武道っぽい動きで、しかも短い。
 次いで「ドンキ」で驚異的な身体能力を見せたエフセーエワが、「白鳥の湖」のロシアの踊りで、こんどは表現力を見せつけました。
 そして吉田都の「ラ・シルフィード」。ロイヤル・スタイルを身につけた彼女の踊りを観ると、キエフ・バレエと目指すものが全く違うのがよくわかりました。キエフのダンサーは、筋力を使ってブンブン踊ってる感じですが、吉田都はあくまでも軽く柔らか。シルフィードという役柄もあいまって、ほんとに重さがないかのようでした。
 さあ、こんかいの目玉、ルジマトフの「ボレロ」……って、ベジャール版じゃないんかい!ニコライ・アンドロソフという人の振り付けだそうです。公式サイトにインタビューが乗ってます。さすがルジマトフを知り尽くした男というか、ルジマトフの魅力をこれでもかと見せつけてくれる振り付けでした。でも、ベジャール版を踊ったらどうなるかも、観たかったにゃ〜。
 最後は「シェヘラザード」。3年前に同じフィリピエワ、ルジマトフで観た演目です。ねっとりとしたルジマトフの世界を堪能。ただセットが安っぽかったです。フォーキンの振り付けも、何度も観てるとちと飽きて来ますが、それでもやらなければならないのは、英国ロイヤルのアシュトン、歌舞伎の「勧進帳」みたいなものか?
 先日の英国ロイヤルとは正反対の、ねっとりしたド演歌の世界。これもまた悪くありません。バレエっていろいろだな〜。空席もありましたが、ルジマトフのコアなファンも多いようで、やや御高齢のお嬢様方からの花束攻めに合ってました。
 


「バレエの神髄」
2031年7月15日 文京シビックホール

第1部 ガラ・コンサート

「パキータ」より
クーハリ、ストヤノフ、キエフ・バレエ
音楽:L.ミンクス 振付:M.プティパ

「帰還」新作初演
ルジマトフ
音楽:民族音楽 振付:V.ロマノフスキー

「海賊」よりパ・ド・ドゥ
チェプラソワ、岩田守弘
音楽:R.ドリゴ 振付:M.プティパ

「瀕死の白鳥」
フィリピエワ
音楽:C.サン=サーンス 振付:M.フォーキン

「ドン・キホーテ」よりパ・ド・ドゥ
エフセーエワ、シドルスキー
音楽:L.ミンクス 振付:M.プティパ


第2部 ガラ・コンサート

「ロミオとジュリエット」よりバルコニーの場面
クーハリ、ストヤノフ
音楽:S.プロコフィエフ 振付:A.シェケロ

「ナヤン・ナヴァー」新作世界初演
岩田守弘
音楽:V.ジャルサーノフ 振付:P.バザロン

「白鳥の湖」よりロシアの踊り
エレーナ・エフセーエワ
音楽:P.ちゃいこふすきー 振付:M.プティパ、L.イワノフ 改訂振付:V.ワシリエフ

「ラ・シルフィード」よりパ・ド・ドゥ
吉田都、シドルスキー
音楽:H.レーヴェンショルド 振付:A.ブルノンヴィル

「ボレロ」
ルジマトフ
音楽:M.ラヴェル 振付:N.アンドローソフ

第3部 「シェヘラザード」(全1幕)

ルジマトフ、フィリピエワ、キエフ・バレエ
音楽:N.リムスキー=コルサコフ 振付:M.フォーキン

2013/07/14

【バレエ】群舞に始まり群舞に終わる<ロイヤル・ガラ>英国ロイヤル・バレエ団

 猛暑のなか、行ってきましたロイヤル・ガラ。とっても質の高い公演でした。公式サイトはこちらです。
 幕開きの「ラ・ヴァルス」からぽん太はすっかり魅了され、目を見開き口もあんぐりという状態になってしまいました。「ラ・ヴァルス」は曲としては生演奏も含めて何度も聞いておりますが、バレエを見たのは初めてでした。これまで頭のなかで想像していた以上にすばらしかったです。
 「ラ・ヴァルス」はフランス語で「ワルツ」という意味ですが、初版の楽譜には、次のような標題がつけられていたそうです。「渦巻く雲の中から、ワルツを踊る男女がかすかに浮かび上がって来よう。雲が次第に晴れ上がる。と、A部において、渦巻く群集で埋め尽くされたダンス会場が現れ、その光景が少しずつ描かれていく。B部のフォルティッシモでシャンデリアの光がさんざめく。1855年ごろのオーストリア宮廷が舞台である」(Wikipedia)。今回の舞台では、雲の合間からダンサーたちが浮かび上がって来る様子が、見事に表現されていました。そして女性の黒いグラデーションの入った衣装や、色調・明暗の具合は、ドガの絵を彷彿とさせる美しさでした。
 今回の振り付けはアシュトンでしたが、もともとはどうだったんでしょう。上にリンクしたWikipediaによれば、「ラ・ヴァルス」はディアギレフの依頼を受けて作曲したものでしたが、できあがった曲を聴かせたところバレエには不向きだと拒否され、以来二人の仲は悪くなったそうです。この曲のバレエとしての初演は、はっきりしないそうです。いったいどのような振り付けだったんでしょうね。
 ラベルのこの曲は、最初こそウィーン風の流麗なワルツですが、だんだんと爆発音がも加わって崩壊を呈していきます。しかし今回のアシュトンの振り付けは、それを「ダイナミックさ」に変え、最後まできっちりと整ったスタイリッシュな群舞に仕上げてました。なんかイギリスのバレエは、「ロミオとジュリエット」や「シンデレラ」、先日の「不思議の国アリス」もそうですが、優雅でスタイリッシュなものの裏に、おどろおどろしさ、不安な感じを平気で内包しているように感じられます。
 ダイナミックな群舞ですっかり気分が良くなったところで、次の演目は「コンチェルト」。気品あるパ・ド・ドゥで、ハミルトンのポーズの美しさが目を引きました。「クオリア」はコンテンポラリーの作品で、キレとタメがありました。「アゴン」はストラヴィンスキーの現代音楽風の曲に振り付けたバレエ。ゼナイダ・ヤノウスキーの貫禄はさすがでしたが、なんか動きがカクカクしていて、振り付けが退屈でした。あとで見たらバランシンの振り付けとのこと。確かにストラヴィンスキーの「音」はカクカクしてましたが、それが表現する持続的な情緒があったと思います。しかしバランシンの振り付けはカクカクばかり取り上げ、情緒が表現されてなかったような気がします。
 「雨の後に」は「不思議の国のアリス」の振り付けをしたウィールドンの振り付け。アルヴォ・ペルトの音楽にのせたしっとりとした踊りで、とても雰囲気がありました。「ドン・キホーテ」第3幕のパ・ド・ドゥでは、スティーブン・マックレーのテクニックが光りました。スペインっぽさはありませんでしたが、ジャンプや回転がすばらしく、特に連続回転ジャンプから前後開脚ジャ〜ンプという技(いつもながら専門用語がわからず申し訳ありません)が見事でした。ロベルタ・マルケスは長いバランスもを見せましたが、一部ふらつきも。
 前半の〆は「うたかたの恋」第3幕より。とてもドラマチックで、コボーのルドルフははまり役で、以前に全幕でも見ましたが、コジョカルのマリー・ヴェッツェラ役の迫真の演技には驚きました。ぽん太はコジョカルは可愛らしい印象しか持ってなかったので。
 第二部に入り、「白鳥の湖」のパ・ド・カトル。最初「4羽の白鳥」と間違えて、「なんか渋い演目だな〜」と思ってたのですが、全然違ってました。原曲でいうと3幕のパ・ド・シスの音楽に振り付けた4人の踊りです。よく聞く曲としては、黒鳥のヴァリアシオンで使う蛇使いみたいな曲や、たまに32回転で使うパ〜ラ〜パ〜ラパパパの曲が入ってました。振付けは地味。
 「温室にて」は歌手が舞台上で歌を歌います。振り付けがけっこう地味なので、歌の方に目が行ってしまいました。「春の声」は、ヨハン・シュトラウスのワルツに乗せた流麗な踊り。はちきれんばかりの笑顔が可愛い崔にピッタリでした。「眠れる森の美女」の目覚めのパ・ド・ドゥは、金子扶生が踊りました。今夜のガラ、日本人が多かったですが、日本公演ということで故郷に錦を飾るという配慮でしょうか?日本人が外国のバレエ団で大勢活躍していることは、うれしい限りです。「ジュビリー・パ・ド・ドゥ」では、「不思議の国アリス」でハートの女王を怪演したモレーラが、明るく生きいきと踊ってました。「マノン」第1幕第2場のパ・ド・ドゥ。ベンジャミンとアコスタが、素晴らしいテクニックで愛の高まりを見事に表現しておりました。完璧な踊りを見た感じでした。最後は「シンフォニー・イン・C」の最終楽章。ぽん太はこれまで日本人でしか見たことがなくって、くるくるちまちましたダンスかと思ってたのですが、すごくダイナミックで迫力があるのに驚きました。
 オケは東京シティ・フィル。なんかNBSのガラはセミプロみたいなオケが多かったですが、さすが東京シティ・フィルのクラスだと迫力が違います。NBSさん、今後もよろしくお願いします。

 

英国ロイヤル・バレエ団<ロイヤル・ガラ>
2013年7月10日 東京文化会館

【第一部】

「ラ・ヴァルス」
振付:フレデリック・アシュトン/音楽:モーリス・ラヴェル
小林ひかる、平野亮一、
ヘレン・クロウフォード、ブライアン・マロニー、
ローラ・マカロック、ヨハネス・ステパネク

「コンチェルト」 第2楽章
振付:ケネス・マクミラン/音楽:ドミートリ―・ショスタコーヴィチ
メリッサ・ハミルトン、ルパート・ペネファーザー
ピアノ:ケイト・シップウェイ

「クオリア」
振付:ウェイン・マクレガー/音楽:スキャナー
リャーン・ベンジャミン、エドワード・ワトソン
(※特別録音された音源を使用)

「アゴン」 パ・ド・ドゥ
振付:ジョージ・バランシン/音楽:イーゴリ・ストラヴィンスキー
ゼナイダ・ヤノウスキー、カルロス・アコスタ

「雨の後に」
振付:クリストファー・ウィールドン/音楽:アルヴォ・ペルト
マリアネラ・ヌニェス、ティアゴ・ソアレス
ヴァイオリン:高木和弘
ピアノ:ロバート・クラーク

「ドン・キホーテ」 第3幕よりパ・ド・ドゥ
振付:マリウス・プティパ/音楽:ルートヴィク・ミンクス
ロベルタ・マルケス、スティーヴン・マックレー

「うたかたの恋」 第3幕より
振付:ケネス・マクミラン/音楽:フランツ・リスト
アリーナ・コジョカル、ヨハン・コボー、リカルド・セルヴェラ

【第二部】

「白鳥の湖」 パ・ド・カトル
振付:フレデリック・アシュトン/音楽:P. I. チャイコフスキー
エマ・マグワイア、高田茜
ダヴィッド・チェンツェミエック、ヴァレンティノ・ズケッティ

「温室にて」
振付:アラステア・マリオット/音楽:リヒャルト・ワーグナー
サラ・ラム、スティーヴン・マックレー
メゾ・ソプラノ: マリア・ジョーンズ

「春の声」
振付:フレデリック・アシュトン/音楽:ヨハン・シュトラウスⅡ世
崔由姫、アレクサンダー・キャンベル

「眠れる森の美女」 目覚めのパ・ド・ドゥ
振付:フレデリック・アシュトン/音楽::P. I. チャイコフスキー
金子扶生、ニーアマイア・キッシュ

「ジュビリー・パ・ド・ドゥ」
振付:リアム・スカーレット/音楽:アレクサンドル・グラズノフ
ラウラ・モレーラ、フェデリコ・ボネッリ

「マノン」 第1幕第2場よりパ・ド・ドゥ
振付:ケネス・マクミラン/音楽:ジュール・マスネ、編曲:レイトン・ルーカス
リャーン・ベンジャミン、カルロス・アコスタ

「シンフォニー・イン・C」 最終楽章
振付:ジョージ・バランシン/音楽:ジョルジュ・ビゼー
サラ・ラム、ヴァレリー・ヒリストフ
マリアネラ・ヌニェス、ティアゴ・ソアレス
崔由姫、アレクサンダー・キャンベル
イツァール・メンディザバル、リカルド・セルヴェラ

指揮者:ボリス・グルージン、ドミニク・グリア
オーケストラ: 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

2013/07/12

【バレエ】イギリス人は奥深いのゥ「不思議の国のアリス」英国ロイヤル・バレエ団

 今回の英国ロイヤル来日公演は、当初の公演日程では都合がつかずに一度も観に行けないはずだったのですが、「アリス」の追加公演と「ガラ」が加わったおかげで、素晴らしい舞台を満喫することができました。まずは「不思議の国のアリス」。公式サイトはこちらです。
 この演目を観るのはぽん太は初めてでしたが、ポップでカラフルな美術がまず目を引きます。それからプロジェクターを駆使して不思議な世界を表現するアイディアもお見事でした。そして次々と現れるキャラクターがどれも凄い!でも、「くるみ割り人形」のような明るく楽しいおとぎ話ではなく、どこか影の部分、不安にさせるところがあります。冒頭でいきなり、アリスの庭師に対する淡い思いが打ち砕かれますし、やたらと斧が振り回されたりします。音楽もちょっとプロコフィエフ、ロシアっぽくで、不気味さがあります。振付けは古すぎず、新しすぎず、よかったです。
 主役のアリスを踊ったのは崔由姫。笑顔が可愛らしく天真爛漫なアリスでしたが、「思春期」の複雑な部分や、不条理さにはちと欠けました。ハートの騎士がニーアマイア・キッシュ、白うさぎがリカルド・セルヴェラでしたが、この演目、舞台装置やキャラクターについつい目が行き、踊りがあんまり印象に残りませんでした。そのなかで怪気炎を吐いていたのがハートの女王のラウラ・モレーラ。恐ろしさは全然なく、行っちゃったおばさんという感じで、目つきも怪しかったです。特に「眠れる森の美女」のローズ・アダージオのパロディという踊りは最悪、いや最高でした。
 演奏は東京シティ・フィル。慣れない現代曲を、見事に演奏。お疲れさまでした。
 ぽん太は、ロイヤル・スイタイルといのは、優雅で上品だと思ってたのに。でもイギリスは、ミスター・ビーンやモンティ・パイソンの国でもありますからね。う〜ん、ますますイギリス人がわからなくなってきた。


英国ロイヤル・バレエ団2013年日本公演
「不思議の国のアリス」
2013年7月7日 東京文化会館

振付:クリストファー・ウィールドン
音楽:ジョビー・タルボット
編曲:クリストファー・オースティン、ジョビー・タルボット

アリス:崔 由姫
ジャック/ハートの騎士:ニーアマイア・キッシュ
ルイス・キャロル/白うさぎ:リカルド・セルヴェラ
アリスの母/ハートの女王:ラウラ・モレーラ
アリスの父/ハートの王:アラステア・マリオット
マジシャン/いかれ帽子屋:アレクサンダー・キャンベル
ラジャ/イモ虫:エリック・アンダーウッド
侯爵夫人:ギャリー・エイヴィス
牧師/三月うさぎ:ポール・ケイ
聖堂番/眠りネズミ:ロマニー・パイダック
料理女:クリステン・マクナリー
召使い/さかな:ルドヴィック・オンディヴィエラ
召使い/カエル:ダヴィッド・チェンツェミエック
アリスの姉妹たち:リャーン・コープ、エマ・マグワイア
執事/死刑執行人:マイケル・ストイコ
3人の庭師:アクリ瑠嘉、トリステン・ダイアー、ジェームズ・ヘイ
不思議の国の登場人物たち:英国ロイヤル・バレエ団

指揮者:デヴィッド・ブリスキン
オーケストラ:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

協力:東京バレエ団、東京バレエ学校

2013/07/11

【舞台】原田知世が生かされてニャイ!「シレンシオ」

 小野寺修二は、「空白に落ちた男」を初めて観て衝撃を受け、何回か通ったけど、ちょっとマンネリ化してきたので近頃は休んでました。こんかいは首藤康之が出演するというので久々に観に行ったのですが、やっぱり「う〜ん」という感じでした。公式サイトはこちらです。
 前に書いたことの繰り返しになりますが、おのでらんの売りはマイムなので、自分の劇団を作ってマイムの技術を徹底的に鍛え上げ、舞台でそれを披露するというのがひとつの方向性だと思います。しかし小野寺は、他分野のアーティストとのコラボ路線を選びました。だとすると、マイムを基本にして、それを超える面白みーーストーリーとかテーマとかーーが必要だと思うのですが、それが見当たりません。
 タイトルはイタリア語で静寂を意味するsilenzioですが、特にそんな印象は受けなかったし、そもそもマイムなんだから声は出さないだろうという感じ。統一性が感じられず、オムニバスのヴォードヴィル・ショーみたいでした。
 今回は、原田知世と首藤康之が出演していたのですが、原田がマイムをできないのは仕方ないとして、だとしたら原田をどう生かすかが大切だと思うんですが、彼女の魅力があまり感じられませんでした。いっぽう首藤の方は、彼のダンス・パフォーマンスが何カ所か出てきました。しかしぽん太にはこれは、首藤のテクニックを生かしているのではなく、彼のテクニックに頼っているように思われました。舞台のラストが首藤のソロダンスでは、何のための小野寺で何のためのマイムなのかわかりません。以前の「空白に落ちた男」では、たしか首藤のダンスは封印されていたと思うのですが。
 と、文句をひとしきり言った後でよかったところをあげると、ユトリロのパリの街並のようなセットが美しかったです。狭いドアから出入りするあたりはシュールで面白かったけど、ハシゴは一回使われただけで物足りませんでした。おのでらんのマイムの技術はさすがにずば抜けてました。レストランで食事をする仕草なども、それを見てるだけで面白かったです。音を出すと記録されてしまうというネタは、馬鹿馬鹿しいけど笑いました。首藤が、椅子や机をまたいで原田に近づきながら踊るのを、何度も繰り返すところは、鳥の求愛ダンスみたいでした。全員が一段となって、崩れ落ちそうになるの支え合いながらゆっくりと進んで行くところもなんか感動しました。
 藤田桃子、「空白」で観た梶原暁子は健在。川合ロンは初めて観ましたが、なかなか良かったです。
 小野寺さん、何かもひとつ、お願いします。


『シレンシオ』
東京芸術劇場 プレイハウス
2013年7月4日

作・演出=小野寺修二
原田知世/梶原暁子/川合ロン/藤田桃子/小野寺修二/首藤康之

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