【仏像】数奇な運命を受け入れる白鳳の微笑「国宝興福寺仏頭展」
上野に興福寺の仏頭に会いに行ってきました。公式サイトはこちらです。
音声ガイドの無料券を持っていたので、展覧会の音声ガイドというものを初めて借りてみたのですが、なかなかよかったです。いつもは「へ〜え」という感じで眺めて終わりになるのですが、見所やいわれなどを知ることができ、見仏家(?)のいとうせいこうやみうらじゅんの話しも絶妙で、いつもよりも深く見ることができました。今後は、なるべく音声ガイドを借りてみようと思いました。
例の国宝の仏頭は、天武7年(678)に鋳造が開始され同14年(685)に完成した白鳳期の仏像です。とても穏やかな表情で、微笑をうかべ、遥かかなたを眺めているかのようでした。左の耳の後ろが大きくへこんでおり、そのため顔が左右非対称になっているため、かえって何かを訴えかけているような表情となっておりました。
この仏頭の運命は数奇なものがあります。治承4年(1181年)の平家による南都焼き討ちで興福寺は焼け落ちましたが、数年後に再建され、文治3年(1187年)に山田寺から薬師如来が移されて、興福寺東金堂のご本尊となりました。応永18年(1411年)に落雷による火災にあって胴体を失い、別の薬師如来が東金堂の本尊になりました。これ以来、仏頭は行方不明になっておりましたが、昭和12年(1937)に本尊台座内で発見されたのだそうです。
こんかいの展覧会で仏頭とともに展示されている「木造十二神将立像」は、現在も興福寺東金堂に安置されておりますが、1411年の火災で別れて以来、600年振りに仏頭と再会し、同じ所に並べられたことになるそうです。この鎌倉時代に造られた神様たちは、鎧に身をつつみ武器をまとっておりますが、南都焼き討ちのようなことが二度と起こらないように守って欲しいという、人々の気持ちが込められていたのですね。
それら以外にも、板彫りの仏像というものを初めて知りました。また、「成唯識論」は奈良時代(761年)の「巻第十」、平安時代12世紀の「巻第一」、そして鎌倉時代の「成唯識論術記」が並べて展示されており、違いがよくわかりました。
興福寺創建1300年記念「国宝 興福寺仏頭展」
東京藝術大学大学美術館
2013年10月10日
※作品リスト(PDF)はこちら
主な出展作
国宝 銅造仏頭(興福寺東金堂旧本尊):白鳳時代・天武天皇 14 年(685)
国宝 木造十二神将立像:鎌倉時代・13世紀
国宝 板彫十二神将像:平安時代・11世紀
厨子入り木造弥勒菩薩半跏像/慈恩大師像(大乗院伝来) /慈恩大師像(一乗院伝来) /淄州大師像/濮陽大師像/解脱上人貞慶像/信円像/尋尊像/法相曼荼羅図/法相祖師像彩絵 厨子扉絵/持国天像/護法善神扉絵/大般若十六善神像/法相宗系図/興福寺別当次第 巻第一/興福寺別当次第 巻第三/大慈恩寺三蔵法師伝 巻第一/成唯識論 巻第十/成唯識論 巻第一 成唯識論述記(春日版板木) /成唯識論述記 巻第一(春日版板木) /弁中辺論 巻第三(春日版板木) /法華経 普門品(春日版板木) /世親摂論 巻第十(春日版板木) /明本鈔 巻第六/明本鈔 巻第十三
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