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2014年3月の14件の記事

2014/03/31

【料理自慢の温泉】ブランドは名ばかりじゃないよ!間人ガ二が美味し「炭平」(★★★★)

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 2月中旬、的矢牡蠣のフルコースを満喫したぽん太とにゃん子は、一路日本列島を横断し、日本海に面する丹後半島へと移動。お目当ては超有名ブランドの間人(たいざ)ガニ。お世話になったのは炭平さんです(公式サイトはこちら)。
 冬になるとカニを食べたくなるぽん太とにゃん子ですが、高価なブランド蟹はこれまで避けてきました。しかし、だんだんと高齢化してきて、いつ死ぬかもわからないので、今年は奮発することにしました。
Img_7963 建物は新しく立派な和風旅館です。
Img_7985 ロビーです。軽い感じが好ましく、色彩感覚もいいですね。
Img_7966 客室は落ち着いた和室です。窓の外は日本海。どんよりと曇っております。実はこの二日後に日本列島を大雪が襲いました。予定が一日ずれていたら、高速道路上で丸一日缶詰になったかもしれません。
Img_7969 洗面所など細かいところも、美しく作り込まれております。
Img_7978 いろいろな自家製リキュールが並んでいて、試してみることができます。
Img_7990 メニューです。お金がないので量はいいけど、いろんな食べ方を味わいたいということで、一人カニ1匹の「蟹フルコース」を選択。
Img_7986 様々な調味料が並べられてスタンバイ。お造りに茹こっぺがに。そしてこれだけは外したくないのが蟹刺身。舌の上でとろけるようにやわらかく、甘みと旨味がノンブランド品とは全然違います。
Img_7991 カニを美味しく頂くには、美味しい日本酒が不可欠です。銘酒セットをお願いしました。
 茹でガニ君登場!(冒頭の写真)。蟹味噌が新鮮で美味でした。
Img_7998 蟹炭火焼セット登場。美味しくいただいてあげましょう。
Img_8001 脚が焼き上がりました〜。う〜ん香ばしい。生もいいけど焼きもうまい!
Img_8000 カニミソが焼き上がりました〜。ふわふわアツアツです。煮るのと全然違うんですね〜。
Img_8004 蟹しゃぶです。生でもない、茹ででもない、独特の旨味が魅力です。
Img_8008 最後はもちろん蟹雑炊で〆。仲居さんが作ってくれたのは、軽くかき混ぜるタイプでした。
Img_8015 デザートは温州みかんシャーベット。味といい色合いといい、京都らしい一品です。
Img_7977 さて温泉です。蔵を模した浴室の入り口は雰囲気があって悪くありません。
Img_8022 内湯は岩風呂風です。
Img_8023 日本海が見渡せる露天風呂が付いております。展望が良すぎて、下の農家から丸見えですが、にゃん子によると、女湯はちゃんと見えないようになってるそうです。
 残念だったのは泉質がカルキ泉のこと。消毒臭が強すぎて、「温泉」を楽しむことができませんでした。
Img_8018 朝食も、地元の海の幸や新鮮な野菜が美味しかったです。
Img_8020 野菜や飲み物はバイキング形式になっており、さらにへしこや白バイ貝(?)はお好みで焼いて頂けます。
 これまで「ブランド蟹なんて、ノーブランドと味は一緒なんじゃない!?」と思っておりましたがさにあらず。甘みといい旨味といい、高いお金を払う価値があることを初めて知りました。蟹料理だけなら5点満点なんですが、残念なのは温泉。宿全体として評価した場合、温泉がマイナス1点となって、ぽん太の評価は4点となります。でもカニは絶品ですよ。

2014/03/30

【料理自慢の宿】的矢牡蠣のフルコースに舌鼓・いかだ荘山上(★★★★★)

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 2月中旬、お伊勢参りを終えたぽん太とにゃん子は、美味しい牡蠣が食べられると聞き、いかだ荘山上に宿泊しました。公式サイトはこちらです。
 いかだ荘山上がある的矢湾で養殖されている牡蠣は、「的矢かき」と呼ばれて珍重されており、この宿では上質の牡蠣をフルコースで頂くことができます。
Img_7905 建物は新しくて立派です。ぽん太とにゃん子は普通はこういう立派な旅館には泊まりませんが、今回は牡蠣が目当てなので特別です。
Img_7960 高台にあるので、美しい的矢湾を一望することができます。海面に浮かんでいるのが、牡蠣の養殖のための筏(いかだ)ですね。
Img_7913 こちらが泊まったお部屋です。畳の上にベッドという和モダンのスタイル。もちろん窓の外には的矢湾が広がっています。牡蠣さえ食べれればいいやと安い部屋を頼んだのですが、宿のご好意でグレードアップしてくれました。
Img_7918 伊勢エビやアワビも魅力的ですが、とても食べきれそうもないので、「的矢牡蠣フルコース全10品+新鮮お造り盛り合わせ付」を選択しました。
Img_7919 先付けは、牡蠣南蛮漬け・牡蠣味噌・おろし牡蠣。ぽん太はどれも初めて。美味しゅうございます。
Img_7924 全部写真を載っけても仕方ないので、お次ぎは定番の生ガキ君。生牡蠣というと、まったりとしてクリーミーなやつも美味しいですが、ここのはシャキシャキで、本当に採れたてといった感じです。
Img_7929 焼き牡蠣も、しっかり火を通して香ばしく焼き上がったのも美味しいですが、ふっくらと蒸し上がったかのように焼き上げてあります。
Img_7934 なんと一品サービスしてくれるとのことで、ぽん太は牡蠣寿司を選択。これまた生まれて初めて頂きましたが、酢飯と合わさって、牡蠣が一層甘く美味しく変身です。
Img_7942 こちらは牡蠣蕎麦ですね〜。
Img_7945 食堂の定食でも頂けるカキフライですが、そんじょそこらのとは大違い、柔らかくて口の中にふくよかな香りが広がります。
Img_7950 デザートもとってもオシャレ。なんだったかは……忘れました!
Img_7962 お風呂はとっても広くて快適です。
Img_7961 温泉じゃないのは残念ですが、露天風呂も付いてます。
Img_7952 朝食も美味しゅうございました。
 なんと言っても的矢牡蠣のフルコースが絶品。あれだけ食べても最後まで食べ飽きませんでした。建物もきれいで接客も丁寧です。牡蠣が好きなら一度は来るべし。ぽん太の評価は満点!

2014/03/28

【バレエ】シアラヴォラ/ガニオ「椿姫」パリ・オペラ座バレエ団

 にゃん子が「モローも見たいけどガニオも見たいにゃ〜」と鳴いてうるさいので、2日続けて観て来ました。公式サイトはこちらです。
 全く同じ演目を続けて異なるダンサーで観るというのは初めてだったのですが、とっても貴重な体験でした。1日目には見落としていたところが2日目に見えてくるし、また同じ振付けでも違うダンサーが踊るとどれほど違って見えるかが、よくわかりました。
 シアラヴォラは前日のオレリー・デュポンに比べると迫力があり、豪華で華やかです。第一幕では高級娼婦らしい貫禄があり、アルマンを軽くあしらっておりました。第二幕で娼婦家業から足を洗い、アルマンとつつつましい生活を送っている場面では、さすがに若いガニオと比べて違和感がありましたが、そこは80歳を超えた坂田藤十郎が十代の娘を演じる歌舞伎で鍛えた脳内変換の能力で、難なくクリア。圧巻だったのは第三幕。結核が悪化して衰えて行く様子が、デュポンはあくまでも清楚で美しく、透明になって消えて行くかのようでしたが、デュポンの場合は、身体が衰弱してだんだんと醜くなっていく感じで、久々に「マノン」の舞台を観に来たマルグリットに人々が困惑している場面が生々しかったです。それが、一方でアルマンを愛する心の美しさが最後まで輝き続けているのと対比され、深い哀れみを感じずにはいられませんでした。二日間の間にストーリーを頭に入れておいたこともあってとても感動し、涙が止まりませんでした。
 ガニオはあいかわらずスタイル(とマスク)がよく、やや大柄なシアラヴォラをしっかりとサポートしておりました。前日のエルヴェ・モローに比べ、美しさでは勝っておりましたが、感情的な表現力はやはりモローの方が上手か。
 アルマンの父親のアンドレイ・クレムは、ちょっと若すぎるし、顔つきが鋭い。ダンスそのものは前日のミカエル・ドナールより踊れてましたが、雰囲気は暖かみのあるドナール氏の方がよかったです。


パリ・オペラ座バレエ団 日本公演
「椿姫」
2014年3月21日

音楽:フレデリック・ショパン
振付・演出:ジョン・ノイマイヤー(1978年)
美術・衣装:ユルゲン・ローゼ
照明:ロルフ・ヴァルター
2006年6月20日パリ・オペラ座初演

マルグリット:イザベル・シアラヴォラ
アルマン:マチュー・ガニオ
デュヴァル氏(アルマンの父):アンドレイ・クレム(ゲスト・アーティスト)

マノン・レスコー:エヴ・グリンツテイン
デ・グリュー:クリストフ・デュケンヌ

プリュダンス:ヴァランティーヌ・コラサント
ガストン:ヴァンサン・シャイエ
オランプ:シャルロット・ランソン
公爵:ローラン・ノヴィ
N伯爵:アドリアン・ボデ
ナニーナ(マルグリットの侍女):クリスティーヌ・ペルツェー

演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
指揮:ジェームズ・タグル
ピアノ:エマニュエル・ストロセール、フレデリック・ヴェス=クニテール

2014/03/25

【バレエ】デュポン/モロー「椿姫」パリ・オペラ座バレエ団

 ルグリの「スーパーバレエレッスン」で「ロミジュリ」のお手本を踊っていたのを見て着目していたエルヴェ・モロー。以来いちど生で見たいと思っていましたが、怪我で来日が流れたりで、これまでチャンスに恵まれませんでした。こんかいも直前まで来るかどうか、来てからも怪我しないかどうかとヒヤヒヤしてましたが、念願かなって初めて見ることができました。いや〜素晴らしかったです。ルグリのように表現力が豊かですね。翌日見たガニオと比べても、2幕目の最後のマルグリットが立ち去った時の絶望の踊りや、第3幕の舞踏会でマルグリットを手荒に扱う動きなどは、モローが勝っておりました。すっかりファンになりました。今後も来日して欲しいです。
 初めてと言えば、ノイマイヤーの「椿姫」を全幕で見たのも今回が初めて。黒のパ・ド・ドゥはガラで何度も見てるますが。これまた楽しみでした。
 オペラの「椿姫」は何回も観ているので、ストーリーは同じだろうと高をくくっていたら、だいぶ違うので戸惑いました。「マノン」と絡めたアイディアはは面白いけど、ストーリーがかぶるんじゃないかな〜とか思っていたら、マルグリットの死にアルマンが駆けつけないのにびっくり。
 帰ってからググってみて、ようやくストーリーがわかりました。「名作ドラマへの招待」というサイトのこちらのページがとっても詳しく、デュマ・フィスの小説、ヴェルディのオペラ、アシュトンとノイマイヤーのバレエの詳しいあらすじが、それぞれ載っております。
 読み比べてみると、オペラよりもノイマイヤー版バレエの方が原作に近いようです。そして「マノン」は原作の小説でも取り入れられており、ノイマイヤーのアイディアではなかったようです。マノンに恋をした騎士デ・グリューは身を持ち崩して破滅します。当時皆が知っていたこの物語を踏まえて、「椿姫」のマルグリットは、マノンのようにアルマンを破滅させまいとして、身を引くことを決意します。それによってマルグリットのけなげさ、気高さが強調されるわけです。
 一方でヴェルディのオペラ「椿姫」では、最後にアルフレード(=アルマン)が椿姫ヴィオレッタ(=マルグリット)の病床に駆けつけ、ヴィオレッタはアルフレードに抱かれつつこと切れます。この結末では「マノン」とかぶってますね。
 ちなみに時系列をおさらいすると、アベ・プレヴォーの小説『マノン・レスコー』が出版されたのが1731年。けっこう古いんですね。マスネのオペラ「マノン」の初演が1884年、プッチーニのオペラ「マノン・レスコー」は1893年、マスネの音楽を使ったマクミラン振付けのバレエ「マノン」は1974年初演です。デュマ・フィスの『椿姫』の出版が1848年。ヴェルディのオペラ「椿姫」は1853年初演ですから、原作のわずか5年後です。バレエではアシュトンの「マルグリットとアルマン」が1963年初演、ノイマイヤーの「椿姫」は1978年です。
 それから、あらすじを読んで、ガラでよく踊られる「黒のパ・ド・ドゥ」の状況をまったく勘違いしていたことに気付きました。オペラからの勝手な想像で、気持ちが行き違いになっていてた二人が再会し、初めはギクシャクしていたけど、最後は情熱的な愛によって結ばれてめでたしめでたしという話しかと思ってました。しかし実は、マルグリットは意地悪をやめるようにアルマンに頼みに行っただけで、彼と結ばれようとは思ってなかったし、アルマンはアルマンで、マルグリットが自分を裏切って高級娼婦というふしだらな生活を選んだと誤解し、アルマンを憎んでいた(ホントは好きだけど)のです。いや〜そう思うと、「黒のパ・ド・ドゥ」は凄いバレエですね。
 オレリー・デュポンのマルグリットは、ルグリ先生とのパ・ド・ドゥで何度か見ましたが、全幕も良かったです。踊りは言うまでもなく演技力が素晴らしく、第一幕の高級娼婦としての堂々たる振る舞い、第二幕の清楚さ、第三幕でのパッションの踊り分けが見事で、特に第三幕の絶望感が心に迫りました。
 アルマンのお父さん、いかにもフランス人のおじいさんっぽくて味がありました。カテコで盛大な拍手を受けておりましたが、あとでググったらミカエル・ドナール氏は往年の名エトワールとのこと。
 マノン・レスコーのエヴ・グリンツテイン、ある時は劇中劇の踊り子、またある時はマルグリットの内面の表現、そしてまたあるときは愛する人に抱かれて死ぬというマルグリットの夢を見事に踊りました。非現実的で神々しく、まるで何かの精のようでした。
 舞台美術や衣裳はとても美しかったです。特に第三幕の舞踏会での、ワルツのブルー系の衣裳から、赤系への転換もきれいでした。これはノイマイヤーのオリジナルなのかパリオペラ座の工夫なのか、ぽん太にはわかりません。
 最後になりましたがノイマイヤーの振付けはいつもながら見事で、三つの幕をうまく対比した構成力、ストーリー展開、動きの面白さ、細かいところへの気配りなど、ただただ感心いたしました。
 指揮者のジェームズ・タグルはぽん太は初めて。東京シティ・フィル、待ちの多い仕事をお疲れさまでした。


パリ・オペラ座バレエ団 日本公演
「椿姫」
2014年3月20日 東京文化会館

音楽:フレデリック・ショパン
振付・演出:ジョン・ノイマイヤー(1978年)
美術・衣装:ユルゲン・ローゼ
照明:ロルフ・ヴァルター
2006年6月20日パリ・オペラ座初演

マルグリット:オレリー・デュポン
アルマン:エルヴェ・モロー
デュヴァル氏(アルマンの父):ミカエル・ドナール(ゲスト・エトワール)

マノン・レスコー:エヴ・グリンツテイン
デ・グリュー:クリストフ・デュケンヌ

プリュダンス:ヴァランティーヌ・コラサント
ガストン:ヴァンサン・シャイエ
オランプ:レオノール・ボラック
公爵:ローラン・ノヴィ
N伯爵:シモン・ヴァラストロ
ナニーナ(マルグリットの侍女):クリスティーヌ・ペルツェー

演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
指揮:ジェームズ・タグル
ピアノ:エマニュエル・ストロセール、フレデリック・ヴェス=クニテール

2014/03/21

【バレエ】ヌレエフ版を初めて観ました「ドン・キホーテ」パリオペラ座バレエ団

 いよいよパリ・オペラ座バレエ団の来日です。まずは「ドン・キホーテ」。公式サイトはこちらです。
 キトリちゃんのマチルド・フルステーは代役の代役。当初のキャスティングはミリアム・ウルド=ブラームでしたが、怪我の回復が遅れてリュドミラ・パリエロに変わり、彼女もまた怪我で来日できなくなりました。フルステーはまだスジェとのこと。もともとエイマン君で選んだので、キトリ役はどうでもいいって言えばいいんですけど、期待と不安が高まります。
 そのフルステーは気の強そうなお嬢さん。2年前に「エトワール フランス・バレエのエレガンス」で「コッペリア」を観てるようですが、覚えてません。テクニック的には十分で、全幕をしっかりと踊りきりました。バランスも長く、グランフェッテも前半は全て2回転、後半は高速のシングルで決めました。ただ、プラスアルファの表現力というか、個性がにじみ出て来るにはもうちょっと、という感じでした。今後に期待。
 バジリオ(バジルじゃないの?)のエイマンは、ため息が出るほど素晴らしかったです。最初の両足を広げるジャンプ。まるで宙に浮かんだかのようでした。身体能力の高さは昔からですが、パリオペらしい優雅さが備わってきた気がします。
 ぽん太はヌレエフ版のドンキは初めて。プティパ版を元にしているとのことで、全体的な構成は同じでした。なんか難しそうな細かい動きや足技が多かったようですが、ぱっと見が地味でちょっと古風な気もしました。グラン・パ・ド・ドゥでバランスがないのかと思いましたが、最後の最後に持って来てありました。キトリのジャーンプをバジリオが受け止めるのはなくって、周りのダンサーがやってました。
 あいかわらずパリオペの衣裳やセットは美しいです。太陽の国スペインを舞台にしたバレエですが、舞台上には光の部分と影の部分があります。イスラム風の装飾が施された建物の壁も見事でしたし、3幕の星が輝く夜空もよかったです。
 指揮のケヴィン・ローズは多分初めて。なんかいつも聴いている音楽とちょっと違う気がしました。テンポも聞き慣れたものより速かったり遅かったりしてましたが、東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団がしっかりついていき、最高の舞台を盛り上げました。


パリ・オペラ座バレエ団 日本公演
「ドン・キホーテ」
2014年03月16日 東京文化会館

音楽:ルートヴィク・ミンクス
編曲:ジョン・ランチベリー
振付・演出:ルドルフ・ヌレエフ(マリウス・プティパ版による)
美術:アレクサンドル・ベリヤエフ
衣裳:エレナ・リヴキナ
照明:フィリップ・アルバリック
パリ・オペラ座初演:1981 年3 月6 日

キトリ(ドルシネア):マチルド・フルステー
バジリオ:マチアス・エイマン

エスパーダ:ヴァンサン・シャイエ
街の踊り子:サブリナ・マレム

ドン・キホーテ:ギョーム・シャルロー
サンチョ・パンサ:シモン・ヴァラストロ
ガマーシュ、キトリの求婚者:マロリー・ゴディオン
ロレンツォ、キトリの父:パスカル・オーバン

ドリアードの女王:アマンディーヌ・アルビッソン
キューピッド:ミリアム・カミオンカ

演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
指揮:ケヴィン・ローズ

2014/03/20

【オペラ】震災後の喪失感を癒してくれる「死の都」新国立劇場オペラ

 夜の7時に開演して、上演時間が3時間20分の長丁場。カーテンコールも含めて終わったのが10時半でしたが、見た甲斐がありました。特設サイトはこちらです。
 ぽん太は「死の都」というオペラどころか、作曲者コルンゴルトの名前さえ初耳。とうことで、まずWikipediaでお勉強。
 エーリヒ・ヴォルフガング・コルンゴルト(Erich Wolfgang Korngold)はオーストリアとアメリカで活躍したユダヤ人作曲家で、1897年に現在のチェコのモラヴィアで生まれ、1957年にアメリカはハリウッドで死去。幼い頃から神童ぶりを発揮して「モーツァルトの再来」と呼ばれ、1920年、23歳でオペラ『死の都』(Die tote Stadt)を作曲して名声を得ました。その後、ハリウッドの映画音楽に関わるようになり、1938年にナチスの台頭に伴ってアメリカへ亡命してからは、映画音楽が活動の中心となりました。その分野では高い評価を受け、2度のアカデミー賞にも輝きましたが、クラシック音楽の作曲家としての評価には陰りが生じました。戦後オーストリアに戻ってクラシックの作曲家としての再起を図りましたがかつての名声は得られず、ハリウッドに戻って失意のうちに死去しました。しかし1970年代から再評価が行われるようになったそうです。
 実際に聞いてみると、後期ロマン派風の響きですが、不協和音も目立たず難解さもありません。かといって映画音楽的な俗っぽさもなし(映画音楽に関わるのはもっと後だから当たり前ですが)。透明感があって、春の夜明けのように甘美です。重低音のパンチも利いていて、ちょっと東欧風でヤナーチェクを思わせるところもあり(そういえば彼もモラヴィア生まれですね。ちなみに精神分析のフロイトもモラヴィア生まれです)、なかなか質が高いと思いました。
 「死の都」のストーリーは、死んだ妻の遺品を集めた部屋に閉じこもっている男が、妻とそっくりの若い女性に出くわして、倫理と欲望のはざまで引き裂かれて幻覚に陥る……というおどろおどろしいものですが、コルンゴルトの音楽は、倒錯的でグロテスクなものでも、退廃的な耽美主義でもありません。死の喪失感に捕われた主人公を癒し、死者からの惜別と新たな旅たちを励まし、祝福します。作曲されたのが第一次世界大戦の直後だったという時代背景と関係しているのだと思いますが、東北大震災の復興がままならない我々にとっても、こころから共感できるものでした。
 今回の公演は新国立オペラとしては新制作ですが、フィンランド国立歌劇場のレンタル・プロダクションだそうで、演出はカスパー・ホルテン。音楽をとても大切にする演出家のようで、曲調の変化にあわせて状況が変化したり、ちょっとした動作が音楽に呼応しておりました。マリーの黙役を使ったのも効果的で、幕が開いて少しやり取りがあったあとで、ベッドのシーツをめくったら亡き妻が横たわっていた時は、ちょっとびっくりしました。
 セットも美しく、遠近感が強調された左右の遺品が並んだ白い棚や、街並を斜め上から見たような背景など、舞台空間が射影幾何学的に歪んでいて、現代的に洗練されている一方、ドイツ表現主義映画のような不安感を引き出してました。舞台が暗くなってライトが灯ると、置かれていた遺品がブルージュの夜景になるのも面白かったです。
 パウル役のトルステン・ケールは、世界最高のヘルデン・テノールという前評判に漏れず、力強い歌声でした。出だしの高音がちょっと平板に感じたのと、最後の最後で声がよれたのが残念でした。ミーガン・ミラーの、若くて奔放なマリエッタと、死者マリーの声の歌い分けも見事でした。フランク/フリッツ役はアントン・ケレミチェフ。本来はトーマス・ヨハネス・マイヤーが歌う予定でしたが、代役となりました。公式サイトによると「本人の芸術上の理由により」となってますが、いったい何でしょうか?演出が気に入らないとか?ガストン役のダンサーは白鬚真二という人らしいです(公式サイト)。
 例によってヤロスラフ・キズリンクの指揮の良し悪しはわからず。東京交響楽団の演奏はダイナミックでキレがありました。
 余談ですが、コルンゴルトの後期ロマン派風の響き、シンフォニックな映画音楽といったところは、偶然でしょうが、話題の佐村河内とシンクロしてるみたいですね。
 

新国立劇場オペラ「死の都」

台本 :パウル・ショット(ユリウス・コルンゴルト)
    エーリヒ・ヴォルフガング・コルンゴルト
作曲 :エーリヒ・ヴォルフガング・コルンゴルト

3月12日(水)新国立劇場オペラパレス

芸術監督:尾高忠明
指揮:ヤロスラフ・キズリンク
演出:カスパー・ホルテン
美術:エス・デヴリン
衣装:カトリーナ・リンゼイ
照明:ヴォルフガング・ゲッベル
再演演出:アンナ・ケロ
舞台監督:斉藤美穂

【パウル】トルステン・ケール
【マリエッタ/マリー(声)】ミーガン・ミラー
【フランク/フリッツ】アントン・ケレミチェフ
【ブリギッタ】山下牧子
【ガストン/ヴィクトリン】小原啓楼
【ユリエッテ】平井香織
【アルバート伯爵】糸賀修平
【リュシエンヌ】小野美咲
【マリー(黙役)】エマ・ハワード
【ガストン(ダンサー)】白鬚真二
合唱指揮:三澤洋史
合唱:新国立劇場合唱団
管弦楽:東京交響楽団

2014/03/15

【歌舞伎】キラキラと光輝く玉三郎・七之助の「二人藤娘」2014年3月歌舞伎座昼の部

 2月の歌舞伎座は昼の部だけの観劇。公式サイトはこちらです。
 まずは「壽曽我対面」で華やかな幕開き。梅玉の工藤祐経は悪役には見えず、曽我兄弟を前にしても鷹揚たる態度。大きさと懐の深さが感じられます。橋之助の曽我五郎は声も大きく勢いがあっていいが、セリフを言った後にすっと納まってしまうのが、ちょっと淡白に見えました。孝太郎の曽我十郎はきちんとしてますが、ちと色気がありません。傾城には児太郎と梅丸の若手を抜擢。
 続いて「身替座禅」。菊五郎の山蔭右京は定番ですが、吉右衛門の玉の井はぽん太は初めてです。ぽん太の好きな壱太郎が侍女千枝でしたが、今回は玉の井を双眼鏡で見る方を優先させていただきました。白塗りの大きな顔に最小限の紅を差さし、大げさな表情を作らずほとんど無表情なその顔は、あたかも巌(いわお)のごとくして、吉右衛門の「俊寛」のラストの表情を思わせます。その菊五郎の右京の惚けぶりはいつもながらというか、いつも以上だった気がします。最初から最後まで笑いっぱなしでしたが、それでいてお笑いに走らず、歌舞伎としての品格を崩さないのは、菊五郎の好みと芸のなせる技でしょうか。太郎冠者の又五郎がしっかりと仕事。ラストであっさりと幕が降りたのは、時間の関係でしょうか?
 三番目は藤十郎の「封印切」で、これまた定番。扇雀の梅川、翫雀の丹波屋八右衛門と身内で固めて、息の合った舞台でした。上方風の情感を堪能させていたしました。でも奥座敷で扇雀が闇の中を探るときのロボットのような動きはいただけませんでした。秀太郎の井筒屋おえんに、我當の槌屋治右衛門。特に秀太郎がラストシーンでにっこりと微笑みながら門口に立つ姿は、それだけで錦絵のような風情がありました。
 最後は「二人藤娘」。ぽん太は「二人」は初めて見ました。玉三郎と七之助の饗宴。舞踊がわからないぽん太も感動いたしました。若くて美しい七之助の踊りも良かったですが、二人を比べてみると玉三郎の方が動きが少ないけど、やはり動きのおもしろさ、形の美しさは勝っておりました。なんだか舞台がキラキラ輝いていて、衣装を替えるたびに観客席からため息がもれました。


歌舞伎座新開場柿葺落
鳳凰祭三月大歌舞伎
歌舞伎座松竹経営百年
先人の碑建立一年
平成26年3月13日 歌舞伎座

昼の部

一、壽曽我対面(ことぶきそがのたいめん) 
 工藤祐経 梅 玉
 曽我五郎 橋之助
 曽我十郎 孝太郎
 近江小藤太 松 江
 八幡三郎 歌 昇
 化粧坂少将 児太郎
 喜瀬川亀鶴 梅 丸
 梶原平次景高 桂 三
 梶原平三景時 由次郎
 大磯の虎 芝 雀
 鬼王新左衛門 歌 六
 小林妹舞鶴 魁 春

二、新古演劇十種の内 身替座禅(みがわりざぜん)  
 山蔭右京 菊五郎
 太郎冠者 又五郎
 侍女千枝 壱太郎
 同 小枝 尾上右近
 奥方玉の井 吉右衛門

恋飛脚大和往来
三、玩辞楼十二曲の内 封印切(ふういんきり)
 亀屋忠兵衛 藤十郎
 傾城梅川 扇 雀
 丹波屋八右衛門 翫 雀
 井筒屋おえん 秀太郎
 槌屋治右衛門 我 當

四、二人藤娘(ににんふじむすめ)  
 藤の精 玉三郎
 藤の精 七之助

2014/03/10

【演劇】(ネタバレ注意!)同時代的な重いテーマに三谷幸喜一流の笑い「国民の映画」

 チケットの席番号がX列だったので、てっきりアルファベット順で一番後ろの席かと思ってたら、何と最前列。最初にスクリーンにタイトルが映写された時は見にくくて、これが続いたらどうなることかと思いましたが、その後は役者たちの細かい表情までしっかり見え、とても貴重な体験ができました。「国民の映画」の特設サイトはこちら

 一例をあげると、ユダヤ人だとバレてしまったフリッツが、ガス室によるユダヤ人根絶計画についてヒムラーたちが相談しているのを聞いている場面。フリッツ役の小林隆は、舞台中央に立ち、これまでと変わらないベテラン執事らしい無表情のまま、観客席側をじっと見つめています。しかし彼の喉は、生唾を何度も飲み込むかのようにひくつき、けいれんし、次第に顔面には脂汗が浮き出てきました。しばらくして次に彼が台詞を言ったとき、汗がぼたぼたと地面に滴り落ちました。
 「喉で演じる」というのは、以前に歌舞伎の壱太郎でも見たことがありますが、演技の定番なんでしょうか?ぽん太にはよくわかりません。
 「国民の映画」は、2011年に初演されて高い評価を得、数々の賞を受賞し、今回はその再演だそうです。ぽん太は前回は見逃したので、今回が初見でしたが、とても面白かったです。重いテーマを扱いつつ、三谷一流の笑いが随所にちりばめられておりました。ナチス宣伝省のゲッペルス大臣のホームパーティーに集まった映画関係者や政府高官による群像劇ですが、登場人物一人ひとりのキャラが明確で、それぞれのドラマが絡み合って、劇全体としての流れや展開が生じるという構成も見事でした。ピアノの生演奏や、ボードビル風の歌や踊りも楽しかったです。
 ナチスによるユダヤ人迫害というテーマは、外国人に対するヘイトスピーチや、国内でも権力を振りかざして敵味方に分けるような風潮など、「不寛容」が広がる現代日本にぴったりでした。ぽん太は思わず涙がこぼれそうになりましたが、最前列で泣いてるのも恥ずかしいので、我慢しました。
 劇中で「ヒトラー」と言わずに「あのお方」と言ってたり、「ユダヤ人」という言葉も一回しか出なかったのは、演劇の世界の「放送コード」みたいなのがあるんでしょうか。それとも、ここに描かれているのが過去のナチスの問題ではなく、現代のわれわれの問題であることを伝えたかったのか?
 ラストは、フィルムが終わったところで止めてもよかった気がしますが。それもありきたりかしら。長ゼリフが終わったタイミングでちょうどフィルムがなくなるように、うまくできてますね。ベテラン俳優さんには、そのくらいの時間の調整は簡単なのでしょうか。
 役者陣も、上に挙げた小林隆をはじめ、みな素晴らしかったです。ゲッペルスの小日向文世、ナチスの高官でありながら、どことなく自信なさげで、存在感がなかったりします。クラスでちょっと浮いている生徒、みたいな感じで、愛する映画に愛されないという悲哀が漂いました。エミール・ヤニングスの風間杜夫、ゲッペルスにへつらう赤ら顔の情けないおじさんぶりが面白く、演技力を感じました。カッコいい二枚目役しか見たことがないぽん太には衝撃的でした。フォルカー・シュレンドルフの映画「スワンの恋」で赤ら顔のシャルリュス男爵を演じた二枚目俳優アラン・ドロンを思い出しました。
 グスタフ・フレーリヒの平岳大、いかにも軽いノリの昔のスター俳優らしい風貌でした。グスタフ・フレーリッヒって、「メトロポリス」の支配者の息子で、貧しい女性を救った人ですよね。ああ、あの役者がこんなヤツだったとはショック!

 権力におもねない老俳優の小林勝也、大女優のシルビア・グラブもよかったです。ゲッペルスの妻・吉田羊、毎日の生活にうんざりしている妻が、昔の恋人との再会で一気に燃え上がって……という展開をプンプンにおわせておいて、あんな滑稽な結末になるなんて!ケストナーの今井朋彦も屈折感と心のなさが反体制派の作家っぽかったです。段田安則は、「虫にだって命があるんだ」などと意外といい人っぽく見せておいて、後半でユダヤ人絶滅計画を淡々と語るという対比が見事。渡辺徹は巨体の迫力が凄かったですが、ゲーリングの人物像がはっきりしなかったのと(ご本人の人柄がにじみ出て、とってもいい人に見えました)、ちょっと間の取り方が悪かった気がします。エルザ・フェーゼンマイヤーの秋元才加は体当たりの演技。
 「本格演劇風」な重厚な舞台装置もよかったです。ピアノ演奏は荻野清子さん、演技までやってお疲れさまでした。

パルコ劇場40周年記念公演
「国民の映画」
作・演出三谷幸喜
2014年3月6日  パルコ劇場

<登場人物>
■ナチス高官
宣伝大臣 ヨゼフ・ゲッベルズ‥‥小日向文世
親衛隊隊長 ハインリヒ・ヒムラー‥‥段田安則
空軍元帥 ヘルマン・ゲーリング‥‥渡辺徹
ゲッベルスの妻 マグダ・ゲッベルズ‥‥吉田羊 
ゲッベルスの従僕 フリッツ ‥‥小林隆

■映画人たち
ナチスと手を結んだ男 エミール・ヤニングス 映画監督‥‥風間杜夫
ナチスと敵対した男 グスタフ・グリュントゲンス 演出家・俳優‥‥小林勝也
ナチスに恐れられた男 エーリヒ・ケストナー 国民的作家‥‥今井朋彦 
ナチスに嫌われた男  グスタフ・フレーリヒ 二枚目俳優‥‥平岳大   
ナチスに利用された女 ツァラ・レアンダー 大女優‥‥シルビア・グラブ
ナチスに愛された女 レニ・リーフェンシュタール 若き女性監督‥新妻聖子  
ナチスを利用した女  エルザ・フェーゼンマイヤー 新進女優‥‥秋元才加

<スタッフ>
音楽・演奏 荻野清子
美術 堀尾幸男
照明 服部基
音響 井上正弘
衣裳 黒須はな子
ヘアメイク 河村陽子
舞台監督 加藤高

2014/03/08

【歌舞伎】(ネタバレあり!)歌舞伎役者による普通の演劇「空ヲ刻ム者」2014年3月新橋演舞場

 初日に見て来ました。会場は満員。観客の反応もよく、拍手も多かったですが、ぽん太はちと不満でした。公式サイトはこちらです。
 スーパー歌舞伎II(セカンド)をうたっての公演。猿翁が生み出したスーパー歌舞伎が、四代目猿之助によって新た出発する、という企画なのでしょうが、方向性に疑問を感じました。
 猿翁のばあいは、歌舞伎の型や約束事を守るという原則が守られており、それがスーパー歌舞伎の「歌舞伎」としてのアイデンティティとなっておりました。しかし今回の舞台では、見得もほとんどなく、歌舞伎としての様式性が意識的に排除されておりました。歌舞伎らしさは、衣装や、宙乗り、立ち回りといったところでした。これでは「スーパー歌舞伎」ではなく、「歌舞伎役者による普通の演劇」だと思います。じっさい歌舞伎役者じゃない三人の役者も舞台にとけ込んでおりましたが、役者たちの力量もあるでしょうけど、むしろ劇そのものが非歌舞伎的だったせいもあるんじゃないでしょうか。
 脚本も納得できませんでした。細かいところでは、面白いところがありました。例えば十和が一馬に最もふさわしい不動明王を彫ろうとしてできあがったのが、すべてを削ってしまって何ものこっていない状態=「空」(くう)だというのは、思いつきませんでした。題名の「空」が「くう」であることが、芝居を見て初めてわかったのは、最初から猿之助の狙いだったそうですが、ぽん太もまんまとのせられました。ただ全体が、仏教によって支配しようとする支配階級と、真の心の安らぎを求める農民たちの二項対立といった、一昔前のサヨク思想みたいになっているのが残念。東日本大震災を経たいま、支配被支配だの権力闘争だのを越えた、もっと大きな生きることの苦しみを視野に入れて欲しかったです。民衆のためを思っていた一馬がいつの間にか民衆を苦しめることになる……という話しもありきたり。こんかいの脚本の前川知大が仏教に詳しいのはわかりますが、もし「ヤマトタケル」などを書いた哲学者梅原猛が脚本を書いたら、もう一段深い思想を提示してくれたのではないかと考えてしまいます。
 歌舞伎なんだから、重苦しいテーマなんかなくてもいいじゃない、という考え方もあると思います。でもその場合に舞台の面白さを作り出すのは、歌舞伎独特の様式美だと思います。こんかいはその様式美を廃しているわけですが、そうしたらいったいどこに面白さを見いだせばいいのでしょうか。状況説明の独白をしている鳴子に他の登場人物が「誰に話しているの?」と突っ込んで、「説明だよ!」と答えるという常套手段のやり取りで笑えるお客さんには、これでいいのかもしれませんが。
 翌日見た三谷幸喜の「国民の映画」が、三谷流の笑いをとりながらもシリアスなテーマを扱って、とても面白かったので、よけいに落差を感じてしまいました。
 派手はでしい衣装を着て、ありきたりな感動もののドラマが展開して行くのを見ていると、なんだかアニメやテレビゲームの世界に見えて来ます。もともと歌舞伎はサブカルチャーだったわけですけど、スーパー歌舞伎IIはサブカルチャーと再融合していくのでしょうか(ちなみに海老蔵歌舞伎は、ナイナイ岡本を出したり、くまもんをだしたりして、テレビ業界と融合しつつあるようです)。
 立ち回りでの、ダブル戸板倒しや、戸板を使って猿之助が屋根に飛び上がる動きにはびっくりしました。宙乗りもダブルできましたか。
 演技はみな巧み。澤瀉屋のみなさんは、笑いを取るための間の取り方がうまいですね。どうせなら中車さんにも出ていただいて、土下座のパロディなど見たかったです。


スーパー歌舞伎II(セカンド)
空ヲ刻ム者
―若き仏師の物語―
平成26年3月5日 新橋演舞場

十和 市川 猿之助
長邦 市川 門之助
双葉 市川 笑 也
菖蒲 市川 笑三郎
興隆 市川 寿 猿
喜市 市川 弘太郎
時子 市川 春 猿
吾平 市川 猿 弥
九龍 市川 右 近
   
伊吹 福士 誠 治
鳴子 浅野 和 之
一馬 佐々木蔵之介

2014/03/05

【旅】伊勢マイナー観光(島崎又玄邸跡・駕籠たて松の潮湯跡など)

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 2月中旬、山田館に泊まったぽん太とにゃん子は、伊勢神宮とその周辺を観光しました。伊勢神宮は以前に一度参拝したことがあるのですが、式年遷宮してからは初めてです。
 ただ、有名どころの情報はちまたにあふれているし、皆さんも見飽きていると思うので、マイナーな情報だけご案内。
 まず上の写真は、宿から一月屋に行く途中、伊勢銀座しんみち商店街で見つけた古い建物。独特の木の塀が美しいです。
Img_7811 何の建物なのかググってみたけどよくわかりません。Youtubeのこちらの動画の12分30秒あたりに写っています。この商店街は、いまやシャッター商店街になってるんだそうです。
Img_7848 外宮の参拝のあと、あまりに寒かったので、参道からちょっと脇道に入った所にあるカフェ・ビアンカに入って暖をとりました。食べログはこちら
Img_7847 この店の売りのバターブレンドコーヒーと、バターブレンドコーヒー・プレミアムを一つずつ頼んで、飲み比べました。とっても美味しかったです。どら焼きみたいなのは、あいだにクリームが挟まってたんですが、何だか忘れました。
 バターブレンドコーヒーは、コーヒーにバターを浮かべて飲むわけではなく、焙煎した豆にバターをしみ込ませるのだそうで、バターの味はしません。
 そういえば、以前にボルネオのキナバル登山をしたときに、マーガリン・コーヒーというのがありましたが……。ああ、こちらの記事です。これは、コーヒー豆にマーガリンを加えてから焙煎するもので、コーヒー豆が貴重だった時代に増量するために行われていたのが、現在に残っているものでした。買って帰って飲んだら、苦みが強く深炒りのような味がしました。
Img_7849 裏道で見かけた土塀です。粘土と瓦を交互に積み重ねて造られているようです。
Img_7850 裏道を歩いていたら、素晴らしい建物が目に入りました。近づいてみると畑肛門医院とのこと。ホームページによると、大正5年に建てられた旅館を移築して、リフォームしたものだそうです。旅館だったら泊まりたいところですが、ぽん太の肛門はいまのところノープロブレムです。
Img_7851 ぽん太は以前の記事で、「月さびよ 明智が妻の咄しせん」という芭蕉の句を取り上げました。貧しいながらも芭蕉を一生懸命もてなしてくれた又玄(ゆうげん)の妻に対し、明智光秀の妻が自分の髪を売って夫を助けた話しをして、褒めそやしたという句です。こんかいググって初めて知ったのですが、「木曽殿と 背中合わせの寒さかな」という句は、又玄が大津の義仲寺で詠んだ歌だそうです。
 で、その又玄は、伊勢神宮の御師(おんし:宿泊や案内をする神官)でした。この又玄の家がどこにあったかは、たいへんぽん太の興味を引くのですが、ぐぐってみてもよくわかりません。唯一こちらのpdfファイルによれば、写真のあたりのようです(Yahoo!地図)。このpdfファイルは、三重県環境生活部文化振興課のサイトにあるので、信用できるかもしれません。
Img_7864 月夜見宮から外宮北御門に向かう神路通り(かみじどおり)です。
Img_7865 神様が夜になると、石垣の石のひとつを馬に変えてこの道を通ったそうで、人はこの道の真ん中を歩いてはいけないそうです。
Img_7866 シラセ(ホームページはこちら)で、バームクーヘンをゲット。
Img_7869 お昼ご飯は、内宮の参道にある「わらじや」(食べログ)で、伊勢うどんと手こねずしを頂きました。伊勢うどんはぶよぶよで、決して美味しいとは言えません。手こねずしはいわゆる漬け丼でしょうか。
Img_7880 式年遷宮が終わった皇大神宮の写真は載せないわけにはいきません。前回は向かって右にありましたが、今回は左側です。
Img_7892 夫婦岩で有名な二見興玉神社(ふたみおきたまじんじゃ)を訪れました。駐車場ですが、二見プラザ (株)夫婦岩パラダイスの向い側に無料の駐車スペースがあります。空いていたら利用しましょう。
Img_7891 ワラでできた不思議な円盤。輪注連縄(わしめなわ)というものだそうですが、ぽん太は初めて見ました。どういうものなのかちょっとぐぐってみましたが、あまりよくわかりません。
Img_7901 「駕籠たて松の潮湯跡」という案内板がありました。こ、こ、これは温泉ファンのぽん太の興味を引きつけます。
 明治15年(1882年)に長與専斎という人の尽力で、我が国初の海水浴場がこの場所に開設されたこと、潮湯(海水浴場)の設備も男女別四槽できたこと、日本最初の潮湯であることが書かれています。
 この案内板を論ずる理解するには、まず「潮湯」というものを理解しなければなりません。weblio辞書を引いてみると、(1)「塩風呂(しおぶろ)」に同じ、(2)塩分を含む温泉、(3)食塩を加えた白湯(さゆ)、とのこと。(2)や(3)ではないので、今度は塩風呂を引いてみると(Weblio辞書)、「海水や塩水を沸かした風呂。塩湯」と書かれています。つまり、海辺に浴槽をつくり、そこで海水を沸かして入浴するのが「潮湯」です。
 それから「海水浴」ですが、皆さんは「海水浴」と聞くと、海で泳いだり、浜辺で背中を焼いたりビーチバレーをしたりするレジャーを思い浮かべると思いますが、コトバンクにも書かれているように、元来は療養を目的とするものでした。
 おそらく日本人も古来から、海で泳いだり、塩水を沸かして入ったりはしていたはずだと思いますが、西洋的な療養の観点に基づく「海水浴場」が、日本で初めて作られたということなのでしょう。
 ただ、Wikipediaを見ると、「日本最初の海水浴場」を標榜するところは複数あるようですが、二見浜は日本最古の海水浴所として「国に指定」されたと書かれています。
 最後は「長與専斎」です。これはWikipediaに出てました。長與專齋(ながよせんさい)は、天保9年(1838年)に長崎県で生まれ、明治35年(1902年)に死去した医師・官僚。緒方洪庵の適塾で学んで塾頭を務めた後、ポンペに西洋医学を学びました。長崎の医学教育の近代化などを行った後、政府の衛生局の局長となるなどして、衛生行政に尽力したそうです。へ〜え、Hygieneの訳語として「衛生」をあてたのが、この長與さんなんだそうです。
 いろいろぐぐっていたら、面白い論文が見つかりました。小口千明「潮湯の偏在性に関する地理的予察 ーー日本における海水浴普及との関連からーー」(城西人文研究第13号、1986年、57-74ページ)です(pdfファイルはこちら)。海水浴や潮湯に関するさまざまな知識が得られます。
 また、こちらの三重県立博物館のサイトには、明治23年(1890年)の「二見浦真景之図」(ふたみうらしんけいのず)があります。海水浴場が、明治17年(1884年)にやや西側に移転してからの、二見浦の版画を見ることができます。

2014/03/04

【宿・居酒屋】いにしえの伊勢の雰囲気が漂う木造三階建て・山田館(★★★)/居酒屋一月屋/赤福餅とぜんざい

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 2月の中旬、ぽん太とにゃん子は、伊勢にある山田館に泊まりました。外宮の参道に位置し、レトロな木造三階建てが魅力の宿です。以前にテレビの「アド街ック天国」で見て、目を付けていたのです。公式サイトはこちらです。
Img_7810 夜の玄関の佇まいも、なかなか素敵です。公式サイトによると、大正時代に食堂兼旅館として開業し、昭和2年に増築が行われた建物で、戦火を逃れ、現在まで残っているのだそうです。
Img_7835 入り口正面にある階段には、赤い絨毯が敷かれています。
Img_7834 細長い中庭を囲む木造建築が見事です。
Img_7807 こちらが、ぽん太とにゃん子が泊まった部屋です。普通の和室ですが、モルタル造り(?)の別館の部屋です。
Img_7832 本館の部屋を見せてもらいました。ちょっと古びた感じなのが残念ですが、改装してレトロモダンみたいになってしまうのも味気ないし、難しいところです。
Img_7833 三階に張ってあった貼紙。建物が造られた当時、神宮を見下ろして用を足すのが不謹慎だとして、三階にはトイレが造られなかったんだそうです。
Img_7818 浴室です(温泉ではありません)。シンプルですが、そこはかとない美しさがあります。
Img_7829 玄関の上にあったお飾りです。蘇民将来を祀ってあるようですが、どのような意味があり、いつも飾っているのか、この時期だけなのか、まったく不明です。

Img_7814 さて、夕食ですが、今回の旅は牡蠣とカニをいただく飽食の旅という企画だったので、初日の本日は素泊まりでお願いし、外で軽く飲むことにしました。訪れたのは一月家。太田和彦さんがdancyu(2013年7月号)で紹介していた居酒屋です。食べログはこちら。内部はけっこう広く、木造の建物がレトロな雰囲気で心地よいです。地元の人たちで賑わっており、並んだテーブルに相席で座り、注文をメモ用紙に書いてお願いします。
Img_7816 オススメは湯豆腐だそうです。運ばれて来たのを見て、「あれ、冷や奴じゃないよ」と言おうと思ったのですが、鍋ではなくて皿に盛られて出て来るのがこの店のスタイルだそうです。メニューに「しびさし」と「よこわさし」という聞き慣れない名前があったので頼んでみましたが、どちらもマグロのようです。こちらのYahoo!知恵袋を見ると、「しび」が何を指すかは地域によって違うようですが、三重県の回答者はビンチョウマグロ(ビンナガ)と答えてますね。Wikipediaによれば、古事記や万葉集でマグロのことが「シビ」と記載されているそうです。そう聞くと、伊勢で「しび」をいただくのが有り難い気持ちになってきます。「よこわ」の方はクロマグロの子供を関西ではこう呼ぶそうで、関東なら「メジマグロ」ですね。
Img_7817 左は「鮫たれ」。伊勢名物の「さめのたれ」ですね。鮫の肉に塩やみりんをかけて干したものを、焼いて食べるんだそうです。右は「穴子フライ」。東京では穴子の天ぷらは定番ですが、「フライ」はぽん太は初めてでした。地酒はあんまり充実してないようで、燗酒(銘柄不明)をいただきました。外は身を切るような寒さで、この雰囲気だと、燗酒もいいですね。

Img_7823 朝食は、近くの赤福の茶店で、赤福餅とぜんざいをいただきました。
Img_7824美味しゅうございました。

2014/03/03

【バレエ】これぞABT!劇的で圧倒的な迫力の「マノン」アメリカン・バレエ・シアター

 今年のABT来日公演、ぽん太の最後の鑑賞は「マノン」でした。「くるみ割り」、「ガラB」と、ここまでちょっと不完全燃焼だったのですが、ドラマチックで迫力があり、これぞABTという舞台で、見ているぽん太も完全に燃え尽きて真っ白な灰となりました。公式サイトはこちら
 ぽん太が行った回のキャストは、ヴィシニョーワとゴメス。といっても積極的に選んだわけではなく、日程の都合でたまたまだったのですが、素晴らしいパフォーマンスに大満足でした。
 ヴィシニョーワの全幕物は、ぽん太は2009年のマリインスキー来日公演の「眠れる森の美女」しか見てませんが、キラキラ光り輝くようなオーロラ姫でした。
 しかし今回の「マノン」は魔性の女で、マクミランのドラマチックな振付け。整った顔立ちのヴィシニョーワにはどうなのかな〜などと心配していたのですが、全くのぽん太の杞憂で、見事な表現力でした。ほんとに何でもオッケーなんですね〜。もちろんテクニックも完璧。感情表現に力を入れて踊りがくずれることはなく、正確にバレエを踊った上での表現力でした。
 ヴィシニョーワのマノンは、ふしだらさや妖艶さは感じられず、ちょっと倫理観は希薄だけど恋に生きる根は純粋な女性という印象でした。そのため、不幸な結末に対して深く同情することができました。
 ゴメスのデ・グリューは、神学生というよりこっちの方が遊び人っぽい雰囲気でしたが、小手先の感情表現を排した、安定した大きくて力強い踊りが素晴らしかったです。
 シムキン君のレスコーは、なんだか可愛らしすぎて、ならず者っぽさがありませんでした。でも踊りはキレがあってジャンプも高く、特に酔っぱらいの踊りは秀逸でした。こっけいな踊りなのに、テクニックの完璧さが感じられるのが凄いですね。コープランドの情婦もなかなかでした。
 マクミランの振付けは、2年前に新国立で「マノン」を見た時は、なんかリフトが凝り過ぎのような気がしたのですが、今回は古典的な振付けから逸脱しようと試みている部分として、違和感なく受け止められました。ぽん太の見方が変わったのか、それともABTの完璧なテクニックのせいなのかはわかりません。
 ウィルキンズ指揮の東京シティ・フィルの演奏も悪くなく聞こえたのは、これもオーチャードと東京文化会館の音響の差なのかどうか。
 よ〜し、次はパリ・オペラ座だ!


アメリカン・バレエ・シアター2014年来日公演
≪マノン≫
2014年2月27日 東京文化会館

振付・監督:ケネス・マクミラン
音楽:ジュール・マスネ
編曲:マーティン・イエーツ
舞台指導:ジュリー・リンコン、内海百合
舞台装置・衣装デザイン:ピーター・ファーマー
照明:クリスティーナ・ジャンネッリ
指揮:オームズビー・ウィルキンズ
管弦楽:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

<出演>
マノン:ディアナ・ヴィシニョーワ
デ・グリュー(神学生):マルセロ・ゴメス
レスコー(マノンの兄):ダニール・シムキン
レスコーの情婦:ミスティ・コープランド
ムッシューG・M:ヴィクター・バービー
流刑地の看守:ロマン・ズービン
マダム:ニコラ・カリー
物乞いの頭:アロン・スコット
高級情婦:ジェマ・ボンド,メラニー・ハムリック,ローレン・ポスト,
エイドリアン・シュルツ,カレン・アップホフ
女優:コートニー・ラヴァイン,小川華歩,ルシアーナ・ヴォルトリーニ,ポリーナ・ワスキー
紳士:アレクセイ・アグーディン,グラント・デロング,ルイス・リバゴルダ
客:トーマス・フォースター,ブレイン・ホーヴェン,ダンカン・ライル,ダニエル・マンタイ,エリック・タム
情婦:相原舞,アレクサンドラ・バスメイジー,ブリタニー・デグロフト,エイプリル・ジャンジェルーソ,ニコール・グラニエロ,ガブリエル・ジョンソン,ジェイミー・コピット,カッサンドラ・トレナリー,リーヤン・アンダーウッド,ジェニファー・ウェイレン,ステファニー・ウィリアムズ,リリー・ウィズダム
物乞い:ケネス・イースター,スンウー・ハン,ジョナサン・クライン,パトリック・オーグル,カルヴァン・ロイヤル,ゲイブ・ストーン・シェイヤー
老紳士:クリントン・ラケット
宿屋の主人:ガブリエル・ジョンソン
女中:ジェイミー・コピット
町の女性:コートニー・ラヴァイン,小川華歩,カレン・アップホフ,ルシアーナ・ヴォルトリーニ,ポリーナ・ワスキー
駐屯兵:ケネス・イースター,トーマス・フォースター,ブレイン・ホーヴェン,ジョナサン・クライン,ダンカン・ライル,ダニエル・マンタイ,カルヴァン・ロイヤル,エリック・タム

2014/03/02

【バレエ】オシポワわずか4分カテコも1回/オール・スター・ガラ(Bプログラム)アメリカン・バレエ・シアター(ABT)

 え〜ん、え〜ん、オーシポワをもっと見たかったよ〜。公式サイトはこちらです。
 ワシーリエフとの「海賊」を楽しみにしていたのに、ワシーリエフが体調不良で休演とのこと。代わりにオーシポワが踊ったのは、「マノン」のじみ〜なソロで、しかもたった4分。こんなものを観に来たのではにゃい! もっと飛んだり跳ねたりするのを見たかったんだい!
 しかし、「マノン」はこのあと全幕をやることになっているのに、先にガラで踊るのってあり?まさか嫌がらせ?それとも、それしか衣装がなかったのでしょうか。カーテンコールも、他のダンサーはみな2回だったのに、オーシポワは一回だけ。拍手は続いていたんですけど。誰かかわりにアリを踊るダンサーはいなかったのかな〜。
 帰ってから公式サイトのブログをチェックしてみると、前々日の24日のブログに演目の変更が出てるので、ワシーリエフの体調不良はけっこう急だったんですね。ソチ五輪の開会式では元気そうでしたが。急に演目変更になって、オーシポワ実はむっとしてたんでしょうか。こんかいオシポワはガラだけのための来日。きっと自分のベストのパフォーマンスを見せられなくて、がっかりしてたんでしょうね。
 さて、「テーマとヴァリエーション」は初めて観る演目でしたが、いかにもバランシンらしい振付け。ソロと群舞による幾何学的な踊りで、手をつないでくぐっていくお決まりの振付けもありました。ポリーナちゃんは、2012年9月にABTに移籍後、ぽん太は初めて見ました。相変わらず手足が長くて美しいです。なんだか胸が小さくなったような気がしますが
 続いてマーフィーとゴメスの「ロミジュリ」のバルコニーのパ・ド・ドゥ。初恋に胸をときめかす若いカップル、という感じではありませんでしたが、とても良かったです。マーフィーは表情といい姿といい、ギリシャの彫刻を見ているような神々しさでした。一方のゴメスはどっしりと安定していました。二人ともテクニックも完璧で、振付けの一点一画をもおろそかにせず、きっちりと踊り切ったうえでの感情表現でした。「バレエ」を見たという満足感がありました。
 「ドン・キホーテ」では、ヘレーラがバランスのよさを見せました。ホワイトサイドは、これまで群舞でしか見たことがなかったようでしたが、なかなかハンサムで切れ味のいい踊りでした。
 ケントとボッレの「椿姫」の〈黒〉のパ・ド・ドゥは、2年前にシムキンのガラ「インテンシオ」で見ました。完成された芸ですね。
 最後は日本初演作品、「ピアノ・コンチェルト第1番」です。同名のショスタコービッチの音楽に、ラトマンスキーが振り付けたものです。音楽は、早い時期の1933年に作曲されたものなので、叙情的で聴きやすかったです。振付けは、先日の「くりみ割り人形」よりは現代的でしたが、もう一つ何か引きつけるものが欲しいです。音楽にはよく合ってましたが。衣装はソロが男がグレー(シルバー?)で女がレッド。群舞は前側がレッドで後ろ側がグレーで、振り向くと色味が変わって面白かったです。赤い星形や記号のちぎれたのが浮かぶ美術もきれいでした。
 でも、「くるみ割り」、「ガラB」と、ABTにしてはちょっと物足りないな〜。「マノン」に期待!
 

オール・スター・ガラ【Bプログラム】
2014年2月26日、 オーチャードホール

≪テーマとヴァリエーション≫
振付:ジョージ・バランシン/音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー(組曲第3番より)
舞台装置・衣装:ザック・ブラウン
指揮:デイヴィッド・ラマーシュ
ポリーナ・セミオノワ/コリー・スターンズ
加治屋百合子,ルシアーナ・パリス,エイドリアン・シュルツ,デヴォン・トゥシャー,アレクセイ・アグーディン,アレクサンドル・ハムーディ,ブレイン・ホーヴェン,ショーン・スチュワート,ケリー・ボイド,ブリタニー・デグロフト,エイプリル・ジャンジェルーソ,ジェイミー・コピット,ローレン・ポスト,ジェシカ・サーンド,ルシアーナ・ヴォルトリーニ,キャサリン・ウィリアムズ,グレイ・デイヴィス,トーマス・フォースター,ジョセフ・ゴラック,ダンカン・ライル,ルイス・リバゴルダ,ホセ・セバスチャン,ゲイブ・ストーン・シェイヤー,ツィアオ・チャン

≪ロミオとジュリエット≫よりバルコニーのパ・ド・ドゥ
振付:ケネス・マクミラン/音楽:セルゲイ・プロコフィエフ/舞台装置・衣装:ニコラス・ジョージアディス
指揮:オームズビー・ウィルキンス
ジリアン・マーフィー/マルセロ・ゴメス

≪マノン≫第2幕よりマノンのソロ
振付:ケネス・マクミラン/音楽:ジュール・マスネ/編曲:マーティン・イエーツ/衣装:ピーター・ファーマー
指揮:デイヴィッド・ラマーシュ
ナターリヤ・オーシポワ
コリー・スターンズ/ロマン・ズービン

≪ドン・キホーテ≫第3幕よりパ・ド・ドゥ
振付:マリウス・プティパ、アレクサンドル・ゴルスキー/音楽:レオン・ミンクス/衣装:サント・ロクァスト
指揮:オ-ムズビー・ウィルキンズ
パロマ・ヘレーラ/ジェームズ・ホワイトサイド

≪椿姫≫第3幕より〈黒〉のパ・ド・ドゥ
振付:ジョン・ノイマイヤー/原作:アレクサンドル・デュマ・フィス/舞台指導:ケヴィン・ヘイゲン、ヴィクター・ヒューズ
音楽:フレデリック・ショパン/衣装:ユルゲン・ローゼ
ピアノ:エドワード・ニーマン
ジュリー・ケント/ロベルト・ボッレ

≪ピアノ・コンチェルト第1番≫
振付:アレクセイ・ラトマンスキー/音楽:ドミトリー・ショスタコーヴィチ(ピアノ協奏曲第1番ハ短調、作品35より)
衣装:ケソ・デッカー/舞台装置:ジョージ・ツィーピン/照明デザイン:ジェニファー・ティプトン
照明:ブラッド・フィールズ
管弦楽:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
クリスティーン・シェフチェンコ/シオマラ・レイエス
カルヴァン・ロイヤルⅢ/ダニール・シムキン
ツォンジン・ファン,コートニー・ラヴァイン,イサドラ・ロヨラ,ジェシカ・サーンド,リーヤン・アンダーウッド,キャサリン・ウィリアムズ
アレクセイ・アグーディン,グラント・デロング,ケネス・イースター,ダニエル・マンタイ,パトリック・オーグル,ホセ・セバスチャン
ピアノ:バーバラ・ビラック
トランペット:上田仁
指揮:チャールズ・バーカー

2014/03/01

【文楽】お染久松のバカップルより親に共感。「染模様妹背門松」2014年2月国立劇場第二部

20140223_140643  国立劇場まで文楽を見に行ってきました。大雪の跡がそこかしこに残ってますが、劇場の前庭の梅がきれいに咲いてました。公式サイトはこちらです。

 さて、「染模様妹背門松」は文楽ではもちろん、歌舞伎でも見たことがない演目ですが、元ネタは「お染久松」の心中事件のようです。以前にも書きましたが、宝永7年(1710年)正月6日に、大坂板屋橋南詰の油問屋で、丁稚の久松が主人の娘そめと刃で心中した事件で、様々な異説もあるようです。こちらの文化デジタルライブラリーのサイトが詳しいです。

 この浄瑠璃が作られたのは、コトバンクによれば、明和4年(1767年)のこと。事件から60年近く後ですから、お染久松の心中事件は人々に知れ渡っていたことになります。

 当時、こうした情死や刑死などの事件を、門付け芸人が三味線などを伴奏にして歌うということが行われており、歌祭文と呼ばれておりました。「染模様妹背門松」の「生玉の段」で、現実でお染久松の歌祭文が広まっているのを踏まえて、「まだ死んでいないのに、自分たちの心中が歌祭文になって広まっている」という形で効果的に使われていました。

 これは夢だったということになりますが、夢から覚めたあとも、番頭善六が二人を陥れようとして、お染久松の心中話を歌祭文にして広めているという下りがあります。夢であり現実であれ、「自分たちのことがいつの間にか世間の噂になっている」という体験が、統合失調症の症状と似ているのが、精神科医のぽん太にはちょっと興味深かったです。

 ちなみに、やはりお染久松を題材にした歌舞伎の「新版歌祭文」(安永9年(1780年)初演)は、世間に流布している歌祭文を踏まえているので、このように名付けられたわけです。

 さて、「染模様妹背門松」では、お染が結婚させられることになっている山家屋清兵衛もとっても良い人で、お染と久松ができてしまっていることも飲み込んだ上で、お染との婚礼を進めようと考えております。久松の父久作、お染の母おかつも善人で、恋に夢中になって周りが見えなくなっているお染久松に何とか正気を取り戻して欲しいと願っています。善人に囲まれている分、恋故に盲目となったお染と久松のわがまま振りが際立って、皆が心配しているのにこのバカップルは〜という気持ちになってきます。お染久松よりも、親たちについつい感情移入してしまうのは、ぽん太も歳をとったからでしょうか。久作が久松を革の足袋で打ち据えるシーンは、涙が出そうになりました。

 義太夫さんでは、見せ場の質店の段を語った千歳大夫が、さすがに一番よかったです。睦大夫さんは声が枯れてましたが、大丈夫でしょうか。

 人形遣の良し悪しはぽん太にはまったくわかりませんが、お染と久松がホントに若い男女に見えたことと、蔵前の段で蔵の窓から見える久松の悲しみと絶望が、強く印象に残っております。

 

「染模様妹背門松」(そめもよういもせのかどまつ)
2014年2月23日第二部 国立劇場小劇場

油店の段
   中 咲甫大夫
     清志郎
   切 咲大夫
     燕三

生玉の段
  久松 睦大夫
  お染 芳穂大夫
  善六 南都大夫
     喜一朗
  ツレ 龍爾

質店の段
     千歳大夫
     清介

蔵前の段
     文字久大夫
     藤蔵

  お染 清十郎
  久松 勘彌
  善六 勘十郎
  下女りん 紋秀(前半) 簑紫郎(後半)
  多三郎 清五郎
  芸妓おいと 紋臣
  清兵衛 玉志
  母おかつ 簑二郎
  源右衛門 幸助
  利兵衛 亀次
  祭文売り 紋吉
  質受男 文哉(前半) 玉勢(後半)
  質入女房 文昇
  久作 和生
  太郎兵衛 玉輝

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