【雑学】クラック(crack):ガタリ・バルテュス・リルケ・ブラックウッド
これまでのみちくさのおさらいです。
以前の記事「【展覧会】バルテュス展@東京都美術館」でのみちくさ。
ぽん太が以前に読んだフェリックス・ガタリのバルテュス論が、「街路のなかの亀裂」(Cracks in the street、『分裂分析的地図作成法』所収)というタイトルだったのですが、このCrakという言葉の出所がよくわからないでいたのでした。ところが、その後に読んだ『バルテュス、自身を語る』によると、クラックという言葉は、バルテュスが幼かった時にリルケが語って聞かせたことだということが分かりました。
その後の記事「【絵画】バルテュス展補遺・クラックとローランス・バタイユ」でのみちくさ。
「ユリイカ 2014年4月号 特集=バルテュス 20世紀最後の画家」に収録された江澤健一郎の「『裂け目』の画家バルテュス」という論文によると、リルケは「クラック」という言葉をアルジャーノン・ブラックウッドから取って来たそうで、夜中の零時に、今日と明日の間の裂け目(クラック)に滑り込むことによって、時間の外の王国に入ることができるんだそうです。
で、ぽん太は邦訳されているブラックウッドの小説を何冊か読んでみたのですが、「クラック」の出所は分かりませんでした(小説は面白かったですが)。
ところが今回、ようやく出典を見つけることができました。ふふふ……。
それは「The education of Uncle Paul 」(1909年)という小説で、残念ながら邦訳はないようですが、こちらで英語の原文を読むことができます。Read onlineというリンク先の、巻頭辞と、181ページから182ペーじあたり(14章)に出てきます。
カナダの大自然のなかから20年振りに故郷に戻ったポール叔父さんは、子供のような心を保ったままです。妹の子供たちに促されて、子供たちだけに見えるという、昨日と明日のあいだの亀裂(crack)を通って、もう一つの不思議な世界に入り込みます。ポールはその世界で体験したことを物語に書き、子供たちに読んで聞かせるのでした……。
詳しい内容は、各自お読み下さい。これを元に「Through the Crack」 (1920)という演劇も作られたようですが、残念ながらぽん太はこちらの脚本を見つけることはできませんでした。
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