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2014/07/06

【絵画】バルテュス展補遺:クラックとローランス・バタイユ

 いつぞやぽん太がバルテュス展について書いた記事(→こちら)のなかで、リルケが幼いバルテュスに語った「クラック」という言葉がバルテュスのキーワードのひとつであること、そして「ユリイカ 2014年4月号 特集=バルテュス 20世紀最後の画家」に江澤健一郎の「『裂け目』の画家バルテュス」という論文が掲載されていることを書きました。

 手に入れて読んでみたところ、リルケは「クラック」という言葉を、アルジャーノン・ブラックウッドの小説から取って来たそうです。彼の小説の中に、「いつも零時に、終わる日と始まる日の間に微かな裂け目が生じて、非常に巧みな人物はそこにうまく滑り込み、時間の外に出て、われわれが耐え忍ぶいかなる変化とも無縁な王国に入り込むでしょう」と書いてあるんだそうです。

 な〜んだそうだったのか、これで納得……じゃなくて、じぇんじぇんわからんがね。第一アルジャーノン・ブラックウッドって誰じゃーのん。初めて聞いたぞ。「アルジャーノンに花束を」は関係ないよね。

 困った時のWikipedia先生に聞いてみると、アルジャーノン・ブラックウッド(Algernon Henry Blackwood、1869 - 1951年)は、イギリスのホラー・ファンタジー作家とのこと。翻訳もけっこう出てるみたいなので、2〜3冊読んでみよ〜っと。

 ただ、リルケが引用した文章が、どの小説のものなのかがわからんな〜。参考文献には、Rilke, Balthus, Lettre à un jeune peintre, suivi de Mitsou, が上がってますが、フランスのアマゾンで買えるようなので(→こちら)、興味のある方はどうぞ。ぽん太はそこまでみちくさする元気はありません。

 

 それからもひとつ、バルテュス展に来ていた「猫と裸婦」(1948-50年)や「決して来ない時」(1949年)、「地中海の猫」(1949年)のボートに乗ってる女の子のモデルって、ローランス・バタイユなんですってね。

 ローランス・バタイユ( Laurence Bataille, 1930 - 86年)は、ジョルジュ・バタイユとシルヴィア・バタイユの娘。ジョルジュ・バタイユ(Georges Albert Maurice Victor Bataille, 1897 - 1962年)は、フランスの作家・思想家。昼は真面目な図書館職員、夜になると妖しくエロチックな本を書いていた人ですな。ちなみにこちらのサイトでは、バタイユの代表作『眼球譚』を4コマ漫画で読むことができます(笑)。シルヴィア・バタイユ(Sylvia Bataille, 1908 - 1993年)はフランスの女優。代表作はジャン・ルノワール監督の「ピクニック」(1936年)でしょうか。

 普通はこのくらいまででしょうが、精神科医のぽん太はさらに書かなければならないことがあります。というのも、シルヴィア・バタイユは1938年頃から精神分析家ジャック・ラカンとダブル不倫状態となり、1941年に二人の間に娘が生まれます。この娘がジュディット(Judith)で、のちにジャック=アラン・ミレールと結婚し、ジュディット・ミレールとなるわけですな。ちなみにぽん太は昔、京都のシンポジウムで見たような気がしますが、いかにも気位の高い箱入りお嬢さんという感じでした。

 で、シルヴィアとラカンは1953年に正式に結婚しましたから、ローランス・バタイユは連れ子でラカンの娘となったわけです。ラカンの影響か、彼女もやがてラカン派の精神分析家になりました。

 彼女は16歳の頃からバルテュスの絵のモデルになったそうです。愛人であったという説もあるようですが、いまのところ真偽不明。その後、演劇の世界に入り、共産党に入党。アルジェリア独立運動に参加しましたが、1960年に逮捕され、6ヶ月間刑務所に入れられたそうです。ラカンは娘が政治に関わっていることを誇らしげに感じていたようです。物理学者アンドレ・バッシュ(Andrè Basch)と結婚して娘をもうけたそうです。興味がある方は、彼女の著書『夢のへそ』をフランスのアマゾンで購入できます(→こちら)。

 また、岩波書店の『 フロイト全集 第13巻』に挟み込まれている月報15に、向井雅明の「ローランス・バタイユの想い出に捧ぐ」という文章があります。

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