【歌舞伎】完成された芝居の「怪談乳房榎」・2014年8月歌舞伎座第三部
ひとつだけ残った第三部を観劇。公式サイトはこちらです。
「勢獅子」は、山王祭りを舞台にした明るく楽しく賑やかな舞踏が、常磐津の伴奏にのせて繰り広げられます。
常磐津といえば、人間国宝の常磐津一巴太夫さんが、8月16日に公演先のホテルでお亡くなりになったという悲報が流れました。あの名調子が二度と聞けないと思うと、悲しいかぎりです。9月に歌舞伎座で聴くのを楽しみにしていたのに……。けっきょく新歌舞伎座の舞台に一度も上がらず逝ってしまいました。ぽん太は、7月の大阪松竹座で得意の喉を聴かせて頂いたのが最後となりましたが、いま思えば、わざわざ大阪まで行っておいて良かった……。心からご冥福をお祈ります。
さて、にぎやかな「勢獅子」に話しを戻すと、柔らかくつやのある三津五郎の踊りに何と言っても目が行きます。それから巳之助、勘九郎に文字通り「勢い」が感じられました。特に巳之助、「本気」になってきたみたいです。
続いて「怪談乳房榎」。「訪米歌舞伎凱旋記念」と銘打っておりますが、今年の7月のニューヨーク公演のプロダクションをそのまま持ってきたもののでしょうか。三階さんが幕間にぽん太も聞き取れな流暢な英語を話してました。
基本的には、昨年3月に赤坂ACTシアターでやったものと変わらないようですが、「乳房榎の場」はやっぱりなくなって、円朝で終わるパターンに戻ってました。その方が善悪が分かれてスッキリすると言えばスッキリしますが、一方で歌舞伎独特の複雑さが減じてしまうのは致し方ありません。
勘三郎を始め、出演者全員が自信を持って演じていて、「完成した芝居」という感じでした。勘三郎もこの成功に安住せず、先を目指して進んでいってください。
歌舞伎座
八月納涼歌舞伎
平成26年8月24
第三部
一、勢獅子(きおいじし)
鳶頭 三津五郎
鳶頭 橋之助
鳶頭 獅 童
芸者 七之助
手古舞 新 悟
鳶の者 国 生
手古舞 鶴 松
鳶の者 虎之介
手古舞 児太郎
鳶頭 巳之助
鳶頭 勘九郎
鳶頭 彌十郎
芸者 扇 雀
訪米歌舞伎凱旋記念
三世實川延若より直伝されたる
十八世中村勘三郎から習い覚えし
二、怪談乳房榎(かいだんちぶさのえのき)
中村勘九郎三役早替りにて相勤め申し候
菱川重信/下男正助/うわばみ三次/三遊亭円朝 勘九郎
重信妻お関 七之助
茶店の女お菊 小山三
松井三郎/住職雲海 亀 蔵
磯貝浪江 獅 童
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