すんごく時間がたってしまいましたが、ガラ公演の感想。公式サイトはこちら。
平日の上にかなり渋いプログラムなので、空席が目立つかなと思ったのですが、意外と満員でした。そういえば客席に、一人できた高齢男性がやけに目立ちます。これは空席を関係者に配ったな……。ぽん太の席の真後ろがまさにそうした人で、バレエはもとよりコンサートや演劇にも行ったことがないのか、鑑賞マナーがなってませんでした。5秒置きに咳払い、1分に一回「ハ〜ァ」とため息をつきます。ガサガサと音をたててペットボトルを出したと思ったら、次は「ゴクンゴクン」と飲む音が。その後も咳払いが続き、ビニール袋を何度もシャカシャカ言わせます。咳払いは生理現象だから百歩譲って許すとしても、ビニール袋は許せません。流石のぽん太も腹に据えかね、隣りの人も注意しないようなので、意を決してぽん太が後ろをじっと振り返って牽制。ようやくビニール袋を下に置いてくれたようでした。
第二部が始まる前、係のお姉さんがやってきて、その男性に注意をしておりました。きっと幕間に周りのお客さんからのクレームが殺到したのでしょう。「すみません」と謝る男性が、こんどは気の毒になってきました。切符もらって初めてバレエを見に来たのに、なんか嫌な思いをして。これでバレエを嫌いにならないで欲しいです。
ごっほん、本題に入りましょう。
先ほど書いたように、こんかいのプログラムはかなり渋く、現代作品が多かったです。ぽん太が観たことあるのは、『ボリショイに捧ぐ』、『モペイ』、『伝説』、『ドンキ』の4つだけで、振付家も知らない人ばかり。ついでにダンサーも知らない人ばかりでした。
でも、よく見る演目ばかりのガラと違って、これはこれで面白く、なかなか楽しめました。
まずは『ボリショイに捧ぐ』。以前に、元シュツットガルトのアイシュバルト、ラドメーカーのペアで観たことがあります。アクラバティックなリフトの連続でしたが、ちょっと女性が重そうでした。
『Ssss..』よりソロ。なんかカクカクした動きで、振付が面白くありませんでした。少なくともショパンのノクターン(第1番変ロ短調)には合ってなかったと思います。
振付はエドワード・クルグ。ぽん太は、2013年に「マラーホフの贈り物」で「ギルティー」という作品を観ているようですが、記憶がありません。英語のWikipedia(こちら)には載っていて、エドワード・クルグ(Edward Clug)は1973年ルーマニア生まれ、スロベニア国立劇場時代に振付家として知られるようになったようです。『Ssss..』は2012年にシュツットガルト・バレエに振り付けたもののようですね。
『リトル・モンスターズ』は、前日に『ロミジュリ』を観たバデネスとカマルゴのペア。大人男女ののムード漂う踊りでしたが、昨日に引き続き素晴らしいパフォーマンスでした。「リフト」というより、カマルゴがパデネスをぽんぽん放り投げてキャッチしてました。
デミス・ヴォルピは、ゲッケと並んでシュツットガルトの現在の常任振付家だそうですが、ぽん太は初見。シュツットガルト・バレエの公式サイトに出てます(こちら)。デミス・ヴォルピ(Demis Volpi)はアルゼンチンのブエノスアイレス生まれ。2005年にシュツットガルト・バレエにダンサーとして入団。2006年に最初の振付作品「on and on and on」を発表してから頭角を現し、2013年に常任振付家になったようです。
『In2』。すいません、なんか、忘れました。
『心室』。フォーゲルとレイリーが、ベートーヴェンのピアノソナタ『月光』に乗せて、ボーイズラブ感が漂う踊りを繰り広げます。振付のガリリはぽん太は初見。
イツィク・ガリリ(Itzik Galili)は1961年イスラエル生まれ。現在はオランダのアムステルダムを拠点として活動しているようです(Wikipediaより)。
ところで『心室』という題名ですが、医者の端くれのぽん太としては、「心室性期外収縮」などに使われる心臓の解剖学的な部位を想像してしまいますが、ホントはなんなんでしょう。調べてみると、英語の題名は「The Chambers of a Heart」のようです。いわゆる「心室」は英語ではventricleですから、「The Chambers of a Heart」は、2つの心室と2つの心房を合わせた心臓の4つの部屋をさすか、あるいはそれが「心のさまざまな部屋」に掛けられているのかもしれません。
『バイト』は肌色のレオタードの男女のしっとりとした踊りで、動きがとてもきれいでした。
振付のカタジェナ・コジルスカは、シュツットガkルト・バレエのダンサーみたいですね。『バイト』の振付は2014年(シュツットガルト・バレエ団公式サイトより)。
『イニシャルR.B.M.E』はクランコの振付。ブラームスのピアノ協奏曲第2番の第3楽章をバックに、曲想どおりの柔らかく憂いに満ちた踊りが繰り広げられます。フォーゲルとアマトリアンがしっとりと男女の愛を表現。薄紫のコスチュームの群舞も美しかったです。
『モペイ』は、フォーゲルで2回、木本全優で1回観てます。ロバート・ロビンソンも悪くなかったけど、やっぱりフォーゲル君にはかないませんな。早い動きだけに、ごちゃごちゃ動いてる感じになりやすいですが、フォーゲル君はその中に緩急や強弱、ぐっと腕を伸ばしたりのメリハリがありました。また体幹を肩甲骨にいたるまでフルに動かしていて、背中の筋肉の動きを見ているだけでも面白かったです。
ついでにマルコ・ゲッケ(Marco Goecke)も調べておこうっと。1972年ドイツ生まれ。『モペイ』は2004年の振付ですね(シュツットガルト・バレエ団公式サイト、Wikipedia(ドイツ語))。
『ファンファーレLX』は、キレのあるモダンなダンス。赤いコスチュームや、天井に下げられた蛍光灯などの美術も美しかったです。
ダグラス・リー(Douglas Lee)は、1997年イギリス生まれ。シュツットガルト・バレエ団のダンサーをしながら、振付も行っていたようです。『ファンファーレLX』は2009年の振付。
ヴォルピの作品『魅惑』は、ジャズの「グッド・ベイト」に乗せた蠱惑(こわく)的な踊り。韓国人ヒョ・ジョン・カンの踊りがなまめしかったです。
『じゃじゃ馬馴らし』よりパ・ド・ドゥは、クランコの作品。カマルゴとバデネスのペアが、今度はユーモラスな表現力を披露してくれました。カマルゴ君の、ロミオとはひと味違う、荒々しい踊りもよかったです。
もひとつクランコ振付の『伝説』は、なんか地味でした。
『同じ大きさ?』は、三人の若者の悪ふざけといった感じの、とっても楽しい演目でした。ひとり、首を固定して肩をグルグル廻したり、パントマイム的な動きがとってもうまいダンサーがいたのですが、名前がわかりません。
振付のロマン・ノヴィツキーはソロヴァキア生まれで、シュツットガルト・バレエ団のダンサー……って、『In2』踊ってた人やん。
クランコの『ホルベアの時代より』。うまいんでしょうけど、この演目に混じるとなんか地味。
『モノ・リサ』は『心室』とおなじガリリの振付。天井から吊り下げられたたくさんのスポットライトがスモークのたかれた舞台を照らし出し、クールでエロチックな演目でした。ここでもヒョ・ジョン・カンがいい動きしてました。
さ〜、なんか小難しい演目が多かったけど、やっぱり〆は『ドンキ』だぜ〜。バデネス、カマルゴのペアがどんな踊りを見せてくれるか〜!
と思ったけど、ちょっと期待はずれでした(悪くはなかったけどね)。カマルゴのソロは良かったけど、パ・ド・ドゥでは、片手リフトもそんなにすごくなかったし、バデネスのバランスも短かったです。グラン・フェッテではドゥブルも入れてたけど、途中でおっとっとと踵を付いてました。バデネスさん、バランス系は苦手なのかな?
2015/11/18 NEW
シュツットガルト・バレエ団2015年日本公演
ガラ公演 〈シュツットガルトの奇跡〉
2015年11月19日
東京文化会館
【第1部】
『ボリショイに捧ぐ』
振付:ジョン・クランコ
音楽:アレクサンドル・グラズノフ
アリシア・アマトリアン、コンスタンティン・アレン*
『Ssss..』よりソロ
振付:エドワード・クルグ
音楽:フレデリック・ショパン
衣裳・装置:トーマス・ミカ
照明:エドワード・クルグ
パブロ・フォン・シュテルネンフェルス
ピアノ: アラステア・バナーマン
『リトル・モンスターズ』
振付:デミス・ヴォルピ
音楽:エルヴィス・プレスリー
衣裳:カタリーナ・シュリップ
エリサ・バデネス、ダニエル・カマルゴ
『In 2』
振付:ファビオ・アドリジオ
音楽:フィリップ・グラス
ミリアム・カセロヴァ、ロマン・ノヴィツキー*
ピアノ : カテリーネ・シュミット
『心室』
振付:イツィク・ガリリ
音楽:ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン
衣裳・照明:イツィク・ガリリ
フリーデマン・フォーゲル、ジェイソン・レイリー
ピアノ: アリーナ・ゴドゥノフ
『バイト』
振付:カタジェナ・コジルスカ
音楽:ガブリエル・プロコフィエフ
アンナ・オサチェンコ、コンスタンティン・アレン
【第2部】
『イニシャルR.B.M.E』第3楽章
振付:ジョン・クランコ
音楽:ヨハネス・ブラームス
装置・衣裳:ユルゲン・ローゼ
アリシア・アマトリアン、フリーデマン・フォーゲル
エリザ・ギサルベルティ, アレクザンダー・マッゴーワン,
エレナ・ブシュエヴァ, ジェイムズ・フィッシャー
アヤラ・イトゥリオス・リコ, タイトス・ジャンセン,
アヌーク・ファン・デル・ヴァイデ, マテオ・クロッカード=ヴィラ
ジョアナ・ロマネイロ, マルティ・フェルナンデス・パシャ,
フリア・ベルグア・オレロ, ファビオ・アドリジオ
ピアノ: マリア・キオショーヴァ
『モペイ』
振付:マルコ・ゲッケ
音楽:カール・フィリップ・エマヌエル・バッハ
衣裳:マーク・ザッポーネ
照明デザイン:ウド・ハバーラント
ロバート・ロビンソン
『ファンファーレLX』
振付・美術:ダグラス・リー
音楽:マイケル・ナイマン
アンナ・オサチェンコ、ジェイソン・レイリー
『魅惑』
振付:デミス・ヴォルピ
音楽:ニーナ・シモン
ヒョ・ジョン・カン
『じゃじゃ馬馴らし』よりパ・ド・ドゥ
振付:ジョン・クランコ (シェイクスピアの原作に基づく)
音楽:ドメニコ・スカルラッティ
編曲:クルト・ハインツ・シュトルツェ
装置・衣裳:エリザベス・ダルトン
リサ・バデネス、ダニエル・カマルゴ
【第3部】
『伝説』
振付:ジョン・クランコ
振付:ヘンリク・ヴィエニャフスキ
アリシア・アマトリアン、フリーデマン・フォーゲル
『同じ大きさ?』
振付:ロマン・ノヴィツキー
音楽:ハズマット・モディーン
マテオ・クロッカード=ヴィラ、ルイス・シュティンス、
アレクザンダー・マッゴーワン
『ホルベアの時代より』
振付:ジョン・クランコ
音楽:エドヴァルド・グリーグ
ミリアム・カセロヴァ、コンスタンティン・アレン
『モノ・リサ』
振付:イツィク・ガリリ
音楽コンセプト・作曲:トーマス・ヘフス、イツィク・ガリリ
装置:イツィク・ガリリ
衣裳:ナターシャ・ランセン
照明デザイン: イツィク・ガリリ
ヒョ・ジョン・カン、ジェイソン・レイリー
『ドン・キホーテ』よりパ・ド・ドゥ
振付:マキシミリアーノ・グエラ
音楽:ルトヴィク・ミンクス
装置・衣裳:ラモン・B. イヴァルス
照明デザイン:オッリ=ペッカ・コイヴネン
エリサ・バデネス、ダニエル・カマルゴ
指揮:ジェームズ・タグル、ヴォルフガング・ハインツ
演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
『Ssss..』よりソロ、『In2』『心室』はピアノ演奏、『リトル・モンスターズ』『バイト』『魅惑』『同じ大きさ?』『モノ・リサ』は特別録音による音源を使用します。
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