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2016年11月の19件の記事

2016/11/29

【仏像】重文の薬師堂のなかの重文の木造薬師如来坐像/中禅寺(長野県上田市)

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 9月末、ぽん太とにゃん子は長野県は上田市の中禅寺を訪れました。中禅寺といっても、日光ではありません。ホームページはなさそうなので、長野県観光公社のサイトにリンクしておきます(こちら)。

 独鈷山の北側に広がる塩田平は、信州の鎌倉と呼ばれ、多くの神社仏閣が点在しております。中禅寺もそのひとつで、独鈷山の麓、標高600mのところにあります。こちらには国指定重要文化財の、薬師如来と木造神将がいらっしゃいます。

【寺院名】真言宗智山派 竜王院延命院 中禅寺
【住所】 長野県上田市前山1721
【拝観】常時観光可。9:00〜16:00。拝観料:200円。
【仏像】
 木造薬師如来坐像 桂材 寄木造り 像高97.8cm 鎌倉時代初期 重要文化財
 木造神将立像 檜材 寄木造り 像高68.2cm 南北朝時代末頃 重要文化財
 中禅寺木造金剛力士立像 像高207cm 平安時代後期 長野県宝

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 独鈷山の美しい緑に囲まれた薬師堂のなかに薬師如来と木造神将が安置されております。

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 なんか頭でっかちですが、とても美しいお堂です。この建物自体も国指定の重要文化財。中尊寺金色堂と同じ様式で建てられており、平安時代末期から鎌倉時代初期に造られたと考えられ、中部日本最古の建造物だそうです。

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 お堂の扉のところから拝観する形で、仏様が奥の方にいらっしゃるので、ちょっと遠くて見にくいです。双眼鏡を使っても、堂の内部がけっこう暗いので、よく見えません。写真に撮って拡大してみて、ようやく表情がわかりました。

 定朝様を踏まえた非常に整ったお姿の薬師如来さまです。しかし、衣紋の流れや、右手の表情、肉付きのよい身体など、鎌倉らしい躍動感も感じられます。
 台座があまり見たことのない形です。上田だけにキノコを模したのでしょうか

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 お顔は、頬から顎にかけてふっくらしており、小さくてぷっくりした唇で、ちょっと茫洋とした感じ。

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 こちらが木造神将立像です。だいぶ傷んでますね。なんか、目が光ってて怖いです。

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 こちらは仁王門です。

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 仁王様です。解説によると、「都風の典雅な感覚が表現されている」そうですが、ぽん太にはよくわかりません。

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 本堂です。

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 御本尊は地蔵尊です。残念ながら肩から下しか見えませんが、ふくよかな印象です。左足を下ろした半跏踏下坐(はんかふみさげざ)で座っておられます。地蔵菩薩としてはちょっと珍しい気がします。

2016/11/28

【仏像】アルカイック・スマイルを浮かべる愛らしい仏さま・救世観音(重文)・長福寺(長野県上田市)

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 9月末、ぽん太とにゃん子は、長野県は上田市の長福寺に、国重要文化財の救世観音を拝観しに行ってきました。法隆寺の夢殿を模した建物に安置された救世観音は、高さ40センチの小さな金銅の像ですが、アルカイックスマイルを浮かべたとっても愛らしい仏様でした。像のいわれも興味深かったです。
 公式サイトはこちらです。

 

【寺院名】真言宗智山派 理智山薬師院 長福寺
【住所】長野県上田市下之郷541
【拝観】要事前連絡。9:00〜16:00、不定休。拝観料300円。
【仏像】
 銅造菩薩立像 金銅 像高34cm 奈良時代中期(天平時代) 重要文化財
【写真】
 http://blogs.yahoo.co.jp/tobake/44937948.html  http://09270927.at.webry.info/201401/article_7.html

 

 お寺を訪れると、住職さんが夢殿の鍵を開けて案内してくれるのですが、厨子の前に正座し、住職さんがお経を唱えてから、厨子の扉を開けてくれました。こういうシステムはぽん太は初めてでした。その後は、間近で見せて頂けます。
 小さな金銅の仏様で、身体は細く、さらにウエストがくびれていて、頭は相対的に大きめです。見慣れた仏像とは異なる姿で、古いというか、エキゾチックな印象があります。お顔はアルカイックスマイルをたたえて微笑んでおりますが、よくある斜め上から見下ろすとにこやかに見えますが、正面から見るとやや厳しい表情にも見えます。
 右手に水瓶、左手は中指で輪を作ってます。とっても繊細な指ですが、右腕や光背は後補だそうです。

 

 昭和17年に、この地に疎開していた大塚工芸社の創立者・大塚稔氏が、観音像と夢殿を寄進したそうです。夢殿は、当時行われた法隆寺夢殿の修理で作成された図面を取り寄せ、実物の1/2の大きさで造られました。
 観音像は、畑から見つかって、小布施の民家が保管していたものを譲り受けたんだそうです。古墳の副葬品だったとも言われてますが、住職さんは、そんな昔に埋められたらもっと腐食しているはずで、明治の廃仏毀釈の時に隠すために埋められたのではないか、とおっしゃってました。
 それからこの像は、過去3回盗まれており、「お戻り観音」と呼ばれているそうです。最近は、平成7年に盗まれ、平成18年に戻って来たそうです。

 

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 こちらが長福寺の本堂です。長福寺は、康保2年(965)の開山。生島足島神社の別当寺として栄えたそうです。

2016/11/27

【クラシック】常套句だけど「色彩感豊か」パリ管弦楽団(プログラムA)

 池袋の東京芸術劇場にパリ管弦楽団の来日公演を聴きに行ってきました。プログラムAです。KAJIMOTOの案内ページはこちら、東京芸術劇場の案内ページはこちらです。

 東京芸術劇場のコンサートホールはぽん太は11回目。1回目から10回目までは1990年。この劇場のこけら落としで、シノーポリ指揮、フィルハーモニア管弦楽団で、マーラーの交響曲全曲連続演奏会でした。医者になったばかりのぽん太の、大人買いならぬ大人聴きでした。
 でも、2階の袖の席だったと思うのですが、だだっ広いホールで、音が全然届かず、ひどい音響だった記憶があります。弦が聞こえず金管ばっかり響いて来たのですが、シノーポリも2回目の演奏会からは金管を押さえてバランスを取ってきた記憶があります。
 今回は3階席だったのですが、思いのほかいい音が届いてきたのでびっくりしました。改修の効果があったのでしょうか。
 ただ、バブル時代に造られたこのホール、でかすぎます。NHKホールのように、太鼓を叩くのが見えてから音が遅れて聞こえるほどではありませんが、バイオリン・ソロの音などは、細かいところまでは聴こえませんでした。ここでコンサートを聴くなら、A席以上を奮発する必要がありそうです。

 さて、パリ管弦楽団を評して「色彩豊か」と言うのは、猫を評して「ニャーと鳴く」と言うのと同じようなもんですが、でも、それ以外の形容が思い浮かばないのは、狸のぽん太の情けないところ。パリ管は以前にも聴いたことはあるのですが、今回のハーディングの指揮は、以前に増して、ホントに「色彩豊か」でした。
 ハーディングは、以前にミラノ・スカラ座のオペラ「ファルスタッフ」を振るのを聴いたはずですが、あまり印象に残ってません

 最初は、ブリテン作曲の、オペラ「ピーター・グライムズ」から 4つの海の間奏曲。このオペラは新国立劇場オペラで観て、音楽の美しさと話しの暗さに衝撃を受けた記憶があります。田舎の漁村に偏屈な男が住んでいて、徒弟の子どもが死んでしまうのですが、これが殺したのか事故なのか分からない感じなのですが、因習的な村人に人殺しと責められて、男は自ら自分の乗ったボートを海に沈める、みたいな話しでした。暗いですね。
 「4つの海の間奏曲」のオリジナルは、オペラの中でも声楽なして演奏される曲で、「すべての出来事を見つめてい海」みたいな感じで、陰鬱で、悲しみと恐ろしさを感じさせる、神秘的な曲でした。
 その時はオケピの演奏でしたが、今回はコントラバス8台の大編成による演奏。迫力がありました。そして「色彩豊か」でした。

 次いで、ブラームスのヴァイオリン協奏曲ニ長調。これはある程度聞き慣れた曲ですが、まったく違った音色が聴こえてきました。ヴァイオリンのジョシュア・ベルも初めて聞きましたが、全身を使って演奏してるのに、アタックは荒々しくなくて柔らかで、ダイナミックだけれど流麗な演奏でした。ニュアンスも豊かで、曲想がふっと変わるあたりの表現も素晴らしく、この曲がこんなにロマンチックで美しい音楽だと、初めて知りました。ただ、距離が遠すぎて、ヴァイオリンの音があまりよく聴こえなかったのは、先に書いた通り。

 最後はベルリオーズの劇的交響曲「ロメオとジュリエット」より。これは初めて聞いた曲なのであんまりよくわかりませんでした。

 フランス的な色彩豊かな音色の背後に、なにやら深みを感じさせるところが、ハーディングとパリ管弦楽団の出会いの効果なのかもしれません。

 

パリ管弦楽団 2016年11月 来日ツアー

2016年11月24日
東京芸術劇場 コンサートホール

【プログラムA】

オーケストラ: パリ管弦楽団
指揮: ダニエル・ハーディング
ヴァイオリン: ジョシュア・ベル

ブリテン: オペラ「ピーター・グライムズ」から 4つの海の間奏曲
ブラームス: ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 op.77
         (ヴァイオリン: ジョシュア・ベル)
ベルリオーズ: 劇的交響曲「ロメオとジュリエット」op.17 から
            愛の情景
            マブ女王のスケルツォ
            ロメオひとり
            キャピュレット家の大宴会

2016/11/26

【歌舞伎】菊五郎の勘平と吉右衛門の由良之助の競演「仮名手本忠臣蔵」第二部 国立劇場

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 国立劇場の「仮名手本忠臣蔵」通し上演、11月はおかると勘平の顛末です。特設サイトはこちら、国立劇場の公式サイトはこちら

 劇場に入ってすぐに、10月の上演台本(見本)を確認。
 やっぱり切腹のときの判官の「生き変わり死に変わり、鬱憤晴らさで措くべきか」というセリフは省略されていたみたいです。「勘平成仏問題」にこだわるぽん太は、ちょっとがっかり。今回の通し上演では、関心が払われていないようですねえ。
 でもまあ、勘平の最後がどう扱われるか、今日は居眠りしないで見てみたいと思います。

 さて、最初は「道行旅路の花聟」。ところは神奈川県は戸塚、桜の花と菜の花(?)が咲き乱れる中、おかると勘平の道行きです。
 鎌倉を出発して現在戸塚じゃ、山崎じゃなくて江戸に向かっとるじゃん!とツッコミを入れたくなりますが、まあ、歌舞伎ですから固いことは言わず。
 色事に溺れて主君の大事に居合わすことができなかった罪を担いながらも、水入らずでちょっとうれしい二人旅。錦之助と菊之助の二人はまことに美形でしたが、もっとウルウル感があっても良かった気がします。その方が、本日の悲惨な結末との対比も生まれるかも。
 亀三郎の鷺坂伴内が、いつもながらの名脇役。

 さあて、五・六段目でござる。菊五郎の勘平は何度か観ておりますが、まさしく完成された芸。だんだん歳とって、顔がシワシワになってきましたが、演技は衰えるどころか、ますます磨きがかかった感じ。
 菊五郎の勘平は、素直で人が良く、裏表がなく、ちょっとお調子者で、やや思慮が足りない。人を撃ち殺したと気付いて逃げようとするが、花道ででふと「あの金を……」と思うところとか、御用金を用立てて意気揚々と家に戻って来て、「猟人の女房がお駕篭でもあるまいが」と軽口をたたいて、ト〜ンと駕篭の棒鼻を押すところとか、そんな感じが出ています。
 自分が義父を撃ち殺したと思い込んで、どうしようと思いつつも正直に言い出すことができず、その間に徐々に証拠がそろってきて事実が露見して行くあたり、涙が止まりませんでした。子どものころ悪いことをして、しらばっくれようとしていたら、先生に見つかってみんなの前で怒られるという苦しみを、百倍にした感じでしょうか。これは究極の羞恥プレイですな。
 最後の自害して果てるところも、いつもと同じ運びで、やっぱり「勘平成仏問題」への配慮はありませんでした。勘平が「ヤア仏果とは穢らわしや。死なぬ死なぬ。魂魄この土に止まって、敵討ちの御供なさで措くべきか」と言ってから、連判状への血判となり、息絶えるというパターン。
 このパターン、成仏を拒否して怨霊となって仇討ちに加わることを宣言した勘平を、連判状に加えることによって、成仏させるというストーリーだとぽん太は思い込んでましたが、このパターンだからといって、勘平が成仏したとは言えないとも考えられます……。でも、やっぱ素直に受け止めれば、勘平は成仏した感じですよね。
 それからもうひとつ気になったのは、勘平の縞の財布の件。今回の公演では、12月の第三部で焼香の場があるとアナウンスされてます。
 焼香の場面があるとすれば、勘平の持っていた縞の財布が由良之助の手に入らないとおかしいはず。でも、たしか勘平が用立てた義援金は、勘平と義父の供養のためと、母おかやに返すよな〜。
 今回よく見てみると、千崎弥五郎はお金は返しましたが、財布は返さずに懐にしまってました。
 ここも元々はおかやが、「勘平殿の魂の入ったこの財布、聟殿じゃと思うて敵討ちの御供に連れてござって下さりませ」というセリフがあるところ。これも省略されているので、財布の行方がわかりにくい。
 特設サイトによると、12月の焼香の場は原作からアレンジしてあるとのこと。う〜ん、縞の財布はどのような扱いになるのか?
 母おかやは東蔵が熱演。斧定九郎は松緑。松緑には厳しいぽん太ですが、今回はでっかい目玉のメイクじゃなかったのはいいですが、色っぽさが足りません。水を絞る仕草なども、もっとゆったりとやって欲しいです。立ち姿もなんか猫背でした。脚にしたたる血も少なめでした。

 最後の七段目は、吉右衛門がまことにゆったりとして大らかな由良之助を見せてくれました。遊女おかるは雀右衛門。こういうカワユイ役はとても素晴らしいです。寺岡平右衛門の中村又五郎は、足軽の小物感がよく出ていて、おかるとのやりとりも達者で面白かったですが、なんか歌舞伎っぽくなかった気もしました。

国立劇場開場50周年記念

竹田出雲・三好松洛・並木千柳=作
通し狂言 仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら)【第二部】 四幕五場
  国立劇場美術係=美術

国立劇場大劇場
2016年11月23日


浄瑠璃 道行旅路の花聟 清元連中
五段目 山崎街道鉄砲渡しの場
      同   二つ玉の場
六段目 与市兵衛内勘平腹切の場
七段目 祇園一力茶屋の場

(主な配役)
【道行旅路の花聟】
 早野勘平      中村錦之助
 鷺坂伴内      坂東亀三郎
 腰元おかる     尾上菊之助

【五段目】
 早野勘平      尾上菊五郎
 千崎弥五郎     河原崎権十郎
 斧定九郎      尾上松緑

【六段目】
 早野勘平      尾上菊五郎
 原郷右衛門     中村歌六
 勘平女房おかる   尾上菊之助
 千崎弥五郎     河原崎権十郎
 判人源六      市川團蔵
 与市兵衛女房おかや 中村東蔵
 一文字屋お才    中村魁春

【七段目】
 大星由良之助    中村吉右衛門
 寺岡平右衛門    中村又五郎
 赤垣源蔵      坂東亀三郎
 矢間重太郎     坂東亀寿
 竹森喜多八     中村隼人
 鷺坂伴内      中村吉之丞
 斧九太夫      嵐橘三郎
 大星力弥      中村種之助
 遊女おかる     中村雀右衛門
        ほか

2016/11/25

【松茸】長野県某所で採れたての国産松茸料理を頂く(★★★★★)

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 9月末、ぽん太とにゃん子は、長野県某所某旅館に、松茸を食べに行ってきました。来年も行きたいので場所は秘密です
 昨年まで行っていたところとは、宿を変えてみました。自分の山で収穫した国産松茸にこだわっているところで、予約が取るのが難しいようですが、時期が早めだったためか、たまたま空いててよかったです。

 写真は焼き松茸。ほとんどレアで頂きます。焼き足りないんじゃないかと思いましたが、かじるとパキッという感じで割れます。ぽん太は焼き松茸はシコシコした食感のものだと思っていたのですが、採れたての松茸はこういう食感なんですね。初めて知りました。

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 こちらが松茸尽くしの夕食のスタートポジションです。松茸土瓶蒸しがあり、煮物にも松茸が入ってます。

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 松茸入りの鍋です。

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 こちらは松茸ではなく、コムソウダケのフライです。コムソウダケを食べるのは、ぽん太は恐らく生まれて初めてですが、美味しゅうございました。松茸があるところに生えているキノコだそうです。

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 松茸の茶碗蒸しです。

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 松茸のホイル焼きですね。魚入りです。

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 〆はもちろん松茸ご飯。このどでかい切り身を御覧下さい。

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 宿のおじさんが、今日採って来た松茸を見せてくれました。松茸料理を出していると、あっちこっちの業者から、外国産松茸や、国産松茸の売り込みがあるそうで、そういうのを使ってでも安定供給した方がいいかと思ったことのあるそうですが、結局、自分の山で採った松茸にこだわり、提供できる分だけ提供することに決めたそうです。


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 朝食も美味しゅうございました。
 来年もまた来たいけど、予約が取れるかどうか……。

2016/11/24

【仏像】あなたはだ〜れ?鳥追観音・如法寺(福島県西会津町)

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 9月中旬、磐越自動車道の西会津インターからほど近い、如法寺の鳥追観音を拝観。立木観音、中田観音とともに、会津三観音のひとつに数えられています。公式サイトはこちらです。

 

【寺院名】真言宗室生寺派 金剛山如法寺 鳥追観音
【住所】福島県耶麻郡西会津町野沢字如法寺乙3533
【拝観】8:30〜16:00、冬季は状況により閉門あり。拝観料:無料。
【仏像】
 銅造聖観音坐像(前立仏?)

 

 木造聖観音立像(御本尊?) 一木造り 平安初期 県指定
 木造不動明王立像 一木造り 平安後期 県指定
 木造毘沙門天立像 一木造り 平安後期 県指定
 木造金剛力士像(執金剛神) 一木造り 平安初期 県指定

 

 金剛力士 2躯

 

 

 ネットを見ると、「鳥追観音」として上の写真が出ていることが多く、如法寺のパンフレットの表紙もそれになっています。この仏様、なかなかいいお顔をしており、また左手で持った蓮に右手を添えるような仕草が愛らしく、なかなか人気があるようです。
 しかしこの像が「鳥追観音」というわけではなさそうです。

 

 公式サイトの「鳥追観音如法寺の縁起と文化財」というページによると、天平8年(736)に、僧行基が会津のとある農家に宿を求めたとき、鳥獣害に苦しむ農夫に、念持仏であった一寸八分の聖観音を与えたとあります。これが「鳥追観音」ですね。
 大同2年(807)、徳一大師は鳥追観音のお告げを聞いて、如法寺を開山し、「聖観世音菩薩」を御本尊とし、その体内に「鳥追観音」を納めました。これが現在の御本尊で、県の重要文化財に指定された仏様ですね。これは、こちらの福島県の重要文化財一覧を見ると、「木造聖観音立像」となっており、「立像」ですから、上の写真の仏様ではありません。
 観音堂の係員さんによれば、御本尊は二度の火災に会って公開できる状態ではなく秘仏となっており、前立仏として現在の仏様が安置されている、この仏様も以前はある時期のみ御開帳していたが、東北大震災以降は常時ご開帳されている、とのことでした。
 とすると、この前立仏が、いつ頃作られたどのような仏様なのかということが気になってくるのですが、公式サイトを見ても、ぐぐってみても、情報がみつかりません。
 文化庁の「日本遺産」に「会津の三十三観音めぐり~巡礼を通して観た往時の会津の文化~」が認定されており、その内容を見ると(こちらpdf)、14ページの37番に「如法寺・銅像聖観音坐像」があって、「鳥追観音の御本
尊」と書かれており、24ページに写真がありますが、上の前立仏です。「銅像」というのは「銅造」の誤植ではないかと思いますが、木造じゃなかったんですね。作られた時期とかは書いてないです。「鳥追観音の御本尊」というのも、本当は「御本尊の前立仏」ですが、御本尊の公開がほぼ不可能な現在、前立仏がほとんど御本尊として扱われているということなのでしょうか。

 

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 というころで由来はわかりませんが、なかなかいいお姿の仏様です。観音菩薩で左手で輪を作っているのが、ちょっと珍しい気がしますが、ぐぐってみてもよくわかりません。

 

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 木造金剛力士像(執金剛神)は、だいぶ朽ちていて、現在はなで仏となっております。

 

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 観音様が収められている観音堂です。参道を歩いて行くと入口がありますが、実は東向きの横の入口で、正面は向かって左側で、仏様は向かって右側に安置されております。この東の入口から入り、観音様にお参りして、写真奥の西側の出口からでると、西方浄土にいたったということになるそうです。

 

Img_2980 彫刻もなかなか見事です。左甚五郎の作と伝えられる三猿がいるそうですが、ぽん太とにゃん子は知らずにスルーしてしまいました。

 

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 仁王様です。

 

 

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 お寺の近くに、ラッセル車が2両保存されておりました。こちらは回転式のキ621。

 

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 こちらはキ172ですね。
 力強さでは、仁王様に引けをとりません。

2016/11/23

【仏像】謎解きしながら拝観・重文の薬師如来坐像ほか/上宇内薬師堂(福島県会津坂下町)

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 以前に真冬にふらっと訪れて拝観できなかった会津坂下の上宇内薬師堂に、今度はちゃんと事前連絡して行ってきました。

 

【寺院名】上宇内薬師堂
【住所】福島県河沼郡会津坂下町大字大上字村北甲803番地
【拝観】事前予約制。拝観料は500円だったかな?通常は無住なので、地元の保存会の方が案内・解説してくれます。
【仏像】
木造薬師如来坐像(薬師瑠璃光如来) 欅、一木造り 像高183cm 10世紀初め 重要文化財
月光菩薩立像 像高172cm 県指定
日光菩薩立像 像高173.4cm 県指定

 

聖観音菩薩 像高184cm 県指定
宝光虚空像菩薩 像高147cm 県指定
十二神将立像(波夷羅大将、頞儞羅大将、伐折羅大将、安底羅大将、珊底羅大将) 町指定

 

 薬師堂の中を奥に進むと、裏側が収蔵庫につながっており、そこに重文の薬師如来さまが安置されております。最初はカーテンが閉まっていて、正座をしたところでスルスルとカーテンを開けてくれるのですが、その大きさと迫力にちょっと圧倒されます。写真はたとえばこちらにあります。
 像高は坐った状態で183cmと、大きいと言えば大きいけど、それほどでもない感じですが、どっしりとした造形が大きく感じさせるのでしょうか。胸などはとても肉厚で、ちょっと肩を後ろに引いたような姿勢です。
 顔や胸、手などの肌の部分は漆塗りですが、衣服の部分は木の素地になっております。な、なんでじゃ〜?

 

 なんでも昭和33年(1958)の解体調査のおりに、衣服の部分の漆や麻布をはぎ取ったんだそうです。調査が終わったら元にもどしてくれるのかと思っていたら、「歴史的な価値がわかるように、このままの方がいい」などと言って、そのままになったそうです。案内してくれた方が、「戻すのが面倒だったのかね〜」と笑ってました。
 で、調査の結果、頭部と胴体は欅の一木造りで、両腕、脚は、それぞれ別材が使われていることがわかったそうです。左脇腹のあたりの衣紋は翻波式になっており、10世紀初め頃の作と推定されました。
 この仏様は、元禄時代に一度補修されており、両腕、脚は、そのときの後補だそうです。ところが、膝の部分だけ明らかに衣紋の彫りが雑です。い、いったいなぜ!?

 

 あらかじめ日程が決められていた楽慶式に間にあわせるため、どうせ布で覆われ漆で仕上げられるからと、脚の部分は簡略にすませたと考えられているそうです。

 

 薬師如来ということで、両脇侍は日光・月光菩薩。写真は、ちょっとちいさいけど例えばこちら。元禄時代の補修の時に新造されたものだそうで、県指定文化財。

 

 では、元々あった日光・月光菩薩はいずこへ……?

 

 薬師堂に安置されている宝光虚空蔵菩薩と聖観音菩薩があやしいです。

 

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 こちらが宝光虚空蔵菩薩。言われてみれば、蓮の花を持ち、なんか日光菩薩っぽいです。

 

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 そうしてこちらが聖観音菩薩。この写真だと、下から見上げているのでわかりにくいですが、明らかに頭がでかいです。そ、それはなぜ?

 

 元禄時代の補修のときに、ほかの仏像の頭の部分をくっつけたのではないかと考えれているそうです。

 

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 さて、薬師如来といえば十二神将。このお堂にも十二神将はありますが、5体のみ。いったいどうして?

 

 上の写真を良く見て下さい。足下に何か踏んでます。そう、天邪鬼です。ということは……これらは四天王。四天王だったものが十二神将に作り替えられたのではないか!だから4体……あれ?5体。ど、どうして?

 

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 見〜つけた!紛れ込んだこの一体。明らかに他の4体と作風が違います。姿勢も棒立ちだし、顔がアニメみたいです。
 つまり、いつの頃だかわかりませんが、「本尊が薬師如来様だから十二神将が欲しいなァ」「でも高くて買えねえべ」「んだな」「したら、四天王を改造して十二神将にすべえ」「んだんだ」、という会話が交わされたどうかはわかりませんが、四天王を十二神将に改造。そしてさらに12体を目指して、新たに1体を新造したところで力つき、現在のようになったわけです。

 

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 薬師堂の、元は薬師如来が置かれていた所には、現在は阿弥陀様が安置されております。

 

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 仁王門です。

 

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 最後は、仁王様のそろい踏み。

2016/11/22

【温泉】赤白2種類のお湯が楽しめる秘湯・赤湯温泉好山荘(福島県土湯温泉)(★★★★★)

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 9月中旬、ぽん太とにゃん子は、赤湯温泉好山荘に泊まってきました。
 いまどき珍しくホームページはなさそうなので、日本秘湯を守る会のページ(こちら)と、土湯温泉旅館事業協同組合のページ(こちら)にリンクしておきます。
 自然湧出の鉄泉と硫黄泉を楽しむことができます。春夏秋の期間営業で、鄙び度満点!食事は素朴ですが素材が美味しく、ぽん太の評価は堂々の5点満点!

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 福島県は安達太良山と吾妻山の間を走る県道30号〜37号沿いには、新野地温泉、鷲倉温泉、幕川温泉など、個性的な秘湯が並んでおりますが、赤湯温泉もその一つ。県道からさらに未舗装路を辿ったところにある、ブナの原生林に囲まれた一軒宿です。雪深い土地なので、4月下旬から11月下旬までの季節営業。冬には泊まれません。

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 建物は、兵舎を思わせるバラック風。

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 アメニティのよい新館もありますが、ぽん太とにゃん子は当然のことながら古い本館を選択。

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 こちらが玄関です。

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 お土産売場にある女の子のマネキン。風呂に行くときなど、通りかかるたんびに思わずビクッとしてしまします。

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 ビニールフロアが波立つ廊下に面して、客室が並んでいます。

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 とってもシンプルのお部屋。これはこれでいいですね〜。
 ちなみにトイレは共同。ウォッシュレット付きはありません。

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 こちらがぽん太とにゃん子が泊まった部屋。角部屋で、床の間もあり、本館では豪華なお部屋です。


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 さ〜て温泉ですね。男女別の内湯(男湯は露天付き)と、庭の男女別露天風呂、展望貸切露天風呂があります。
 写真は内湯。宿の名前のとおり、赤褐色の濁り湯ですが、注がれている源泉はなぜか無色透明。色が微妙に変化するようです。臭いはありませんが、舐めると鉄味があります。浴槽や床に、赤茶の結晶が析出してます。

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 男湯には露天風呂が付いています。

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 鉄泉らしく、表面にオリが浮かんでいます。

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 温泉分析書です(クリックで拡大します)。注目すべきは自然湧出であるところ。しかも湧出量は毎分60l。泉温は66度と高温。pHは6.3と、ほぼ中性です。様々な成分が含まれているものの、突出したものはなく、泉質は単純温泉です。い〜お湯です。


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 こちらは庭にある男女別の露天風呂。

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 にゃにゃんだ、これは?核シェルターか? 正解は脱衣所です。ちょっと圧迫感があるので、ぽん太は使いませんでした。

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 こちらがお風呂ですね〜♪白いうす濁り。硫化水素臭があり、ちょっと油臭もします。舐めると少し酸っぱいです。

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 ちょっと見にくいけど温泉分析書です(クリックで拡大します)。こちらも自然湧出で、泉温は49.1度。pHは3.9と酸性です。泉質は単純硫黄温泉[硫化水素型]。このお湯もまたい〜ですね〜。


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 さらにもう一つお風呂があります。新館の2階に突き出したこのヤグラのようなもの。実は展望風呂です。

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 新館2階の窓から外に出て、板の上を進むと……

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 手作り感満載の展望露天風呂があります。釜風呂になってますね。あいにくガスがかかってましたが、天気が良ければ素晴らしい展望が楽しめそうです。

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 新館のお部屋を盗撮。立派な床柱があります。

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 ん?展望風呂から、不思議な生き物を発見!パグの老犬でした。顔の短いパグにしても、かなり短いようで、遠くから見たら、首が切断されているように見えてびっくりしました(^-^;。


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 部屋食でいただく夕食は、素朴系。

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 地元の栗や、だだちゃ豆がトッピングされたナスなど、ぽん太とにゃん子にはうれしいお料理です。


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 朝食もシンプルですが、とっても美味しかったです。

2016/11/21

【オペラ】声量はあったけど。「ラ・ボエーム」新国立劇場

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 早くもクリスマスツリーが飾られた新国立劇場に、「ラ・ボエーム」を聴きに行ってきました。
 う〜ん、ウィーン国立歌劇場を聴いてぽん太の耳が肥えたのか、あんまり楽しめませんでした。声量はすごかったんですが、なんかちょっと声や歌い方が荒いというか、うるさく感じてしまいました。でも、最後はやっぱり感動!泣かせていただきました(ノ_-。)。
 公式サイトはこちらです。

 ロドルフォのジャンルーカ・テッラノーヴァは、張りのある明るい声で、声量がすごくてぽん太のいる4階席まで響き渡りました。でも、声に伸びやかさがないというか、ちょっと騒々しく感じてしまいました。大音量はここぞというところだけにして、全体にもうちょっと声量を押さえ、優しく丁寧に歌えばいいのに。
 ミミのアウレリア・フローリアンは、ルーマニア人だそうですが、なかなかの美形。しかし南方系でゴージャスな雰囲気のお顔なので、貧しいお針子というミミにはちょっと合わなかったかも。声も、透明でリリックというよりは、少し曇っていて芯のある女性という感じ。彼女が一番多く歌っているのは『椿姫』だそうですが、確かにミミよりも、高級娼婦のヴィオレッタの方がいいかも。テッラノーヴァにつられたのか、大きな声をだしてましたが、やはりキンキンしてしまって……。第4幕での弱々しい声の方が良かったです。
 マルチェッロのファビオ・マリア・カピタヌッチは、表情豊かな歌い方で好感が持てましたが、今回のメンバーのなかではあんまり目立たず、もうちょっと自己主張してもよかった気がしました。。ムゼッタの石橋栄実、容姿端麗で歌もおみごと。でも、ムゼッタにしては可愛らしく見えてしまうのは、いた仕方なし。ショナールの森口賢や、二コッリーネの松位浩の「外套の歌」も良かったです。

 プロダクションは以前に新国立で見たものと同じ。セットは古き良きカルチェ・ラタンの雰囲気がよく出ており、セットの移動による舞台転換も面白かったです。


オペラ「ラ・ボエーム」/ジャコモ・プッチーニ
La Bohème / Giacomo PUCCINI
2016年11月20日
新国立劇場 オペラパレス

指揮:パオロ・アリヴァベーニ
演出:粟國 淳
美術:パスクアーレ・グロッシ
衣裳:アレッサンドロ・チャンマルーギ
照明:笠原俊幸
舞台監督:大仁田雅彦

ミミ:アウレリア・フローリアン
ロドルフォ:ジャンルーカ・テッラノーヴァ
マルチェッロ:ファビオ・マリア・カピタヌッチ
ムゼッタ:石橋栄実
ショナール:森口賢
二コッリーネ:松位浩
べノア:鹿野由之
アルチンド:ロ晴雅彦
パルピニョール:寺田宗永

合唱指揮:三澤洋史
合唱:新国立劇場合唱団
児童合唱:TOKYO FM少年合唱団
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

2016/11/19

【仏像】重文の千手観音、聖観音、地蔵菩薩。清水寺(長野県松代町)

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 9月の頭のことですが、長野県は松代町にある清水寺に行ってきました。「清水寺」と書きますが、「きよみずでら」ではなく、「せいすいじ」と読みます。ここには三躯もの重文の仏様が安置されております。公式サイトはこちらです。

 

【寺院名】真言宗豊山派・龍燈山蓮華院清水寺(通称:北信濃厄除大師)
【住所】長野市松代町西条147
【拝観】事前予約制。拝観料500円。
【仏像】
木造千手観音立像 像高179cm 桂材一木造り 平安初期 重要文化財
木造観音菩薩立像(聖観音) 像高159cm 桂材一木造り 平安初期 重要文化財
木造地蔵菩薩立像 像高157cm 桂材一木造り 平安初期 重要文化財

 

薬師如来 像高107cm 桂材一木造り 平安初期 県宝
毘沙門天 像高158cm 桂材一木造り 平安初期 市宝
滝ノ上不動尊 不動明王
【写真】撮影禁止です。
 お寺の公式サイトに写真があります。こちらからそれぞれのリンクをたどって下さい。

 

 

 「真田丸」のおかげか観光客でにぎわう松代町ですが(真田幸村の兄・信之(大泉洋)が、大阪の陣の後に移封された場所ですね)、中心街からだいぶ南に外れたとろこにある清水寺周辺はまったく人気がありません。でも、旧参道と思われる道には昔ながらの街並みが残っていて、いにしえの雰囲気が漂います。
 清水寺は、植木などはしっかりと手入れされておりますが、残念ながら建物があまり残っていないのが残念です。しかし収蔵庫はなかなか立派で、大きさもさることながら、シンプルで機能的なものが多いなか、デザインが凝ってます。壁に柱が模してありますし、曲線を描いた寄せ棟の屋根も美しいです。
 なんでも、戦後初に造られた収蔵庫で、設計は、中尊寺の金色堂を覆っている建物と同じ人なんだそうです。あとでググってみると、大岡實(1900年 - 1987年)という人のようですね。こちらの「大岡實建築研究所」のサイトに、清水寺本堂や、中尊寺金色堂・新覆堂が掲載されています。

 

 お堂の中に入ると、重文指定の千手観音・聖観音・地蔵菩薩の三躯が、やはりオーラを放っております。特に二つの観音菩薩は、江戸時代の補修で貼られた金箔が剥げかかり、爬虫類の鱗のようにも見えて、密教的な迫力が感じられます。

 

 千手観音(写真)は、ほぼ等身大の大きさ。お顔がちいさく、やや胸を張った姿勢。厳かな表情で遠方を見つめていらっしゃいます。全体としては優美な印象です。平安時代初期の9世紀頃の作という古い仏様です。

 

 聖観音(写真)は、ウエスト(というか、胸と腹の間)がくびれて、お腹がぷっくり。ちょっと昆虫的です。お顔は外国風で、髪型も青島幸男の意地悪ばあさんのようです(わかるかな?わらないひとは例えば こちら)。普通の人間とは異質な感じがします。腰をひねり、右足を前に踏み出し、からだ全体に大きなうねりがあります。千手観音が「静」なら、この聖観音は「動」か?

 

 地蔵菩薩(写真)は、胸の辺りの肉付きがよく、重量感があります。表情はけっこう厳しいです。衣紋は彫りが深く、翻波式です。左手に宝珠、右手に錫杖というお姿はよく見かける気がしますが、実はこういった像容は鎌倉時代に一般的になったもので、この時代の地蔵菩薩としては珍しいんだそうです。
 その他、薬師如来(写真)や、江戸時代に彩色された毘沙門天(写真)、四天王などもいらっしゃいます。
 また、かなり傷んだ梵天様もありました。傷みが激しかったためか、お堂の天井裏に放り込まれていたそうですが、年代的には他の仏像より古いと考えられるそうです。また、表面に木の節が出ているのですが、仏像をわざわざ節のある木で造るはずはないので、御神木から彫られたのではないかと推定されるそうです。

 

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 不動堂には、不動明王(写真)が安置されております。以前に修復に出したら、このようなお姿になって帰ってきたそうで、体は真っ黒、火炎は真っ赤で、真っ白な目や歯がアニメチックです。この修復はいけません。

 

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 お堂の軒下に三つ葉葵の御紋が入っています。
 このお寺は江戸時代には徳川家の祈祷寺だったそうで、そのおりに三つ葉葵の御紋を頂いたそうです。

2016/11/16

【オペラ】わくわくドキドキぐるぐる「フィガロの結婚」ウィーン国立歌劇場

 2016年のウィーン国立歌劇場来日公演、最後は「フィガロの結婚」を観に神奈川県民ホールまで行ってきました。
 小さめのホールで、舞台もこじんまり、オケも小編成で、舞台と観客の距離がすごく近い感じでした。観客も大興奮。フライング気味の拍手はちと気になりましたが、最後はほとんど全員がスタンディング・オベーションでした。
 公式サイトはこちらです。

 もともと小さめの神奈川県民ホールの舞台ですが、前面にさらに白い枠が造られて、実際の舞台はかなり小さくなってました。セットは写実的でとても美しく、衣装も恐らく当時の時代のもので、演出も変な読み替えをしないオーソドックスなものでしたが、その分モーツァルトの音楽や、登場人物のさまざまな駆け引きを、じっくり楽しむことができました。

 歌手陣も、歌に演技に大活躍でした。フィガロのアレッサンドロ・ルオンゴも、張りのある声で表情豊かに歌ってましたし、スザンナのローザ・フェオーラは、透明感のある声が素敵でした。以前に英国ロイヤル・オペラのドンジョヴァンニを聴いたことがあるダルカンジェロのアルマヴィーヴァ伯爵は、さすがに安定感のある女たらしぶりでした。
 伯爵夫人のエレオノーラ・ブラット、第2幕で登場していきなり歌う「愛の神よ、ご覧ください」は、なんかちょっと固かったですが、だんだん調子が出てきたのか、第3幕の「美しい思い出はどこへ」は素晴らしかったです。ただあんまり、深い悲しみをかかえた高貴さがなかったかな。
 ケルビーノのマルガリータ・グリシュコヴァは、ちょっとくぐもった声質なのが気になりましたが、いかにも思春期の少年らしい、みごとなズボン役でした。
 その他の歌手たちも芸達者。省略されることも多い第4幕のバジリオのアリア、「人生経験も乏しく」 も良かったです。

 第一幕と第二幕、第三幕と第四幕は、舞台転換のみの休憩なしで上演。演出は、細かいとろでちょっと分かりにくいところがありました(例えば、最後にスザンナの衣装を着た伯爵夫人が登場したとき、いつ伯爵は真相に気付いたのか、など)。

 巨匠ムーティを生で聴くのはぽん太は初めて。男前のイタリア人指揮者も、いまはもうおじいさんですね。演奏も、タヌキにはよくわかりませんが、なんか良かったです。

 ウィーン国立歌劇場の来日公演の三演目。どれもとってもすばらしかった〜。相当な出費でしたが、その価値は十分あったと思います。

ウィーン国立歌劇場 日本公演2016

ウォルフガング・アマデウス・モーツァルト作曲
Wolfgang Amadeus Mozart
「フィガロの結婚」 全4幕
Le nozze di Figaro Komische Oper in vier Akten

2016年11月13日 神奈川県民ホール

指揮:リッカルド・ムーティ
Dirigent:Riccardo Muti
演出・装置:ジャン=ピエール・ポネル
Regie und Ausstattung:Jean-Pierre Ponnelle
合唱監督:トーマス・ラング
Chorleitung:Thomas Lang
音楽指導:トーマス・ラウスマン     
Musikalische Studienleitung :Thomas Lausmann      
再演演出:ウォルフガング・シリー
Szenische Einstudierung :Wolfgang Schilly

アルマヴィーヴァ伯爵:イルデブランド・ダルカンジェロ
Conte d'Almaviva:Ildebrando D'Arcangelo
伯爵夫人:エレオノーラ・ブラット
Contessa d'Almaviva:Eleonora Buratto
スザンナ:ローザ・フェオーラ
Susanna:Rosa Feola
フィガロ:アレッサンドロ・ルオンゴ
Figaro:Alessandro Luongo
ケルビーノ:マルガリータ・グリシュコヴァ
Cherubino:Margarita Gritskova
マルチェリーナ:マーガレット・プラマー
Marcellina:Margaret Plummer
バジリオ:マッテオ・ファルシエール
Basilio:Matteo Falcier
ドン・クルツィオ:カルロス・オスナ
Don Curzio:Carlos Osuna
バルトロ:カルロ・レポーレ
Bartolo:Carlo Lepore
アントニオ:イーゴリ・オニシュチェンコ
Antonio:Igor Onishchenko
バルバリーナ:イレアナ・トンカ
Barbarina:Ileana Tonca
村娘:カリン・ヴィーザー
Bauernmädchen:Karin Wieser

ウィーン国立歌劇場管弦楽団 Orchester der Wiener Staatsoper
ウィーン国立歌劇場合唱団 Chor der Wiener Staatsoper

プロンプター: マリオ・パスクワリエッロ    Maestro Suggeritore: Mario Pasquariello

2016/11/14

【観光】鹿教湯温泉に残る風情ある一角

 8月下旬、鹿教湯温泉かつら旅館に泊まったぽん太とにゃん子は、鹿教湯の温泉街の散策を楽しみました。

 高度成長期に軒並みコンクリートに建て替えられた建物が古びてきて、ちょっとさびれた感じの鹿教湯温泉ですが、一部に昔ながらの雰囲気ある風景が残っております。

Img_2821 まずは温泉祖神。

Img_2818 祠のなかには、木彫りの恵比寿様と大黒様が祀られてます。


Img_2823 続いて湯端通りに向かいます。古い建物が残っていて、趣きのある一角です。

Img_2824 旧「かどや」です。現在は宿としては使われておらず、別のところで「ニューかどや」として営業しております。

Img_2826_2 美しい白壁、趣きある看板、太い梁。ガラス戸の向かって右は、くぐり戸になってます。

Img_2827 こちらから観ると、土蔵風ですね。

Img_2864 角の部分の造形も美しいです。
 こうした建物が現在も旅館として使われていたら、ぽん太の好みだったのですが。登録有形文化財になってたかもしれませんね。鹿教湯温泉は、こうした歴史ある建物を捨て、新しいコンクリートのホテルを造る道を選んでしまいました。


Img_2828 こちらは旧「かめや」さん。「蔵六館」という看板も見えますね。

Img_2830 崖の下から見上げると、こんなに美しいです。あゝ、泊まりたい。


Img_2831 湯端通りの先に五台橋があります。屋根の付いた橋です。

Img_2834 再建されたものでしょうけど、細い丸太の柱など、華奢でいい雰囲気です。


Img_2845 橋を渡って石段を上ると、「文殊堂」があります。歴史を感じるいい雰囲気のお堂です。

Img_2839 案内板です(クリックで拡大します)。宝永6年(1709)年に完成したもので、後に改築されてはいるものの、元禄時代の仏堂の作風がはっきりと現れているそうです。

Img_2846 屋根の棟端には鬼の面がついてます。

Img_2841 欄間にはけっこう見事な彫刻が施されております。

Img_2842 天井の龍の絵も立派です。

Img_2843 内部には文殊菩薩が祀られていると思われますが、厨子の扉は固く閉められてます。


Img_2862 ちょっと離れたところには、薬師堂があります。茅葺き屋根に生えた雑草がいい感じです。

Img_2855 内部には、でっかい仁王に守られて、小さな薬師様が。

Img_2860 仁王様は素朴系ですが、ある意味とっても怖いです。子どもなら泣きますな。

Img_2859 薬師如来はとっても柔和な表情。子どもを泣かしてほくそえんでるんでしょうか?

Img_2866 湯端通りの入口には、オシャレな建物の酒屋さん。

Img_2865 鹿教湯で地元のお米を作るというプロジェクトが行われているそうで……

Img_2876 そのお米で作ったお酒がこちら!お味もなかなか美味しかったですヨ。

2016/11/13

【仏像】秘仏の十一面観音を含む秘仏20躯が勢揃い「平安の秘仏―滋賀・櫟野寺の大観音とみほとけたち」国立博物館

 国立博物館に櫟野寺の仏像を見に行ってまいしましたが、なかなか素晴らしいというか、非常に素晴らしかったです。像高3mの秘仏・十一面観音菩薩坐像を始め、この寺に伝わる重要文化財20体がすべて展示されるという、滅多にない企画でした。特別サイトはこちら、国立博物館の公式サイトはこちらです。
 このような企画が実現したのには訳があって、現在櫟野寺の宝物殿の改修工事が行われているため、そのあいだ国立博物館に貸し出されることになったんだそうです。
 さらに、櫟野寺の木造吉祥天立像の一つは、東京国立博物館に寄託されていたので、櫟野寺のすべての重文の仏様が一堂に会するのは、久々のことなんだそうです。
 
 櫟野寺(らくやじ)は、滋賀県にある天台宗のお寺。公式サイトはこちらです。滋賀県というと、琵琶湖の周りにミカンの皮のようにうっすら付いていると思われがちですが、櫟野寺がある、忍者で有名な甲賀(「こうが」ではなく「こうか」と読みます)は、琵琶湖の南東、三重県との県境に近いところにあります。

 

 東京国立博物館の本館特別5室に入ると、いきなり目の前に御本尊の十一面観音菩薩坐像が立ちはだかり、
いや、座りはだかります。像高312cm、総高さはなんと5メートルで、金色に輝いております。す、すばらしいです。荘厳なり、荘厳なり。
 平安時代の作ですが、いわゆる定朝様式の成立以前の10世紀のもの。下膨れのお顔、分厚い唇のおちょぼ口、伏し目がちで切れ長の目、どっしりとしつつも、雅やかでのんびりした雰囲気があります。持ち上げた左手には華瓶、膝の上にたらした右手には念珠をお持ちです。
 補修されているのでしょうけど、頭上の小面も、一つひとつがとてもリアルに造られており、保存状態もいいです。

 

 御本尊の背後に安置されていたのが、木造薬師如来坐像です。像高222cmのいわゆる丈六仏で、御本尊よりは後年の12世紀に造られた、定朝様の仏様です。肉付きのいいふっくらとしたお顔で、整った優雅な仏様です。定朝様でありながら、天平時代の特徴であった翻波式の衣紋も刻まれています。このような異なる様式の混在は、地方仏の特徴だそうです。

 

 一度見たら絶対に忘れないのが地蔵菩薩坐像。宇宙人というか、胎児というか、目から上の頭の部分が膨れてます。組んだ足は薄っぺらく作られております。イヤホンガイドの裏番組の「みうらじゅん・いとうせいこうの櫟野寺 仏像トーク」によれば、高いところに置かれて下から見上げた時にバランスよく見えるように、遠近法を考慮して作られているのではないか、とのことでした。ナルホド。このみうらじゅんといとうせいこうのトーク、とっても面白かったです。

 

 毘沙門天立像は、鎌倉時代の躍動的な像容と異なり、肉付きよくどっしりとしております。ケツ(失礼いたしましたm(_ _)m)などは、丸々とでっかくて、スペインのおばさんのお尻みたいです。表情や姿勢もぎこちなく、素朴な印象を受けます。

 

 あとは疲れて来たので(酔っぱらってきたので)省略しますが、御本尊と似た表情の観音菩薩立像や(No.10)、し僧侶のように衣の襟を立てた地蔵菩薩立像や(No.3)、東方の地方仏でよく見られるノミの跡をわざと残した「鉈彫」(なたぼり)の仏様など(No.6)、興味深い像容が多く見られました。

 

 

 

 

 

特別展「平安の秘仏―滋賀・櫟野寺の大観音とみほとけたち」

 

東京国立博物館本館 特別5室
2016年9月13日(火) ~ 2016年12月11日(日)

 

 お写真は、上にリンクした二つの公式サイトにあります。

 

1 重文 十一面観音菩薩坐像 1軀 木造、漆箔・彩色 像高312.0cm 平安時代・10世紀 図録番号1
2 重文 毘沙門天立像 1軀 木造 像高163.0cm 平安時代・10~11世紀 図録番号4
3 重文 地蔵菩薩立像 1軀 平安時代・10世紀 図録番号6
4 重文 吉祥天立像 1軀 平安時代・10世紀 図録番号7
5 重文 観音菩薩立像 1軀 平安時代・11~12世紀 図録番号10
6 重文 観音菩薩立像 1軀 平安時代・11~12世紀 図録番号11
7 重文 観音菩薩立像 1軀 平安時代・10~11世紀 図録番号8
8 重文 十一面観音菩薩立像 1軀 平安時代・10~11世紀 図録番号9
9 重文 薬師如来坐像 1軀 木造、漆箔 造高222.0cm 平安時代・12世紀 図録番号2
10 重文 観音菩薩立像 1軀 木造、彩色 像高168.2cm 平安時代・10世紀 図録番号5
11 重文 観音菩薩立像 1軀 平安時代・12世紀 図録番号15
12 重文 観音菩薩立像 1軀 平安時代・12世紀 図録番号13
13 重文 観音菩薩立像 1軀 平安時代・12世紀 図録番号14
14 重文 観音菩薩立像 1軀 平安時代・12世紀 図録番号16
15 重文 十一面観音菩薩立像 1軀 平安時代・12世紀 図録番号17
16 重文 地蔵菩薩坐像 1軀 木造、漆箔 像高110.8cm 平安時代・文治3年(1187) 図録番号3
17 重文 十一面観音菩薩立像 1軀 平安時代・12世紀 図録番号18
18 重文 地蔵菩薩立像 1軀 平安時代・12世紀 図録番号19
19 重文 吉祥天立像 1軀 平安時代・11~12世紀 図録番号12
20 重文 吉祥天立像 1軀 平安時代・12世紀 図録番号20

2016/11/12

【オペラ】感動した!としか言えね〜「ワルキューレ」ウィーン国立歌劇場

 ウィーン国立歌劇場来日公演、ふたつ目の演目は「ワルキューレ」です。公式サイトはこちら

 前回の「ナクソス島のアリアドネ」は、初めて観た演目だし、「階より始めよ事件」があったりして、「なかなかいいね〜」というぐらいの感想でしたが、今回の「ワルキューレ」は先日新国立劇場で観たばかりだったこともあり、「をゝ、すんげ〜」という感じで、とっても感動いたしました。いや〜やっぱ、ウィーン国立歌劇場はすごい!!

 とはいえ、どこが良いのかを具体的に指摘できないのが、オペラ初心者の狸のぽん太の情けないところ。「なんかわらかんけどイイ」としか言えません。

 とくにイイかったのが、トマス・コニエチュニーのヴォータン。偏屈さはまったくありません(ヴォータンが偏屈だと思っていたのは、新国立のラジライネンを見慣れたぽん太だけか?)。最初は「ヴェルズング族が思い通りに育ってるぜイ」という感じで、ぎらぎら笑いながら登場しますが、奥方にやり込められての神の不自由さの嘆きや、ブリュンヒルデに対する怒りの爆発、そうして父娘の愛と別れの悲しみ、すべてがぽん太の胸を打ちました。小さい音量のときに時おり聞かせるささやくような音色の声も、とても心にしみました。演技力があるとか、表現力があるとかじゃなくて、歌と表現が表裏一体です。上手なバレエダンサーにおいては、踊りの動きがそのまま感情を表す仕草であるとの同じですね。

 ニーナ・シュテンメのブリュンヒルデは、おっそろしいワルキューレではあるはずなのに、なんだかいたいけな少女風。「ホーヨートホー」はちょっと迫力がなかったけど、ラストシーンはホントに父親と娘という感じで、とっても感動しました。眠らせたブリュンヒルデに、普通は盾と兜を乗っけたりするけど、今回の演出は白くて柔らかいマントのようなものをかけてあげていて、それがまた彼女の雰囲気にとっても合ってました。
 ジークムントに死の運命を告げる場面では、新国立のイレーネ・テオリンは堂々として神々しかったですが、シュテンメは言いにくそうにモジモジしてました。

 ミヒャエラ・シュースターのフリッカ。ぽん太はやっぱり新国立のエレナ・ツィトコーワのキンキンしたヒステリックな姉ちゃん風のフリッカが印象に残ってますが、シュースターは、ねっとりと粘着してくるおばさん風で、「あなたがそんなことしたら、私の立場はどうなるの、人間にばかにされて、え〜んえ〜ん」と訴えるうざったさはピカイチでした。

 ジークムントのクリストファー・ヴェントリスも、とても明るく英雄的な声で、第一幕に最初に部屋に入って来ての第一声から魅了されました。
 ジークリンデのペトラ・ラングは、先日の新国立の『ローエングリン』のオルトルートで素晴らしい歌を聞かせてくれましたが、今回の公演は、彼女がちょっと物足りなく感じるほど、全体が素晴らしかったです。

 演出は比較的オーソドックス。プロジェクションマッピングを使った、第一幕の歩く狼や、第三幕の舞台全体に燃えさかる火は、いまいち面白くなかったです。

 オペラ初心者のぽん太には、アダム・フィッシャーの指揮の良し悪しはわかりませんが、ウィーン国立歌劇場管弦楽団が奏でる音には感動しました。ピアニッシモでの美しさ、フォルテッシモでもキンキンいわずにあくまでも暖かい音を保ってました。

 ところでブリュンヒルデがジークムントを迎えに来たとき、「ワルキューレたちがお酌をして差し上げます」とか丁重にもてなすようなことを言ってましたが、いざついていったら、2幕の死者たちのようにひどい仕打ちをうけるのでしょうか。ううう、謎です。


ウィーン国立歌劇場 2016年日本公演

リヒャルト・ワーグナー作曲
「ワルキューレ」 全3幕
Richard Wagner, Die Walküre Der Ring des Nibelungen 1.Tag des Bühnenfestspiels

2016年11月6日 東京文化会館

指揮:アダム・フィッシャー
Dirigent:Adam Fischer
演出:スヴェン=エリック・ベヒトルフ
Regie:Sven-Eric Bechtolf
美術:ロルフ・グリッテンベルク
Bühne:Rolf Glittenberg
衣裳:マリアンネ・グリッテンベルク
Kostüme:Marianne Glittenberg
ビデオ:フェットフィルム(モンメ・ヒンリスク&トルゲ・メラー)
Video:fettFilm (Momme Hinrichs und Torge Møller)
音楽指導:トーマス・ラウスマン     
Musikalische Studienleitung:Thomas Lausmann      
再演演出:ビルギット・カイトナ
Szenische Einstudierung :Birgit Kajtna

ジークムント:クリストファー・ヴェントリス
Siegmund:Christopher Ventris
フンディング:アイン・アンガー
Hunding:Ain Anger
ヴォータン:トマス・コニエチュニー
Wotan:Tomasz Konieczny
ジークリンデ:ペトラ・ラング
Sieglinde:Petra Lang
ブリュンヒルデ:ニーナ・シュテンメ
Brünnhilde:Nina Stemme
フリッカ:ミヒャエラ・シュースター
Fricka:Michaela Schuster
ヘルムヴィーゲ:アレクサンドラ・ロビアンコ
Helmwige:Alexandra LoBianco
ゲルヒルデ:キャロライン・ウェンボーン
Gerhilde:Caroline Wenborne
オルトリンデ:ヒョナ・コ
Ortlinde:Hyuna Ko
ワルトラウテ:ステファニー・ハウツィール
Waltraute:Stephanie Houtzeel
ジークルーネ:ウルリケ・ヘルツェル
Siegrune:Ulrike Helzel
グリムゲルデ:スザンナ・サボー
Grimgerde:Zsuzsanna Szabó
シュヴェルトライテ:ボンギヴェ・ナカニ
Schwertleite:Bongiwe Nakani
ロスヴァイセ:モニカ・ボヒネク
Roßweiße:Monika Bohinec

ウィーン国立歌劇場管弦楽団、ウィーン国立歌劇場舞台オーケストラ
Orchester der Wiener Staatsoper, Bühnenorchester der Wiener Staatsoper

プロンプター: ワルター・ゼッサー
Maestro Suggeritore: Walter Zessar

2016/11/07

【歌舞伎】勘平の成仏は?『仮名手本忠臣蔵』(第一部)2016年10月国立劇場

 国立劇場の歌舞伎は、10、11、12月と三ヶ月をついやして『仮名手本忠臣蔵』の通し。

 歌舞伎座のプログラム構成が「名場面集」になりつつある昨今、うれしい企画です。国立劇場におかれましては、ぜひ今後とも、通し上演や復活上演にチャレンジしていただきとうございます。

 特設サイトはこちら、通常の公式サイトはこちらです。

 こんかいの上演では、普段はなかなかみれない場面を観られるのも有り難いです。10月でいえば「文使い」「裏門」や「花献上」。「文使い」「裏門」は、勘平とおかるが密会していたため、判官の刃傷沙汰という一大事をに居合わせることができず、一度は死を考えますが、思いとどまっておかるの実家にひとまず逃れることを決意する場面。有名な五・六段目でなぜ二人が山崎で暮らしているかが理解できます。ぽん太はこの場面をこれまで歌舞伎では見たことがありません。でも、「仮名手本忠臣蔵」から想を得たモーリス・ベジャールのバレエ『カブキ』では、おかると勘平の美しいパ・ド・ドゥを観たことがあります。

 「花献上」は、蟄居している判官に、妻のかほよ御前が八重桜を献上しようとする場面ですが、なんと41年ぶりの上演とのこと。華やかで美しい八重桜が、沙汰を待つ判官の哀しい身の上と対比されて、涙を誘いました。

 で、ぽん太が今回の通し公演で興味を持っているのは、以前からぽん太がこだわっている「勘平成仏問題」です。

 五・六段目の単独上演では、無念さから成仏を拒否した勘平が、連判状に加わることを許されて、成仏していくという演出が多いですが、元々の文楽では、勘平は成仏せずに怨霊となって仇討ちに加わるという設定です。

 怨霊になっちゃダメじゃん、と思うかもしれませんが、実は塩冶判官も切腹の直前に「生きかわり死にかわり、鬱憤をはらさん」と、怨霊となって復讐することを宣言しております。判官は潔く切腹したと思いがちですが、実はそうではなく、高師直に深い怨念を残しているのです。勘平が怨霊になるというのは、判官の復讐に自分も加わるということなのです。

 で、みごと仇討ちが成功し、判官は恨みをはらしてめでたく成仏できたとして、勘平はどうするの?実は十一段目に焼香の場があって、仇討ちの後、亡き主君の位牌に向かって、由良之助は最初に焼香をするよう一同に促されますが、師直を討ち取った矢間重太郎に一番を譲ります。されば二番目にと促されると再び拒否し、肌身離さず持っていた勘平の縞の財布を取り出して、勘平に二番の焼香をさせるのです。これで勘平も成仏して、めでたしめでたしとなるわけですが、この場面、あんまり上演されません。

 ですから「勘平成仏問題」は、判官切腹から討ち入り後の焼香まで、通しで上演しないと筋が通らず、完結もしないのです。

 今回の通し公演では焼香の場も入っているようで、国立劇場が「勘平成仏問題」にどう向き合ってくれるのか、ぽん太は今から楽しみです。ただ特別サイトの解説には、「原作の“財布の焼香”をアレンジした「柴部屋焼香」も上演し」と書いてあり、どうアレンジされているかちょっと不安でもあります。

 ところがぽん太、日頃の不摂生がたたり、判官切腹の直前に睡魔が襲ってきました。そのため、判官の「生き変わり死に変わり、鬱憤晴らさで措くべきか」というセリフの部分を聞き逃してしまいました。う〜ん、省略されることも多いこのセリフを、今回梅玉が言ったのかどうか、言ったとしたらどういう風に言ったのか。わかりません。ぽん太一生の不覚です。たしか売店で上演台本を売っていたような。11月に行った時に、(買わずに)ちらっと見てみようっと。

 それに辞世の句も聞き逃したような。ところがにゃん子に聞いてみると、辞世の句はなかったとのこと。ニャニャにゃに〜!?、判官切腹に「風誘う 花よりもなお 我はまた 春の名残を いかにとやせん」という辞世の句はつきものだろ〜。

 ところが脚本を読んでみると、確かに辞世の句はありません。う〜ん、辞世の句はないのが本当なのか。でも、なんでぽん太は辞世の句があると思っていたのでしょう。そういう台本もあるのかしら?試しに真山青果の『元禄忠臣蔵』を見てみると、第一幕「江戸城の刃傷」の最後に辞世の句が出て来るようですね。こっちと記憶がごっちゃになったのでしょうか?

 梅玉の塩冶判官、秀太郎の顔世御前、左團次の高師直、幸四郎の大星由良之助など、これだけの役者がそろえば、面白いのはあたりまえ。歌舞伎では3階席が定番のぽん太ですが、今回は1階最前列にしてみたので、表情がよく見えてとても良かったです。やっぱり近くの方がいいですね〜。

 錦之助の若狭之助が、キレやすい若い大名をうまく演じてました。扇雀の早野勘平、上方風の色っぽさがあって、「文使い」「裏門」の艶やかさに会ってました。

 隼人くんと米吉の恋模様には、隼人くんファンのにゃん子が大喜び。米吉くん、顔は可愛いけどこれまでなんだか無表情でしたが、今回は表情で芸をしてました。

 「えへん、エッヘーン」の口上人形の配役紹介が、開演10分前からだったので、前半を見逃してしまいました。まあ、でも、開演前にやるのが正しいといえば正しいので、仕方あないかも。

服部幸雄編著『仮名手本忠臣蔵 歌舞伎オンステージ8』白水社、1994。

 現行の歌舞伎の台本。いくつかのヴァージョンが付録として収録されている。

 竹田出雲作、守随憲治校訂『仮名手本忠臣蔵 附 古今いろは評林』岩波書店、1937年、岩波文庫。

 オリジナルの文楽の浄瑠璃です。

 真山青果『元禄忠臣蔵(上、下)』岩波書店、1982年、岩波文庫。

 

国立劇場開場50周年記念

平成28年度(第71回)文化庁芸術祭主催
竹田出雲・三好松洛・並木千柳=作
通し狂言 仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら)【第一部】四幕九場

2016年10月5日 国立劇場

     国立劇場美術係=美術

大  序 鶴ヶ岡社頭兜改めの場
二段目 桃井館力弥使者の場
      同   松切りの場
三段目 足利館門前の場
      同   松の間刃傷の場
      同   裏門の場
四段目 扇ヶ谷塩冶館花献上の場
      同   判官切腹の場
      同   表門城明渡しの場

(主な配役)
【大 序】
塩冶判官    中村梅玉
顔世御前    片岡秀太郎
足利直義    中村松江
桃井若狭之助 中村錦之助
高師直     市川左團次

【二段目】
桃井若狭之助 中村錦之助
本蔵妻戸無瀬 市村萬次郎
大星力弥    中村隼人
本蔵娘小浪   中村米吉 
加古川本蔵   市川團蔵

【三段目】
塩冶判官    中村梅玉
早野勘平    中村扇雀
桃井若狭之助 中村錦之助
鷺坂伴内    市村橘太郎
腰元おかる   市川高麗蔵
加古川本蔵   市川團蔵
高師直     市川左團次

【四段目】
大星由良之助    松本幸四郎
石堂右馬之丞    市川左團次
薬師寺次郎左衛門 坂東彦三郎
大鷲文吾      坂東秀調
赤垣源蔵      大谷桂三
織部安兵衛     澤村宗之助
千崎弥五郎     市村竹松
大星力弥      中村隼人
佐藤与茂七     市川男寅
矢間重太郎     嵐橘三郎
斧九太夫      松本錦吾
竹森喜多八     澤村由次郎
原郷右衛門     大谷友右衛門
顔世御前      片岡秀太郎
塩冶判官      中村梅玉

2016/11/06

【温泉】自家菜園で作った新鮮な野菜が抜群/鹿教湯温泉かつら旅館(★★★★)

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 8月末、ぽん太とにゃん子は、長野県上田市、鹿教湯温泉の「かつら旅館」に泊まってきました。こちらが公式サイトです。
 鹿教湯温泉というとぽん太のイメージでは、「温泉病院のある寂れた温泉で、一部オシャレな宿があり」というものでしたが、かつら旅館は温泉街から少し離れた農地のなかにあり、とてものどかで落ち着いた雰囲気。何よりも自家菜園で作った新鮮な野菜を使ったお料理に感激しました。もちろんお風呂は鹿教湯の薬効優れたお湯を源泉掛け流し。お値段も鹿教湯にしてはとってもリーズナブル。ぽん太の評価は堂々の4点です。

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 お手入れされた植栽のあいだの坂を登って行くと……。

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 瀟洒な和風の建物が見えてきます。

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 外は肌に突き刺さるような強い夏の日差しですが、建物のなかは涼しい風が心地よいです。

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 ぽん太とにゃん子は、トイレなしのお安い部屋をお願いしましたが、それでも御覧のとおりの明るく広々した立派な和室。お布団はあらかじめ敷いてある方式です。

Img_2805 窓の外には、ご覧のような、山あいの田園風景が広がります。なんだか田舎に帰省した気分。

Img_2817 トイレ付きの客室のある新しい建物は、木の梁を表面に出したりしてますが、ぽん太には残念ながらちと味気なく感じます。

Img_2798 温泉は、タイル張りで小さめの浴槽で、残念ながら雰囲気はありません。しかし薬効あらたかな鹿教湯の源泉掛け流しで、とても暖まります。無色透明のお湯です。

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 温泉分析書です(クリックで拡大します)。泉温は45.9度、pHは8.1と弱アルカリ性です。「苦味・微硫黄味・微硫化水素臭を有す」と書いてありますが、鈍感なぽん太には無味無臭に感じられます。泉質は単純温泉(弱アルカリ性低張性高温泉)です。

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 さて、夕食ですが、これがぽん太には極めて高得点。自家菜園で作った新鮮でとっても美味しい夏野菜がいっぱいです。鯉の甘露煮も、甘すぎずあっさりしています。

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 茶碗蒸しにも野菜がたっぷり。でも、登山のあとではちょっと物足りないかも。

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 朝食も、新鮮な食材を味わえます。

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 丸っこいナスは、まるでアボガドみたいにねっとりと柔らかいです。ナスを蒸すんだそうです。手間がかかってますね。

2016/11/05

【オペラ】ピコ太郎の衣装のステファン・グールド「ナクソス島のアリアドネ」ウィーン国立歌劇場

 座席につこうとすると、にゃん子の席におじさんが座ってるというトラブル発生。係員からチケットの提示を求められたおじさんは、「チケットはないよ、ここは俺の席だ、オーバーブッキングだろう、NBSの責任だよ」などと主張。幕が開きそうになったので、とりあずにゃん子は空いている席で鑑賞。
 おじさんの隣りに座ったぽん太は、「おっさんの方が席を間違えてるんじゃないの?でも、本当にオーバーブッキングだったら、もっと良い席に替えてもらおう」などという邪念が頭を巡り、一回に空席があるか確認してみたり、癪だから堂々と座ってるおじさんから腹いせに肘掛けを奪ってやろうかと考えたり、舞台に集中できません。
 しかし、第一幕が終わると、皆が拍手をしていて館内が暗いうちに、おじさんが荷物を全て持ってそそくさと席を立ちました。途中で自分の間違えに気がついたのでしょうか。その座席の下にはチケットが落ちていて、おじさんのホントの席は一階下の、もっと高い席でした。少し溜飲が下がりましたが、でも、一言謝って欲しかったです。まったくもう、一万円分くらい損しました。
 おじさんは最初、「そっちが階を間違えてるんじゃないの。よくいるんだそういう人が」などと言ってましたが、自分の方が階を間違えていたようです。まさに「階(隗)より始めよ」ですネ。
 にゃん子に「ひどい目にあったね〜」と言ったら、「眠気が覚めて丁度良かったわ」とのお答え。偉い!あんたは神じゃ。

 で、ウィーン国立歌劇場管弦楽団の音は、本当に素晴らしいです。柔らかくて、暖かみがあり、どんなにフォルティッシモでも音がキンキンしません。ぽん太は聞いているだけで幸せになってきます。
 指揮のマレク・ヤノフスキは初めて聞きましたが、ぽん太はこの演目を聞くのは初めてなので、指揮の良し悪しや特徴はまったくわかりませんでした。

 歌手も素晴らしく、三人の妖精や、ハレルキンたち四人組といった端役(?)まで、聞き惚れてしまうようなアンサンブルです。
 特に、ちょっとマライア・キャリー似のダニエラ・ファリーのツェルビネッタは、難しいコロラトゥーラをまったく気張らず美しく柔らかく歌い上げ、演技力も抜群で笑いを誘いました。
 一方アリアドネのグン=ブリット・バークミンは、ファリーとは対照的に本格的、悲劇的な歌声で、バッカスとの長大な二重唱は圧倒的な迫力でした。
 そのバッカスは、先日新国立の「ワルキューレ」で素晴らしい声を聞かせてくれたステファン・グールド。う〜ん、ジークムントも良かったけど、周りのレベルが高いとさらにいいですね。遠慮せず思いっきり歌ってるんでしょうか。ただ、衣装がピコ太郎だったのには吹き出しそうになりました(写真は例えばこちらのページ)。オペラ版PPAPを歌って欲しいです。
 作曲家のステファニー・ハウツィールもスリムで、若々しい作曲家に見えました。

 「ナクソス島のアリアドネ」を聴くのはぽん太は初めて。でも、リヒャルト・シュトラウス、ホーフマンスタールのコンビですから、分かりやすくて楽しいに決まってます。
 オペラ(第2幕?)は、もっと二つの劇が混ざり合って、しっちゃかめっちゃかのドタバタになるのかと思ったら、意外とスッキリしてますね。ギリシャ神話の高尚な音楽と、民衆の俗謡が、対比しながらしっくり納まってるのがすごいです。ゴージャスで流麗、美しくも複雑な旋律。さすがシュトラウスです。

 「オペラ」の舞台の前に、上演前の歌手や作曲家のドタバタがあり、さらに客席でのショートコメディが付くという、今回の上演。
 歌も、演技も、演奏も高水準。ぽん太とにゃん子は大満足でした。

ウィーン国立歌劇場 日本公演2016

リヒャルト・シュトラウス作曲「ナクソス島のアリアドネ」プロローグ付1幕
Richard Strauss Ariadne auf Naxos Oper in einem Aufzug nebst einem Vorspiel

2016年10月30日
東京文化会館

指揮:マレク・ヤノフスキ
Dirigent:Marek Janowski
演出:スヴェン=エリック・ベヒトルフ
Regie:Sven-Eric Bechtolf
美術:ロルフ・グリッテンベルク
Bühne: Rolf Glittenberg           
衣裳:マリアンネ・グリッテンベルク
Kostüme:Marianne Glittenberg
照明:ユルゲン・ホフマン
Licht: Jürgen Hoffmann
音楽指導:トーマス・ラウスマン     
Musikalische Studienleitung:Thomas Lausmann      
再演演出:カタリーナ・ストロンマー
Szenische Einstudierung:Katharina Strommer

執事長:ハンス・ペーター・カンメラー
Der Haushofmeister:Hans Peter Kammerer
音楽教師:マルクス・アイヒェ
Ein Musiklehrer:Markus Eiche
作曲家:ステファニー・ハウツィール
Der Komponist:Stephanie Houtzeel
テノール歌手/バッカス:ステファン・グールド
Der Tenor (Bacchus):Stephen Gould
士官:オレグ・ザリツキー
Ein Offizier:Oleg Zalytskiy
舞踊教師:ノルベルト・エルンスト
Ein Tanzmeister:Norbert Ernst
かつら師:ウォルフラム・イゴール・デルントル
Ein Perückenmacher:Wolfram Igor Derntl
下僕:アレクサンドル・モイシュク
Ein Lakai:Alexandru Moisiuc
ツェルビネッタ:ダニエラ・ファリー
Zerbinetta:Daniela Fally
プリマドンナ/アリアドネ:グン=ブリット・バークミン
Die Primadonna (Ariadne):Gun-Brit Barkmin
ハルレキン:ラファエル・フィンガーロス
Harlekin:Rafael Fingerlos
スカラムッチョ:カルロス・オスナ
Scaramuccio:Carlos Osuna
トルファルディン:ウォルフガング・バンクル
Truffaldin:Wolfgang Bankl
ブリゲッラ:ジョゼフ・デニス
Brighella:Joseph Dennis
水の精:マリア・ナザーロワ
Najade:Maria Nazarova
木の精:ウルリケ・ヘルツェル
Dryade:Ulrike Helzel
山びこ:ローレン・ミシェル
Echo:Lauren Michelle


ウィーン国立歌劇場管弦楽団  
Orchester der Wiener Staatsoper

ピアノ: クリスティン・オカールンド
Klavier: Kristin Okerlund

プロンプター: マリオ・ペルクトルド 
Maestro Suggeritore: Mario Perktold

2016/11/04

【オペラ】オネーギンとタチアーナの偏屈さが足りず。「エフゲニー・オネーギン」マリインスキー・オペラ

 マリインスキー・オペラ来日公演は、日程の都合で「エフゲニー・オネーギン」のみ鑑賞。ロシアのオペラ団による「オネーギン」、しかもゲルギエフ指揮のマリインスキーということで、とても楽しみにしておりました。実際に観て、なかなか見応えはありましたが、感動して涙が溢れるほどではなかったかな。ファーストキャストじゃなかったせいもあるのかしら?公式サイトはこちらです。

 オネーギンのブルデンコ、タチヤーナのゴンチャロワ、ともに偏屈さが足りない気がしました。歌舞伎でいえば「ニンに合わない」という感じか。ブルデンコは声量豊かで歌は素晴らしいけど、クリクリした顔で、何だか陽気で人がよさそう。3幕のメイクはちょっと暗い雰囲気があったけど。ゴンチャロワも、ちょっと南方系の面立ちで感情が豊かな雰囲気。レンスキーは、新国立の「ウェルテル」で感動したコルチャック。ハンサムで、声も晴れやかで明るくて、格好よかったです。

 幕が開くと、舞台の上は一面のリンゴで、ちょっとびっくり。田舎に住む若い娘タチアーナの純朴さを表しているのでしょうか。第3幕では、窓辺に少しだけリンゴが置いてありました。
 第1幕は、眠かったから感動しなかったのか、感動しなかったから眠かったのか、イマイチな感じでした。上に書いたように、オネーギンの冷たくシニカルな感じがなく、タチアーナも、人とちょっと違っているために、周囲から浮いてしまう感じがありません。だから手紙のシーンも、そういうタチアーナに恋心が生じて、それに突き動かされて手紙をしたためるという感じが出なかったし、その結果、オネーギンに拒否されての絶望と恥じらいも弱まってしまいました。
 第2幕、オネーギンがオルガとダンスをすることで、レンスキーを挑発するあたりの演出がちょっと物足りなく、その結果、レンスキーがオネーギンに決闘を申し込むまでに激怒する理由がわかりにくかったです。バレエと比べちゃいけないけど、シュツットガルト・バレエ団のクランコ振り付けの「オネーギン」では、レンスキーがオルガと踊ろうとすると、さっとオネーギンが割り込んで来てオルガと踊ったりして、とってもうまかったです。
 家庭教師のトリケがよぼよぼのおじいさんで、歌も滑稽に歌われました。シリアスなドラマのなかに滑稽なシーンを入れるのが、歌舞伎みたいで興味深かったです。
 第3幕は、舞踏会のセットが素晴らしかったです。第2幕の田舎の舞踏会との対比が見事ですね。ツァンガのグレーミン侯爵は、迫力あるバスで聞き応えがありました。最後のオネーギンとタチアーナのシーン。タチアーナは、オネーギンに対する恋心に流されそうになりながらも、なんとかオネーギンを拒絶したように見えました。ぽん太としては、最後は公爵夫人であるタチアーナが毅然としてオネーギンの申し出を退けて欲しい気がしました。
 最後、オネーギンが踏み入れたところは霧の立ちこめる真っ黒な空間。というのもぽん太はあまり感動的ではなく、演出は全体にちと不満でした。

 ゲルギエフ指揮のマリインスキー・歌劇場管弦楽団は、エネルギッシュで、ロシア的な情念がみなぎっており、素晴らしかったです。

マリインスキー・オペラ2016年来日公演

「エフゲニー・オネーギン」
作曲:チャイコフスキー
原作:アレクサンドル・プーシキン

2016年10月16日
東京文化会館

指揮:ワレリー・ゲルギエフ
演出:アレクセイ・ステパニュク
舞台:アレクサンドル・オルロフ
衣装:イリーナ・チェレドニコワ

ラーリナ夫人:スヴェトラーナ・フォルコヴァ
タチヤーナ:エカテリーナ・ゴンチャロワ
オルガ:ユリア・マトーチュキナ
フィリッピエヴナ:エレーナ・ヴィトマン
オネーギン:ロマン・ブルデンコ
レンスキー:ディミトリー・コルチャック
グレーミン侯爵:エドワルド・ツァンガ
中隊長:ユーリ・ブラソフ
ザレツキー:アレクダンドル・ゲラシモフ
トリケ:アレクサンドル・トロフィモフ

管弦楽:マリインスキー歌劇場管弦楽団
合唱:マリインスキー歌劇場合唱団

2016/11/03

【歌舞伎】四世芝翫型の「熊谷陣屋」が珍しかったです。2016年10月歌舞伎座夜の部

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 橋之助が、息子三人と同時に襲名披露する10月の歌舞伎座は、第二部のみ観劇。まるで書道のように、墨で勢いよく一筆で龍が描かれた祝い幕が、なかなか見事でした。公式サイトはこちらです。

 襲名を前にして何かと週刊誌の話題にのぼった橋之助改め芝翫。口上で菊五郎が「これまでのようにキョロキョロしないで」と橋之助をいじって、笑いを誘ってました。

 その芝翫が熊谷直実を演じた「熊谷陣屋」が今回の一番の見物か。なんでも四世芝翫の型だそうで、見慣れた型とはあちこち違ってました。
 まず、直実の顔が真っ赤っか。衣装も黒いビロードの着物の上に赤い錦の上下を着て、ちょっと野暮ったいです。陣屋に戻ってきた直実が相模を眼に止め、袴を両手ではたいて不機嫌を現すところがありませんでした。
 制札を持っての見得では、制札を担いで、舌を出してました。
 首実検のところでは、直実が相模に息子小次郎の首を渡すとき、二人で首を抱き合って泣くようなシーンがありました。そして一番異なるのは、「十六年は一昔、夢であったな」というセリフを、本舞台のやりとりのなかで言ってしまうこと。必然的に、最後の幕外の花道での例の芝居がありませんでした。
 う〜ん、芝翫型は古風で珍しかったけど、ぽん太はやっぱり普通の型の方が好きかな。やっぱりあの花道でのラストシーンを見たいです。で、そうだとすると、それまで直実は感情を押し隠しているべきで、息子の首を嘆く演技は不要ということになります。
 芝翫の演技は悪くなかったけど、まだまだ感情移入して涙を流すほどではありませんでした。相模の魁春がさすがの演技。藤の方は菊之助が頑張ってましたが、幹部役者で見たいところでした。吉右衛門の義経が凄すぎて、どっちが主役かわからないほどでした。

 その後に玉三郎の「藤娘」。ここのところ、玉三郎の舞踊シリーズが続いてますね。素晴らしかったです。
 最近、舞踊の演目のときは、詞章を印刷して持って行ってるのですが、今回参照させていただきたTEAM TETUKUROというサイトの解説は(こちら)、とてもわかりやすくで面白かったです。

 最初に、松緑の「外郎売」がありました。

歌舞伎座

  中村橋之助改め 八代目 中村芝翫 襲名披露
   中村国生改め 四代目中村橋之助     
   中村宗生改め 三代目中村福之助 襲名披露
   中村宜生改め 四代目中村歌之助     
  芸術祭十月大歌舞伎

平成28年10月6日

夜の部

  平成28年度(第71回)文化庁芸術祭参加公演
  野口達二 改訂
一、歌舞伎十八番の内 外郎売(ういろううり)

   外郎売実は曽我五郎 松緑
   大磯の虎 七之助
   曽我十郎 亀三郎
   小林妹舞鶴 尾上右近
   化粧坂少将 児太郎
   近江小藤太 宗生改め福之助
   八幡三郎 宜生改め歌之助
   茶道珍斎 吉之丞
   小林朝比奈 亀寿
   梶原景時 男女蔵
   工藤祐経 歌六
 
八代目中村芝翫 四代目中村橋之助 三代目中村福之助 四代目中村歌之助 襲名披露 口上(こうじょう)

   橋之助改め芝翫
   国生改め橋之助
   宗生改め福之助
   宜生改め歌之助
     
   藤十郎
   幹部俳優出演

   一谷嫩軍記
三、熊谷陣屋(くまがいじんや)

   熊谷直実 橋之助改め芝翫
   相模 魁春
   藤の方 菊之助
   亀井六郎 歌昇
   片岡八郎 尾上右近
   伊勢三郎 宗生改め福之助
   駿河次郎 宜生改め歌之助
   梶原平次景高 吉之丞
   堤軍次 国生改め橋之助
   白毫弥陀六 歌六
   源義経 吉右衛門

四、藤娘(ふじむすめ)

   藤の精 玉三郎

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