【歌舞伎】情と型のバランス・仁左衛門の勘平 2017年11月歌舞伎座夜の部
仁左衛門の勘平は何回か見てるのですが、かなり久しぶり。自分のブログをぐぐっても出てこないし、ひょっとしたら前回から10年以上たってるかも。最近は菊五郎をよく見てる気がします。
仁左衛門も菊五郎と同じく基本的には菊五郎型ですが、気っ風のよさがあって型を一つひとつみせていく菊五郎に対して、仁左衛門の勘平は姿や表情が美しく、情の動きがが伝わってきました。
例えば有名な財布を見比べる場面でいうと、仁左衛門の場合、「違ってくれ」と思いながら懐から出した財布を見るときの不安と緊張、「ああ、同じだ」と気づいた瞬間の血の引くような思いが、ありありと伝わってきました。
母おかやに殴打されるときの足の形なども美しかったです。
勘平のその時その時の心の動きがドラマとして描き出され、型において表情や姿の美しさを見せるのが、仁左衛門の良さだと感じました。
基本は菊五郎型ですが、細かいところは違ってましたね。二つ玉の鉄砲は、一回撃つだけですし、花道でおかるの駕籠を押しもどすところも、菊五郎はぽ〜んとひと突きするのに対し、仁左衛門はずず〜っと押し戻してました。
染五郎の斧定九郎は、迫力と色気があってかなり良かった気がします。吉哉のおかやは、ちょっと気丈そうな感じがしましたが、悪くありませんでした。
藤十郎と扇雀の「新口村」もまた、上方風の情に溢れる名演。藤十郎もまだまだ元気で、顔も化粧をすると誠に美しいですが、さすがに声が通らなくなってきたか。歌六の孫右衛門も熱演で良かったですが、ここは我當でで見たかったです。
最後はぽん太が嫌いな「元禄忠臣蔵」より「大石最後の一日」。
おごり高ぶらず、みな整然と切腹しましょう、みたいなテーマが、ぽん太はイヤです。ダメ男の悲惨な運命を暖い目で描いた「仮名手本忠臣蔵」の五・六段目とは大違いですよね。
大石内蔵助を幸四郎が自信を持って演じていました。幸四郎は時代物だとセリフに変に節がつき、声がくぐもって聞き取りにくくなりますが、今回のような現代劇の方があってますね。演技は良かったとぽん太は思います。
また児太郎のおみのが、小姓のふりをしている時も、女の正体を表してからも、ともに素晴らしい演技でした。
金太郎くん、いつのまにかずいぶん身長が伸びました。でもまだセリフと演技はまだ変。
吉例顔見世大歌舞伎
歌舞伎座
平成29年11月22日
公式サイト
http://www.kabuki-bito.jp/theaters/kabukiza/play/546
夜の部
一、仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら)
五段目 山崎街道鉄砲渡しの場
同 二つ玉の場
六段目 与市兵衛内勘平腹切の場
早野勘平 仁左衛門
女房おかる 孝太郎
斧定九郎 染五郎
千崎弥五郎 彦三郎
判人源六 松之助
母おかや 吉弥
不破数右衛門 彌十郎
一文字屋お才 秀太郎
恋飛脚大和往来
二、新口村(にのくちむら)
亀屋忠兵衛 藤十郎
傾城梅川 扇雀
孫右衛門 歌六
真山青果 作
真山美保 演出
元禄忠臣蔵
三、大石最後の一日(おおいしさいごのいちにち)
大石内蔵助 幸四郎
磯貝十郎左衛門 染五郎
おみの 児太郎
細川内記 金太郎
吉田忠左衛門 錦吾
赤埴源蔵 桂三
片岡源五右衛門 由次郎
久永内記 友右衛門
堀内伝右衛門 彌十郎
荒木十左衛門 仁左衛門
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