台風13号が接近する中、めげずに世界バレエフェスティバルを観に行ってきました。空席はほとんどなく、バレエ・ファンがいかにこの公演を楽しみにしているかがよくわかりました。こちらが公式サイトです。
まずはノヴィコワ、ホールバーグの「眠れる森の美女」。美男・美女の気品溢れる優雅な踊りでした。二人とも、背が高くてスタイル抜群!ノヴィコワが「ちょっと支えていただけるかしら?」という感じで手を伸ばすと、ホールバーグが「喜んで」と手を取ります。これはオーロラ姫ごときの小娘の踊りではありませんな。社交界のベテランという感じ。素晴らしかったです。
「ムニェコス(人形)」は、赤いパンツ丸見えの女の子(ヴァルデス)と兵隊さん(カマルゴ)の可愛らしい踊り。人形みたいに始まって、とちゅう人間っぽくなったりします。楽しいけど、ちょっと哀愁が感じられました。
ボラック、ルーヴァの「ソナチネ」は、舞台上のピアノが奏でるラヴェルの音楽にのせて踊ります。流れる水のようなラヴェルの音楽にぴったりあった振り付けが素晴らしく、パリオペらしいエレガントな踊りでした。
次いで、ぽん太イチオシのリアブコが登場!この人の表現力は凄いな〜。盟友のアッツォーニと「オルフェウス」を踊りました。ぽん太は初めての演目ですが、ギリシャ神話のオルフェウスの、冥府下りの物語のようでした。
オルフェウスは、死んだ妻を取り戻そうと冥府に下ります。自慢の竪琴を奏でて妻を返してもらえることにりますが、たった一つの条件は「冥府を抜け出すまで振り返って妻を見てはいけない」というものでした。しかしオルフェウスはもう少しというところで振り返ってしまうのです。
『古事記』にも、イザナギノミコトが、死んだ妻イザナミノミコトを取り戻しに黄泉の国(よみのくに)に行きますが、約束を破ってイザナミノミコトを見てしまうという似たような話があります。「見るなのタブー」と呼ばれるモチーフですね。映画の「千と千尋の神隠し」でも、最後に千尋が現実に戻るトンネルをくぐるとき、ハクは決して振り返らないように言います。でも千尋はタブーを犯しませんでしたね。
で、バレエでは、竪琴がヴァイオリン、後ろを見ないことがサングラスになってました。ガラの短い一演目でしたが、とてもドラマチックでした。
第一部最後の「コッペリア」はコジョカルがかわゆいですね〜。おじさん、すっかりやられました。お相手のコラレスが、失礼ながら釣り合いがとれてませんでした。すごく勢いはありましたが。
ジルベール、ガニオの「シンデレラ」はとってもエレガント。ヌレエフの振り付けを見るときにぽん太がいつも感じる違和感がありませんでした。二人の実力のおかげでしょうか?
ロホ、エルナンデスの「HETのための2つの小品」は、なかなか雰囲気ある踊りでしたが、男のTバックがちょっときつかった。ところでHETってなに?オランダ国立バレエ団(Het Nationale Ballet)のことか?ようわからん。
ボーダーとサラファーノフの黒鳥のパ・ド・ドゥは、ボーダーが貫禄ありすぎ。踊りとしては素晴らしかったですが、黒鳥の小悪魔的な雰囲気がなくって、ぽん太の好みではありません。この人が白鳥を踊るとどうなるんだろ。対してサラファーノフの王子様は、エレガントで線が美しく、踊りも大きくてあざやかでした。
「椿姫」の第2幕のパ・ド・ドゥは、アマトリアンが素晴らしかったです。結核に蝕まれた雰囲気、若いアルフレードの純粋で一直線な愛に戸惑いながらも、次第に心をときめかせていくヴィオレッタ。フォーゲルがきっちりした踊りで支えてました。
こんかいはちっとも眠くならないぞ、涼しいせいかな?というところで第3部、ハミルトンとボッレのロミジュリのバルコニーシーンから。見事な踊りでガラ公演としてはいいんでしょうけど、ボッレでかすぎ。若い二人のウルウルした雰囲気は出ませんでした。
ウルド=ブラームとエイマンの”ダイヤモンド”は、エレガントで美しかったですが、エイマン跳ばず。エイマンのし身体能力も見たかったな〜。
コジョカル、コボーの「マノン」は、第3幕の砂漠のシーン。ドラマティックで感動しました。
ラムとボネッリの「アポロ」は、ボネッリが神話らしい崇高さがありました。
「椿姫」第3幕のパ・ド・ドゥは、ラウデールとレヴァツォのハンブルク・ペアでしたが、ぽん太の感想は「いけませんな〜」。ドラマチックに踊ろうとしているのはわかりますが、一つひとつの動作が雑になっている気がしました。コジョカル、コボーの「マノン」を見習って欲しいです。
ようやく第4部。感想を書くのに疲れてきたので、短くなります。
バデネスとカマルゴの「じゃじゃや馬馴らし」、バデネスのじゃじゃ馬踊りがうまい。
アレクサンドロワとラントラートフの「ヌレエフ」は、昨年ボリショイ・バレエで初演された話題作ですが、素晴らしかったです。全幕も見てみたいです。
アイシュヴァルト、リアブコの「アダージェット」もただただ感動。東京フィルの演奏も良かったです。
フェリとゴメスで「オネーギン」。フェリのタチヤーナが素晴らしかったですが、ぽん太はこの演目、クランコの振り付けが嫌いで、ラストはやはり貴婦人となったタチヤーナが、昔の初恋の思い出を噛み締めながらも、毅然とした態度でオネーギンの愛を断ってほしいもの。オネーギンの手紙を破くのでは、昔の仕返しになってしまいます。
オオトリはコチェトコワはシムキンのドンキ。いや〜シムキン君のパフォーマンスが見事でしたね〜。ドンキはこうでなくちゃ。片手リフトも危なげなし。コチェトワのヴァリアシオンで扇子を持ってないのが珍しかったです。
劇場を出ると、風雨はそれほどでもありませんでした。長い長い公演でしたが、とってもとっても満足できました。
【第15回 世界バレエフェスティバル】Bプログラム
2018年8月8日
東京文化会館
― 第1部 ―
「眠れる森の美女」
振付:マリウス・プティパ
音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
オレシア・ノヴィコワ、デヴィッド・ホールバーグ
「ムニェコス(人形)」
振付:アルベルト・メンデス
音楽:レムベルト・エグエス
ヴィエングセイ・ヴァルデス、ダニエル・カマルゴ
「ソナチネ」
振付:ジョージ・バランシン
音楽:モーリス・ラヴェル
レオノール・ボラック、ジェルマン・ルーヴェ
「オルフェウス」
振付:ジョン・ノイマイヤー
音楽:イーゴリ・ストラヴィンスキー、ハインリヒ・ビーバー、ピーター・プレグヴァド、アンディ・パートリッジ
シルヴィア・アッツォーニ、アレクサンドル・リアブコ
ローラン・プティの「コッペリア」
振付:ローラン・プティ
音楽:レオ・ドリーブ
アリーナ・コジョカル、セザール・コラレス
― 第2部 ―
「シンデレラ」
振付:ルドルフ・ヌレエフ
音楽:セルゲイ・プロコフィエフ
ドロテ・ジルベール、マチュー・ガニオ
「HETのための2つの小品」
振付:ハンス・ファン・マーネン
音楽:エリッキ=スヴェン・トール、アルヴォ・ペルト
タマラ・ロホ、イサック・エルナンデス
「白鳥の湖」より 第3幕のパ・ド・ドゥ
振付:マリウス・プティパ
音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
アシュレイ・ボーダー、レオニード・サラファーノフ
「椿姫」より 第2幕のパ・ド・ドゥ
振付:ジョン・ノイマイヤー
音楽:フレデリック・ショパン
アリシア・アマトリアン、フリーデマン・フォーゲル
― 第3部 ―
「ロミオとジュリエット」より 第1幕のパ・ド・ドゥ
振付:ケネス・マクミラン
音楽:セルゲイ・プロコフィエフ
メリッサ・ハミルトン、ロベルト・ボッレ
「ジュエルズ」より "ダイヤモンド"
振付:ジョージ・バランシン
音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
ミリアム・ウルド=ブラーム、マチアス・エイマン
「マノン」より 第3幕のパ・ド・ドゥ
振付:ケネス・マクミラン
音楽:ジュール・マスネ
アリーナ・コジョカル、ヨハン・コボー
「アポロ」
振付:ジョージ・バランシン
音楽:イーゴリ・ストラヴィンスキー
サラ・ラム、フェデリコ・ボネッリ
「椿姫」より 第3幕のパ・ド・ドゥ
振付:ジョン・ノイマイヤー
音楽:フレデリック・ショパン
アンナ・ラウデール、エドウィン・レヴァツォフ
― 第4部 ―
「じゃじゃ馬馴らし」
振付:ジョン・クランコ
音楽:ドメニコ・スカルラッティ
編曲:クルト・ハインツ・シュトルツェ
エリサ・バデネス、ダニエル・カマルゴ
「ヌレエフ」より パ・ド・ドゥ
振付:ユーリー・ポソホフ
音楽:イリヤ・デムツキー
マリーヤ・アレクサンドロワ、ウラディスラフ・ラントラートフ
「アダージェット」
振付:ジョン・ノイマイヤー
音楽:グスタフ・マーラー
マリア・アイシュヴァルト、アレクサンドル・リアブコ
「オネーギン」より 第3幕のパ・ド・ドゥ
振付:ジョン・クランコ
音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
アレッサンドラ・フェリ、マルセロ・ゴメス
「ドン・キホーテ」
振付:マリウス・プティパ
音楽:レオン・ミンクス
マリア・コチェトコワ、ダニール・シムキン
指揮:ワレリー・オブジャニコフ、ロベルタス・セルヴェニカス
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
ピアノ:フレデリック・ヴァイセ=クニッテル(「ソナチネ」「椿姫」)
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