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2019年1月の5件の記事

2019/01/31

【首藤康之】ダンスとセリフが交代する斬新な舞台「出口なし」KAAT神奈川芸術劇場

 首藤康之のおっかけで横浜へ。演目は「出口なし」。こんかいは首藤のダンスもけっこう見れて、なかなか楽しめました。

 「出口なし」は、哲学者サルトルの手になる戯曲で、1944年に初演されました。彼の実存主義の哲学が盛り込まれていて、「地獄とは他人のことだ」というセリフは有名です。

 この戯曲をもとに、モーリス・ベジャールは「3人のソナタ」というバレエを振りつけました。こちらの初演は1957年。ぽん太は以前に、ジル・ロマン率いるモーリス・ベジャール・バレエ団の来日公演で観たことがありますが、だいぶ以前のことなので、あまり覚えておりません。ネット上の動画も見つかりません。

 こんかいKAATでの「出口なし」の上演を提案したのは首藤だったそうで、昔見たベジャールの「3人のソナタ」が印象に残っていて、いつか自分でも演じてみたいと思っていたそうです。

 出演はバレエ出身の首藤と中村恩恵に、演劇の秋山菜津子。首藤は最近よくセリフのある役をよくやってるけど、中村はまさかセリフは言わんだろう。逆に演劇の秋山は踊れないだろうし、いったいどんな舞台になるのかな。「出口なし」をインスピレーションの源として、言葉とダンスが混ざった抽象的な舞台になるのかな、などと考えながら幕が開くのを待ちました。

 実際は、全体として戯曲に従って劇が進行するものの、セリフと舞踏が交互に繰り返されるという展開でした。その分、セリフは全体に省略し、少し改変しているようでした。
 中村恩恵もがセリフを発したのには、ぽん太もびっくりしました。初めて声を聞きました。ちょっと滑舌が悪いところもありましたが、カマトトのお嬢様っぽい口調で頑張ってました。
 対して舞台出身の秋山奈津子も、他の二人の踊りに見事に絡んでおりました。以前にジャズダンスをやっていたそうです。もちろんセリフのうまさはダントツ。初めて観た役者さんかと思ったら、野田秀樹の「桜の森の満開の下」に出てたんですね。
 三人ともそれぞれ観ていてヒヤヒヤする部分があって、スリリングでした。

 踊りとセリフの交代という構成はなかなか面白く、成功していると思いました。物語の展開も緊張感があってダレることがなく、終盤に向かってヒートアップしていく感じも良かったです。

 最後はどのように終わるのかと思いながら観ていたのですが、「さあ、また始めよう」(だっけ?)のセリフのあとにダンスシーンがあって幕となったのですが、これは余計な気がしました。「さあ、また始めよう」のセリフが十分衝撃的なので、最後にダンスをもってくるなら、よっぽどインパクトがないとダメなように思いました。

 KAATの芸術監督で、今回の舞台を演出した白石晃が案内人役で登場し、舞台を引き締めてました。

 音楽は誰の曲だったんでしょう。ピアノ曲でしたが、なかなか雰囲気に合ってました。

 しかし一方で、このサルトルの演劇を見ていて、「時代は変わったな〜」と感じました。確かに現代社会は、情報通信の発展によって、常に他人の視線にさらされており、それを意識せずに暮らすことはできません。だけど我々は、サルトルの時代のような濃密な人間関係を結ぶことはないし、他人の視線によって「実存」を脅かされるような不安を感じることもありません。むしろ他人の視線は、人間関係を希薄化し、均質化しているように感じます。


 帰りに野毛でハシゴ。行った店は大黒屋(昔ながらの居酒屋で、イカコロルイベを初めていただきました)、叶屋(樹木希林さんの実家の老舗居酒屋だそうですが、近代的な大きな店に改築されてしまっています。地酒が揃ってます)、弥平(魚が自慢。地酒もそろってます)。


「出口なし」

KAAT神奈川芸術劇場
2019年01月30日(水)

公演情報|神奈川芸術劇場
  雑誌のインタビューへのリンクもあって面白いです。

【原作】ジャン=ポール・サルトル
【上演台本・演出】白井晃
【出演】
  男/ガルサン  首藤康之
  女1/イネス  秋山菜津子
  女2/エステル  中村恩恵
  案内人  白石晃

美術:杉山至
照明:大石真一郎
音響:徳久礼子 
衣裳:前田文子
ヘアメイク:小林雄美 
舞台監督:大垣敏朗
演出助手:西祐子 
技術監督:堀内真人

2019/01/28

【仏像】銅像延命地蔵菩薩像及脇童子像 日金山東光寺(静岡県熱海市)

 ぽん太とにゃん子は、伊豆の岩戸山に登ってきたのですが、登り口にあった東光寺が歴史あるお寺であり、古い参道には多くの石仏があることを知りました(岩戸山登山と岩戸観音の記事はこちら《【登山】東光寺から岩戸山、岩戸観音》)。
 この記事は、東光寺に関するご報告です。

 

寺院名】真言宗 日金山東光寺(ひがねさん とうこうじ)
【公式サイト】https://higanesan.com
【住所】静岡県熱海市伊豆山968
【拝観日】2019年1月23日
【拝観】拝観自由。ただし通常は無住で、ご本尊は閉じられた扉のガラス越しに拝観するしかなく、とても見づらいです。いつ開扉されるのか、ぽん太は知りません。
【仏像】 ○市指定
○銅像延命地蔵菩薩像及脇童子像 像高 
本像324cm、掌善91cm、掌悪93cm 江戸時代?
 閻魔大王石像
 奪衣婆石像

 

 岩戸山登山の記事に書いたように、東光寺は、走湯権現(現在の伊豆山神社)と深い関係があり、鎌倉時代には源頼朝の信仰に支えられました。伊豆山神社のある熱海から東光寺に至る道には、多くの石仏群が配祀られています。

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 山道を登ってきた参拝者が初めて見る東光寺の風景がこちら。正面やや右の建物のなかには、お彼岸のときに建てられると思われる幟がいっぱい入ってます。

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 こちらが本堂です。ガラス戸は閉まっており、ガラス戸越しに中を覗き込むしかありませんが、内部が暗いので見にくいです。

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 こちらがご本尊のお姿です。案内板によると半跏像だそうで、それで像高3mはなかなかの大きさです。右手に錫杖を持ち、左手は見えませんが、宝珠をお持ちのようです。キッチュな印象はなく、とても整ったお姿です。
 脇侍の二童子は、両側の灯りと蓮華の後ろに、ちらりと見えてます。

 延命地蔵とは、「延命地蔵菩薩経」に基づく地蔵菩薩の一形態ですが、残念ながらこの経典は日本で作られた偽経だそうです。このお経の最後で、左右を固める掌善童子、掌握童子について書かれているそうです(延命地蔵菩薩経 - Wikpedia)。

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 これがその案内板。脇童子の背に寛文十一年(1671年)と書かれているので、江戸時代前半の作と思われます。

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 一方こちらの案内板には、この地蔵菩薩は頼朝の建立によると書かれており、この矛盾を考証する力はぽん太にはありません。

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 本堂の前には様々な石仏が置かれておりますが、これは閻魔大王だそうです。ちょっと漫画チックです。

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 こちらは奪衣婆(だつえば)。かなり怖いです。子供だったら泣くと思います。奪衣婆は三途の川で亡者の衣服を剥ぎ取る鬼女で、このように胸をはだけた姿で表現されることが多いようです。その位置付けは時代とともに様々に変わったようです。
 いずれにせよ、地蔵菩薩に閻魔大王、奪衣婆という組み合わせは、地獄からの救済の民間信仰と関連していたと推測されます。重要文化財に指定されている元箱根の磨崖仏からうかがえる地蔵信仰とも、関連しているのかもしれません。

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 石仏の中に、にゃん子が好きな如意輪観音さまもいました。すごく素朴な像ですが、お顔がとてもお優しく、どこか引かれます。

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 東光寺の西側、仏塔が並んだ小道を登っていくと……

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 日金の三仙人塚があります。日金山東光寺にゆかりの三仙人を供養する宝篋印塔で、左から順に木生仙人、松葉仙人、金地仙人です。

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 案内板によると、中央の松葉仙人は南北朝時代、両側は江戸時代のようです。

2019/01/27

【登山】東光寺から岩戸山、岩戸観音

 ぽん太とにゃん子は、今年初の登山に、伊豆の岩戸山に行ってきました。十国峠の近くです。登山といってもほとんど水平というか、ひょっとしたら下りなんじゃないかと思うような軟弱ルートでした。しかし東光寺や岩戸観音があり、石仏があったりと、信仰の道でもあることがわかって興味深かったです。

【山名】岩戸山(734m)
【山域】箱根・湯河原
【日程】2019年1月23日(日帰り)
【メンバー】ぽん太、にゃん子
【天候】晴れ
【ルート】東光寺駐車場12:18…12:33笹の広場…13:07岩戸山…13:40岩戸観音…14:30東光寺…14:48東光寺駐車場

【マイカー登山情報】十国峠レストハウスの駐車場あり(無料、342台)(登山口ナビ)。
 伊豆スカイラインの料金所の手前を左折して登っていくと、右手に公衆トイレがあり、左手に東光寺の駐車場あり。さらに少し登ると左手に日金山霊園の駐車場もあり。ただし両方とも登山用ではないので、参拝客に迷惑がかからないように注意が必要。
【参考サイト】
岩戸山・湯河原門川ハイキングコース|湯河原観光協会 - このサイトにある地図は参考になります。

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 東光寺の駐車場に車を停めさせていただき、登山開始。日金山霊園の入り口をすぎると、道端にところどころ石仏群があります。

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 なんか、いいお顔をしていますね。
 東光寺は帰りに見ることにして通過。ゆるやかに登ったり降りたりしながら、ほとんど水平の道が続きます。

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 笹の広場です。岩戸山へはここで道標に従って左折しますが、海を見るためにちょっと直進。

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 〽︎見えた見えたよ、海が見えた。右下に見える街が熱海。左の島が初島。正面の水平線に大島がかすかに見えてます。

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 富士山の頭が見えました。途中、富士山がバーンと見えるところはありません。

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 道の両側は竹が密集しています。いわゆるハコネダケってやつでしょうか。

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 岩戸山山頂に到着。お弁当をいただきました。

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 せっかくなので岩戸観音に足を伸ばしました。山頂を東へ少し通り越し、鉄塔の裏から、この案内板を目印に急坂を下っていきます。普通の観光客には危険ですが、登山をしている人には問題ありません。下っていくと右手が巨大な岩になってきて、「岩戸山」という名前がついた理由が納得できます。

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 ところどころロープを掴みながら急坂を下りていくと、巨大な岩に穿たれた岩窟が見えてきます。

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 白い扉を開けて、観音様を直接拝むことができます。

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 こちらが岩戸観音さまのお姿です。金色をしてますが、白い衣をまとった女性のお姿で、いわゆる白衣観音(びゃくえかんのん、びゃくいかんのん)ですね。右手には巻物を持ってます。白衣観音はよく巻物をもってますが、その理由と意味はぽん太は知りません。

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 さて、帰りは史跡などを見学しながらゆっくり歩きました。こちらは「末代上人宝筐印塔」です。

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 案内板によると、末代上人は鳥羽条項の時代の僧で、富士山の山岳仏教を定着させた人だそうです。この塔は、文化11年(1814年)に建立されたものだそうです。

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 ところどころに石仏群があります。

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 石仏の道の案内図です。こうしてみると、湯河原から岩戸山を経る道ではなく、熱海から登る道がメインの参拝道だったようです。また、走湯権現(現在の伊豆山神社)とも深い関わりがあり、鎌倉時代には源頼朝の信仰に支えられたそうです。

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 長くなったので、東光寺に関しては稿を改めたいと思います。

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 登山終了後、芦ノ湖に行きました。強い北風で、まるで海のような波が立ってました。動画はこちらをご覧ください(強風でまるで海のような波が立つ芦ノ湖|Youtube)。

2019/01/18

【歌舞伎】海老蔵の俊寛の慟哭 2019年1月新橋演舞場夜の部

 勸玄くんと麗禾ちゃん目当てに、新橋演舞場夜の部に行って来ました。

 まずは「鳴神」。この演目、ぽん太はこれまで海老蔵とかで見ていて、ちょっとエッチでなんかバカっぽい変な芝居だと思っていたのですが、こんかい艶やかでしっかりし演技の右團次と、古風な雰囲気のある児太郎で見て、初めて古風でおっとりした歌舞伎演目であることがわかりました。エッチなところも、性に対するおおらかさの現れだったんですね。右團次の「毛抜」も見てみたくなりました。

 さて、お待ちかねの「牡丹花十一代」。町衆や芸者衆が集う中、ほろ酔い気分の鳶頭の海老蔵が登場。お決まりの「待ってました」の掛け声に対し、「待ってましたとはありがてえ。でも、お客さんたちが待っているのは、おれじゃあねえだろ〜」と返し、場内大笑い。手古舞姿と鳶頭姿の麗禾ちゃん・勸玄くんが登場すると、割れんばかりの拍手。かわゆいです。終始照れてるみたいな笑顔を浮かべてました。セリフも踊りもしっかりとできました。このおもちゃ、うちにも欲しいです。

 続いて海老蔵の「俊寛」。これはちょっとびっくりというか、とっても感動したのですが、不思議な感動でした。
 海老蔵の俊寛、衰弱しているわりには眼光鋭く、よろよろしているのに、時々力強く見えてしまいます。前半のやりとりはさしたることもなく経過。迎えの船が来て、瀬尾兼康が俊寛に、妻の東屋が殺されたことを告げるシーン。海老蔵がどんな表情を見せるかと双眼鏡で見ていたのですが、ここもさしたる芝居はありませんでした。千鳥のくどきがあって、俊寛が、自分が島に残って代わりに千鳥を船に乗せようと、船から飛び出してくるところからがすごがったです。海老蔵、泣きじゃくってました。悟りの境地に妻を失った哀し身を滲み出させる、というような演技ではなく、感情丸出しの演技でした。妻のいない都に戻ったとしても、何の喜びもない。自分は島に残るから、千鳥が船に乗ってくれ。それはまさに慟哭といえるような、心の底から湧き上がってくる叫び声でした。
 もちろんぽん太はそれに、妻の麻央さんを失った海老蔵の心情を重ねました。実際の海老蔵は、取り乱した様子は見せませんでしたが、本当は泣き叫びたかったんだろうな。いや、人がいないところで泣き叫んでいたのかもしれない。
 瞬間を残して船が出ていく場面。ここでは、滑り去る船の艫綱をつかもうとする場合と、しない場合があって、ぽん太はこれまで、つかもうとするのは未練がましくてちょっとやだな〜などと思っていたのですが、今回は、綱をつかんで、それがピンと張るまで握りしめる演技がしっくり来ました。出航する船をとどめようとしたのではなく、この世から去っていく妻の魂を離すまいとしたのだと感じました。そのあとの、船を追い、大声を出しながら手を振り、そしてよろけるように岩山に登って船を見つめるあたりも、妻を失った孤独と不安を感じました。
 最後の見所はラストの表情。勘三郎などはちょっと笑みを浮かべるなど、あざとい演技をしましたが、海老蔵はどういう表情をするのか。
 海老蔵の瞬間は、次第に表情を失って、動かなくなりました。吉右衛門の場合は「石のように無に」なりますが、眼光鋭い海老蔵の場合、最後は石の彫像のようでした。
 ぽん太も泣きじゃくり。これが海老蔵の演技の力なのか、ぽん太が現実と重ね合わせたからなのか、素人のぽん太には判断がつきません。でも、歌舞伎の感動というのは、舞台に限定された演技からのみ生まれるのではなく、役者の一人の人間としての人生も重なってくることがよくわかりました。

 最後は「春興鏡獅子」で、海老蔵が一転して女方の舞踊と獅子を演じました。でも、女形はあんまり色気を感じませんでした。獅子となってからは、すごい迫力。
 胡蝶の精が誰かと思ったら、大向こうさんが「福太郎、福之助」と、紹介のような声をかけてくれました。海老蔵の部屋子なんですね。可愛らしく、踊りも頑張ってました。

初春歌舞伎公演

新橋演舞場
平成31年1月9日

公演案内|歌舞伎美人

夜の部

一、歌舞伎十八番の内 鳴神(なるかみ)

    鳴神上人 右團次
    雲の絶間姫 児太郎

  十一世市川團十郎生誕百十年
二、牡丹花十一代(なとりぐさはなのじゅういちだい)

    鳶頭 海老蔵
    手古舞 堀越麗禾
    鳶頭 堀越勸玄
    鳶頭 右團次
    差配人 男女蔵
    芸者 児太郎
    鳶の者 男寅
    芸者 廣松
    鳶の者 九團次
    差配人 市蔵
    茶屋女房 齊入
    世話役 家橘
    芸者 孝太郎

  近松門左衛門 作
  平家女護島
三、俊寛(しゅんかん)

    俊寛僧都 海老蔵
    海女千鳥 児太郎
    丹波少将成経 九團次
    平判官康頼 男女蔵
    瀬尾太郎兼康 市蔵
    丹左衛門尉基康 右團次

  福地桜痴 作
四、新歌舞伎十八番の内 春興鏡獅子(しゅんきょうかがみじし)

    小姓弥生後に獅子の精 海老蔵
    老女飛鳥井 齊入
    家老渋井五左衛門 家橘

2019/01/17

【歌舞伎】若い芽が伸びとる伸びとる、常磐津も大活躍。2019年1月新春浅草歌舞伎

  恒例の新春浅草歌舞伎を見て来ました。正月の暴飲暴食がたたって急性胃炎となり、体調は△。1部・2部のダブルヘッダーは疲れました。でも、いつものように、若手の大活躍を、ベテランがしっかりと支えて、とても楽しい舞台でした。

 お楽しみの「お年玉挨拶」は、本日は巳之助。浅草名物のこの挨拶は、雑談(?)が長くて、ふだんの舞台では見れない俳優さんたちの素顔が伺われて人気があるのですが、今回は時間が押しているとのことで雑談なし。ちょっと残念でした。言われてみれば、第一部と第二部の間も30分しかありません。

 最初の演目は「戻駕色相肩」。二人の駕籠かきが、お客の禿を誘って踊り出しますが、最後は駕籠かきが実ハ石川五右衛門と真柴久吉だっという「楼門五三桐」の世界となって終わります。
 梅丸くんの禿(かむろ)がかわいかったです。
 音楽は常磐津。こんかい常磐津さんは、これ以外にも「芋掘長者」、「乗合船惠方萬歳」と、3演目で大活躍でした。

 続いて松也の「義賢最期」。前半の芝居はそれなりでしたが、立ち回りになってからは、さすがに若いだけあって身体能力がすばらしく、迫力がありました。

 「芋掘長者」は、初めて見た演目。お姫様の婿選で、踊りの名人が集まりますが、踊りが苦手な近くに住む芋掘りが、他人の真似をしながら踊ったり、滑稽な芋掘りの仕草で踊るという楽しい演目。
 何と言っても巳之助の踊りのうまさが目立ちました。ところどころに入っていた現代風のセリフも面白かったです。

 30分の短い休憩を挟んで後半戦です。浅草寺にお参りする間もありませんでした。ぜいぜい。

 お年玉挨拶は種之助。第2部は時間があったみたいなのに、あまり雑談がありませんでした。苦手なのかも。

 お正月の公演に付き物の「寿曽我対面」は、松也の五郎、歌昇の十郎。松也の五郎は、自分のセリフのところでは力が入っているのですが、それが終わると気が抜けてスタスタと戻っていくのが気になりました。常にエネルギーがみなぎっていて欲しいところ。けっこう貫禄ある歌昇の十郎はどうかと思いましたが、柔らかい和事の味がよく出ておりました。

 岡本綺堂作の「番町皿屋敷」は、脚本が変。怪談の「播州皿屋敷」を元に、「幡随院長兵衛」の世界と、落語の「厩火事」(うまやかじ)を混ぜたようなお話。
 お殿様の気持ちを試そうとして家宝の皿を割る腰元お菊も変なら、疑われたことに腹を立てて残りの皿も割りまくり、お菊を斬るお殿様も変。お客さんも、これまでの明るい雰囲気から一転、すっかり気分が重くなり、静まり返ってしまいました。
 もうちょっと猟奇的な心理を深掘りしたら面白かったかも。お菊の疑念がだんだん強まって、家宝を割るに至るところとか、これまで「ヨシヨシ」と言ってたお殿様が、お菊の一言でキレ出すところとか……。
 とはいえ隼人くん、うまくなりましたね〜。種之助の女形もびっくりしましたが、違和感なく見れました。

 最後の「乗合船惠方萬歳」は、江戸の町人たちを七福神に見立てた、美しくおめでたい踊り。見た目も華やかでした。それぞれ踊りも良かったですが、七福神+万歳の8人を歌い分ける常磐津もお見事でした。


新春浅草歌舞伎

浅草公会堂
2019年1月16日

新春浅草歌舞伎特設サイト
公演情報|歌舞伎美人

第1部

  お年玉〈年始ご挨拶〉
    巳之助

一、戻駕色相肩(もどりかごいろにあいかた)

    浪花の次郎作実は石川五右衛門 中村歌昇
    禿たより 中村梅丸
    吾妻の与四郎実は真柴久吉 中村種之助

  源平布引滝
二、義賢最期(よしかたさいご)

    木曽先生義賢 尾上松也
    小万 坂東新悟
    下部折平実は多田蔵人行綱 中村隼人
    御台葵御前 中村鶴松
    待宵姫 中村梅丸
    進野次郎宗政 中村橋之助
    矢走兵内 中村種之助
    百姓九郎助 大谷桂三

  岡村柿紅 作
三、芋掘長者(いもほりちょうじゃ)

  芋掘藤五郎 坂東巳之助
  友達治六郎 中村橋之助
  息女緑御前 坂東新悟
  腰元松葉 中村鶴松
  松ヶ枝家後室 中村歌女之丞
  菟原左内 中村歌昇
  魁兵馬 尾上松也


第2部

  お年玉〈年始ご挨拶〉
    種の助

一、寿曽我対面(ことぶきそがのたいめん)

    曽我五郎時致 尾上松也
    曽我十郎祐成 中村歌昇
    小林朝比奈 坂東巳之助
    大磯の虎 坂東新悟
    鬼王新左衛門 中村隼人
    化粧坂少将 中村梅丸
    工藤左衛門祐経 中村錦之助

  岡本綺堂 作
二、番町皿屋敷(ばんちょうさらやしき)

    青山播磨 中村隼人
    腰元お菊 中村種之助
    放駒四郎兵衛 中村橋之助
    腰元お仙 中村鶴松
    用人柴田十太夫 大谷桂三
    後室真弓 中村錦之助

三、乗合船惠方萬歳(のりあいぶねえほうまんざい)

    萬歳 坂東巳之助
    才造 中村種之助
    白酒売 坂東新悟
    大工 中村隼人
    女船頭 中村橋之助
    芸者 中村鶴松
    子守 中村梅丸
    若旦那 中村歌昇
    通人 尾上松也

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