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2019年2月の10件の記事

2019/02/24

【温泉】湯河原をなめるなよ!登録有形文化財の宿「源泉 上野屋」神奈川県湯河原温泉(★★★★★)

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 久々の5点満点の宿です。1月下旬に湯河原の上野屋さんに泊まりました。こちらが公式サイトです。

 湯河原温泉というと、海沿いのすっかりひらけた観光地を思い浮かべますが、山の方に上がっていくと、まだ古い街並みや風情のある和風旅館が残っております。
 ぽん太は以前に伊藤屋さんに泊まったことはありますが(【温泉】藤村も愛したレトロな宿/湯河原温泉伊藤屋(★★★★)/付:小梅堂・福泉寺の首大仏)、こんかいは上野屋さんにお世話になりました。

 昔ながらの和風旅館で、建物は登録有形文化財に指定されております。最も古い大正12年築の別館は、とても風情があります。また、昭和5年築の本館は木造4階建てで、楼閣のような雰囲気が漂います。
 温泉は自家源泉を持ち、もちろん源泉掛け流し。無色透明、弱アルカリの、とっても肌に優しいお湯です。
 お料理は、ぽん太とにゃん子は量が少なめのスタンダードプランにしましたが、これで十分。美味しい会席料理で、もちろんお造りや、朝食の干物など海の幸は絶品です。
 おもてなしもアットホームで、お値段もお部屋を選べばリーズナブル。
 昔ながらの湯河原温泉を楽しみたい人には是非おすすめ。ぽん太の評価は5点満点です!

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 玄関の破風にある彫刻。玄関よりも古い時代のものと思われます。
 創業300年余りの宿。現在の湯河原温泉において、最も古い宿だそうです。

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 中に入ると、昔ながらの「帳場」が迎えてくれます。
 この玄関棟は昭和12年ごろの建物で、登録有形文化財に指定されております。他に、本館と別館の建物も、登録有形文化財です。

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 レトロな廊下が続きます。

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 大正12年建造の別館の磨き込まれた廊下です。この宿で最も古い建物です。

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 部屋の入り口の意匠。もちろんぽん太が泊まった部屋ではありません。

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 迷路のような階段。

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 こちらがぽん太とにゃん子が泊まった、昭和5年建造の本館のお部屋です。格調のなかにも、温泉旅館らしい軽みと遊び心が感じられます。

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 外から見た本館です。木造4階建て。ちょっと楼閣のような雰囲気もありますね。こちらも登録有形文化財です。

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 温泉は、男女別の内湯(入替あり)と、ふたつの貸切露天風呂、そして眺めのいい足湯があります。

 写真は貸切露天風呂のうちのひとつ。無料で利用できます。湯河原の温泉街にあっては開放感がないのは仕方ありませんが、裏山の林を見ながら入浴できます。
 お湯は自家源泉を掛け流しで利用。無色透明、無味(ちょっと塩っぱいかも)無臭のやわらかいお湯です。

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 しかし、実は成分が濃いことは、湯口に析出した結晶を見ればわかります。さすが湯河原のお湯です。

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 温泉分析書です。泉温は81.3度と高温。pHは8.4で弱アルカリです。泉質は、ナトリウム・カルシウムー塩化物・硫酸塩泉。

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 源泉が高温のため、浴槽に湯を張る時に加水をしておりますが、循環・加温・消毒なしの源泉掛け流しです。

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 宿の敷地内にある自家源泉です。

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 男女別の内湯。浴槽の縁が御影石です。

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 もうひとつの内湯。時間で男女交替になります。こちらはヒノキ。

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 お料理も、一つひとつ手が込んだ懐石料理で、美味しゅうございました。

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 朝食は伊豆だけあって、干物やカマボコが絶品でした。

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 出発前に宿の周囲を散策。海沿いはすっかり開発されてしまった湯河原ですが、ここのあたりは古い温泉地の雰囲気が残っています。

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 いい感じの古い建物が残ってます。写真は富士屋さんか?高級旅館です。

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 こちらは閉館しているようですね。

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 館内に貼ってあった、古い湯河原温泉の案内図。明治36年とありますが、この頃は上野屋周辺が温泉の中心地であったことがわかります。

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 う〜ん、いいですね。旅館かしら?違うかも。
 このあたりの宿も、早く泊まらないと、取り壊されたり、高級旅館化してしまうかもしれませんね。

2019/02/23

【温泉】源泉ドバドバ系のリーズナブルな宿、朝食もうまい!「五十沢温泉 ゆもとかん」(新潟県南魚沼市)(★★★★)

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 2月中旬、新潟県は南魚沼の「五十沢温泉(いかざわおんせん)ゆもとかん」に泊まってきました。こちらが公式サイトです。

 いわゆる源泉ドバドバ系の宿。無色透明なアルカリ性の源泉が、これでもかというほどドバドバとかけ流されております。混浴の岩風呂と露天風呂(女性・男性それぞれ専用時間帯あり)に、男女別の内湯(女性は露天付き)もあります。これらに入れるだけで泊まったかいがあるというもの。
 建物やお料理は、悪くはありませんが、それなりに普通という感じ。しかし、一泊二食付きで一人8,000円から(消費税抜き)というお値段を考えると、コスパは最高です。
 スキーやスノボが目的の若者たちは、コンビニの弁当を持ち込んで素泊まりで利用するケースも多いらしく、共用の電子レンジなども備えております。
 中居さんたちのざっくりとしたフレンドリーな対応も、雰囲気にあっていて、なんか居心地がいいです。
 それから、実は、ぽん太としては、朝食のバイキングがかなりのおすすめです(下記参照)。
 ぽん太の評価は、温泉とコスパ(と朝食)を高く評価して4点!

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Img_1729  場所でいうと、関越自動車道の六日町インターの西側、車でわずか10分です。とはいえ、北に八海山、南には巻機山があり、東に目を転ずると、はるか高みに中ノ岳あたりの雪の稜線が見え、山好きには嬉しい立地です。

 建物は、いたって普通の雪国の温泉ホテルといった感じ。広い駐車場があり、日帰り入浴客も多いようです。

Img_1741  こちらが客室。最も安いプランのお部屋ですが、シンプルではありますが、新しく清潔です。

Img_1752  温泉は、混浴があるため、撮影禁止。写真は宿のホームページ(→こちら)などをご覧ください。

 浴室は、混浴の岩風呂と露天風呂、男女別の内湯(女湯は露天付き)があります。混浴風呂は、夕食前に男性専用時間、夕食後に女性専用時間が設定されております。

 岩風呂・露天風呂は、どちらもかなり広く、そこにお湯がドバドバと注がれ、源泉掛け流しになっております。豊富な湯量があればこその方式です。お湯は無色透明・無味ですが、かすかに硫化水素臭がします。
 上は、露天風呂の温泉分析書。泉温50.9度、湧出量はなんと毎分214リットル! す、すごいですね。pH9.4とアルカリ性で、お肌がすべすべになります。泉質はアルカリ性単純温泉。

Img_1738  こちらが内風呂の温泉分析書。内湯も窓が多くて、広々した感じです。こちらも泉温49.8度で、湧出量は毎分232リットル。2本の源泉で毎分0.5トン近くのお湯が湧いていることになります。pHは同じく9.4ですが、なんか露天の方がヌルヌル感が強い感じがします。

Img_1743_3  夕食は、普通の温泉旅館のお料理ですが、悪くはありません。

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 揚げたての天ぷらも運ばれてきます。魚沼の地酒飲み比べを注文。

Img_1747  朝食はバイキングでいただきますが、ぽん太的にはこれがなかなか得点が高かったです。

Img_1748  「きりざい」あるいは「きりぜぇ」と言うようですが、納豆に、細かく切った野沢菜や野菜、ゴマを入れてかき混ぜ、ご飯にかけていただきます。魚沼の郷土料理だそうです。初めて聞いた名前ですが、そういえばどこかの旅館で以前に、すでに混ぜてあるものを食べたような気がします。

Img_1750  こちらは、ずらりと並んだご飯のお供の数々。う〜ん、これをつまみながら地酒をチビチビやりたいな〜。

2019/02/22

【温泉】落ち着いた雰囲気の秘湯・高湯温泉 旅館ひげの家(福島県福島市)(★★★★)

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 2月中旬に大寒波のなか泊まってきました。こちらが公式サイトです。

 福島市の西にそびえる吾妻山の裾野に位置する高湯温泉。ひげの家(ひげのいえ)は、日本秘湯を守る会の会員宿。ホームページを見ると「予約はお電話を」になっていて、ネット予約サイトに登録していないところをみると、昔ながらのスタイルを守っているようにも見えますが、一方で露天風呂やテラスがついたベッドルームを用意するなど、時代に合わせた変化にも前向きなようです。内装はロッジ風。温泉は、高湯ならではな白濁した硫黄泉が、内湯、露天、貸切と三つの浴室で楽しめます。お料理も、日本酒付きのぽん太に合いそうな、手の込んだ会席料理。
 ちょっとお洒落な秘湯でのんびりしたい方にオススメ。ぽんたの評価は堂々の4点です。

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 福島西インターから車で20分ほど。磐梯吾妻スカイラインの北の入り口近くにある高湯温泉ですが、いまだに静かな雰囲気が残っております。さらに今回は大寒波が北日本を覆って雪に見舞われ、いっそう山深い雰囲気が漂います。
 和風の門構えで、日本秘湯を守る会の提灯がぶら下がっておりますが、建物はけっこう新しくて大きいです。

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 フロントやロビーも、木材が多用されて、落ち着いたロッジ風の雰囲気。秘湯に良くある古めかしさはありません。
 お部屋も、露天風呂やテラスがついたお洒落なベッドルームもありますが、ぽん太とにゃん子は財政的観点から和室を選択。それでも、広々した気持ちいのいいお部屋でした。

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 温泉もなかな高得点。男女別の内湯、露天風呂、貸切露天風呂がありますが、まずは貸切露天風呂から。雪を見ながらの入浴は温泉の醍醐味ですが、ヒートショックには気をつけましょう。写真には写ってませんが、正面は渓流になっております。
 そして「温泉といえばコレ」といった感じの白濁した硫黄泉。硫化水素の香りが漂います。源泉掛け流しは当たり前。

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 源泉は「高湯16番 仙気の湯」。pH=2.8の強酸性。泉温は48.5度。泉質は「酸性ー含硫黄ーカルシウムー硫酸塩温泉(硫化水素型)」です。

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 続いて露天風呂。こちらも渓流に面しております。

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 こちらの源泉は、「高湯26番 滝の湯」。pHはやはり2.8と強酸性。泉温は51.0度。泉質は「酸性ー含硫黄ーカルシウム・アルミニウムー硫酸塩温泉(硫化水素型)」で、若干異なっております。

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 最後は男女別の内湯です。湯気で曇っていてちと見づらいですが、天井が高く、窓も大きく、広々して気持ちがいいです。源泉は露天と同じく「滝の湯」のようです。

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 夕食は、お酒好きにはたまらない手の込んだお料理が、次々と出てきます。

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 こちらがメニューです。

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 とても美味しゅうございました。

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 ライトアップされて舞い踊る雪を眺めていると、飽きることがありません。

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 朝食です。湯葉を作るための豆乳を使ったお豆腐が、大豆とにがりの濃厚な味がして美味しかったです。

2019/02/21

【温泉】銘木をふんだんにつかった立派な秘湯 湯西川温泉 平の高房(栃木県)(★★★★)

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 2月中旬、ぽん太とにゃん子は、平家の落人伝説で有名な、栃木県は湯西川温泉の「平の高房」(たいらのたかふさ)に泊まってきました。

 山深い湯西川温泉のなかでも奥の方に位置する宿。けっこう大きな宿です。建物はどちらかというと新しい感じですが(それでも何十年か経ってるか?)、立派な木材をふんだんに使っていて、重厚な感じがします。
 温泉はお肌すべすべのアルカリ泉。無色透明の柔らかいお湯です。もちろん源泉かけ流し。露天付きの男女別のお風呂に、入替制の露天風呂、貸切露天風呂があります。
 囲炉裏端でいただくお食事も美味しく、夕食後は語り部さんが民話を語ってくれる催しもあり、ちょうど開かれていたかまくら祭りへ送迎もしてくれます。
 今回は、1人1泊約1万円で、囲炉裏端の夕食と、貸切風呂が付き、秘湯の会のスタンプもオーケーというお得なプランだったので、コスパも抜群。
 素晴らしい宿ですが、ぽん太の好みからすると「鄙び度」が原点となり、評価は惜しくも4点!

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 広々とした玄関。立派な木造の階段を上ったところが、フロントとロビーになります。

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 フロント周りも天井が高く、広々とした空間を演出。木の梁と白い壁のコントラストが美しいです。栃木特産の大谷石も効果的に使われております。あまり「秘湯」という感じはなく、格式ある立派な旅館です。

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 客室の廊下は、石畳と玉砂利が効果的。向かって左には中二階の部屋が並んでおり、廊下を支える柱の列が美しいです。新家材ではなく無垢の材木を使っているので、時代を経るにしたがって美しさが増してくることでしょう。
 建物の多くは、昭和50年代に建てられたそうです。

 湯西川温泉といえば、うん十年前は、川沿いの細い道をうねうねと走ってようやくたどり着く、まさに「隠れ里」でしたが、平成24年(2012)の湯西側ダム完成に伴って立派な片側一車線の道路が通りました。便利にはなりましたが「秘境」感は薄れてしまいました。交通がよくなったせいで、日帰りの客が増え、逆に宿泊客が減少したという問題もあるそうです。昔ながらの建物もどんどん減っており、山奥の普通の温泉地になってしまわないかと心配です。
 そういえば昔、ちょんまげを結った宿の主人がいたけど、どうなったのかしら。ぐぐってみると、「小藤やかた」という宿だったらしいが、ご主人が亡くなって廃業し、建物も取り壊されたらしい。うん十年前に来た時、宿の前を掃除している姿を見た記憶があります。

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 こちらが今回泊まったお部屋。民芸調ですね。ちょっと狭いですけど、今回はお安いプランなので仕方ありません

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 襖の模様がかわいいですね。

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 温泉は、男女別の露天風呂付き内湯、男女入れ替えの露天風呂、貸切風呂があります。
 上の写真は貸切風呂。宿の玄関を出て向かい側の建物にあります。開放感はあまりありませんが、この時期、雪が積もった山を眺めながらの入浴は格別です。
 お湯は無色透明で、お肌すべすべのアルカリ泉。もちろん源泉掛け流しです。

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 何種類かの温泉分析書が掲示しているのですが、どれも源泉名は「平の高房源泉」になっているので、時期の違いによるものか?
 pHは8.3の弱アルカリ、泉温は56.6度と高温、泉質は単純温泉です。

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 こちらは男女入替制の露天風呂です。
 内湯は、一人になるタイミングがなかったので、写真は撮れませんでした。

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 夕食は、囲炉裏のある広間でいただきます。

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 竹のヘラで焼いているのが、湯西川名物の「一升べら」というお料理。ウズラを骨ごと叩いて味噌で練ったものだそうで、これ一つでお酒を一升飲めるというのが名前の由来だそうです。
 丸いお餅は「ばんだい餅」。これまた湯西川名物です。もち米ではなく普通のお米を使っており、エゴマのタレが塗ってあります。

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 そのほかのお料理です。この他に炊き合わせ、お食事(日光こしひかり)とデザートが来ますが、写真は省略。お料理ちょっと少なめのプランですが、ぽん太とにゃん子は十分満足。

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 こちらが本日のメニューです。湯西川といえばサンショウウオかと思ってましたが、こんかいはありませんでした。

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 お酒は三種飲み比べをいただきました。

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 夕食後は、ホールで行われた語り部の会に参加しました。湯西川のお母さん(といってもぽん太よりは全然若い人)が、民話を三つほど語ってくれました。最初の話は寿限無みたいなので、次は「手打ちにしようか半殺しにしようか」という話。最後のは旅のお坊さんを泊めてあげた貧しい老夫婦は不思議なこなによって若返り、宿泊を断った金持ち夫婦は猿にされるという、桃太郎と花咲か爺さんを混ぜたようなお話でした。
 そのあと、かまくら祭りへの送迎もありましたが、ぽん太とにゃん子は寒いのでパス。

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 朝食も、小鉢がいろいろ並んで美味しかったです。

2019/02/20

【蕎麦】力強い香りと繊細な細打ち・石心(栃木県那須塩原市)

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 那須の蕎麦の有名店、石心(食べログ)についに行ってきました、というか、ついに入れました。
 これまで何回かチャレンジしたものの、大混雑だったり、売り切れだったり、休業日だったり……。今回は早めに行って順番を取って、時間をつぶしてから食べに来ようという作戦で、開店直前の11時20分ごろ行ったところ、なんと誰も待っておりません。ちょっと予定より早すぎて、まだお腹が十分空いていないけど、滅多にない機会なのでお店に入ることにしました。
 順番待ちの札の1番を取って車の中で待機。11時30の開店と同時にすんなりと入ることができました。なんでも冬の時期の那須は人が少ないんだそうな。

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 和風の店構え。暖簾には大きなお月様。那須の月か? ってことは、下のは海じゃなくて山なみ? よくわかりません。

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 店内はこんな感じでなかなかオシャレ。大きな窓から見える那須の樹林も美しいです。テーブルが4つぐらいしかありません。これじゃ混むわけだ。

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 普段はもりそばしか頼まないぽん太ですが、天ぷらも美味しいと聞いたので、「天ぷらもりそば」を頼んでみました。
 「これで蕎麦が不味かったら笑えるな」などと憎まれ口をききながら待っていると、出てきたお蕎麦は見るからに美味しそう。細い麺に、蕎麦のツブツブが浮き出て、キラキラと光ってます。これはお蕎麦のフェルメールや!
 しかも普通の麺つゆ以外に、辛味大根、とろろ、塩、柚子胡椒、唐辛子などがずらりと並べられます。

 もちろん一口目は何もつけずにいただきます。蕎麦の香りが口いっぱいに広がります。細打ちながらしっかりコシもあります。こりゃ〜うまい。素朴な濃い味わいと品の良さのバランスが程よく取れた絶品です。

 そのあと、さまざまな薬味でいただきましたが、ぽん太は辛味大根が一番好みにあったかな。?

 天ぷらもカラッと柔らかく揚がっていて、とても美味しかったです。

 蕎麦湯も、開店直後なので薄めとのことでしたが、そこそこどろっとしていて濃厚でした。出された薬味をすべていただきました。

 う〜ん、大満足。人気がある理由がわかりました。また来たいけど、なかなかチャンスがないかな?

2019/02/08

【歌舞伎】吉右衛門、魁春の「熊谷陣屋」に思わずうなる。2019年2月歌舞伎座夜の部

 吉右衛門と魁春の「熊谷陣屋」が素晴らしかったです。

 「ワンピース」もいいけど、やっぱりこういう舞台が本格的な歌舞伎で、芸の極みですね〜。吉右衛門の熊谷直実に匹敵する演技をできる役者は他にいないし、今後もしばらく現れないんじゃないでしょうか。
 吉右衛門の直実は何度も見ているけど、それでもやはり感心するやら感動するやらで、引き込まれて涙は出てくるし、歌舞伎を見ている悦びが沸き起こって来ます。

 魁春も、幕開けの、息子を思う気持ちと、陣中に来たことで直実に叱られないかという不安、直実を迎えるために階段の横に身を縮こまらせている様子など、一つひとつが素晴らしい。そこに直実が戻って来て、花道七三で数珠を握りしめて決まると、自然に客席から拍手が沸き起こります。妻を見つけて両手で袴をバーンと叩くところでは、息子を身代わりにしているのに妻が来てしまい、これから起こることへのやるせなさや、何で来てしまったのかという妻への憤りともいえない思いが詰まっています。
 その後もずっとこんな感じで、一つひとつの所作やセリフが身にしみますした。

 藤の方の雀右衛門が見劣りしない演技。義経の菊之助も立派でした。弥陀六は歌六が手慣れた名演。義経のお供に菊市郎、菊史郎。


 
 「當年祝春駒」は、曽我の対面で、十郎・五郎が春駒売りという設定の華やかな舞台。松緑の息子の左近が、五郎をキビキビとした動きで演じおりました。

 「名月八幡祭」は、初世尾上辰之助三十三回忌追善狂言と銘打って、松緑が縮屋新助を演じましたが、あんまり感心しませんでした。
 なんか松緑って、セリフが棒読みでうまくない。美代吉にだまされたとわかって泣き叫ぶところも、なんか昨年末の「あんまと泥棒」の中車の演技がうつっちゃったみたいで、泣かそうとしているのか笑わそうとしているのか、ぽん太よくわかんない。
 ラストの花道で担ぎ上げられての大笑いも、なんか深みがない。笑いの中に、ざまあみろやってやったという気持ちや、それでも美代吉を思う気持ち、だまされた自分をあざ笑う気持ち……などが感じられないといけないんじゃないでしょうか。
 仁左衛門の三次、玉三郎の美代吉という名コンビは流石にうまい。仁左衛門、こういうダメンズ役は(役も!)最高ですね〜。起こりまくってるところから一転「な〜んだ、そうだったのか〜悪かったな〜」とデレデレするあたり、男のぽん太から見ても可愛らしく、もうDVでもなんでもしてっ!て感じですね。
 玉三郎も、ちょっと滑舌がもっさりするところは相変わらずで、二日目ということでセリフも出にくそうなところもあちましたが、卓越した芸でカバーして、気っ風のいい深川芸者を見事に演じてました。
 梅玉の藤岡慶十郎は、梅玉の人柄そのものの鷹揚で優しいお殿様。


二月大歌舞伎

歌舞伎座
平成31年2月3日

公演情報|歌舞伎美人

夜の部

  一谷嫩軍記
一、熊谷陣屋(くまがいじんや)

    熊谷直実 吉右衛門
    藤の方 雀右衛門
    源義経 菊之助
    亀井六郎 歌昇
    片岡八郎 種之助
    伊勢三郎 菊市郎
    駿河次郎 菊史郎
    梶原平次景高 吉之丞
    堤軍次 又五郎
    白毫弥陀六 歌六
    相模 魁春

二、當年祝春駒(あたるとしいわうはるこま)

    工藤祐経 梅玉
    曽我五郎 左近
    大磯の虎 米吉
    化粧坂少将 梅丸
    曽我十郎 錦之助
    小林朝比奈 又五郎

  初世尾上辰之助三十三回忌追善狂言
  池田大伍 作
  池田弥三郎 演出
三、名月八幡祭(めいげつはちまんまつり)

    縮屋新助 松緑
    芸者美代吉 玉三郎
    魚惣 歌六
    船頭長吉 松江
    魚惣女房お竹 梅花
    美代吉母およし 歌女之丞
    藤岡慶十郎 梅玉
    船頭三次 仁左衛門

2019/02/07

【文楽】近松の作劇術に感動!「大経師昔暦」2019年2月国立劇場第2部

 「大経師昔暦」(だいきょうじむかしごよみ)は初めて観る演目で、もちろん歌舞伎でも観たことがありません。

 脚本は近松門左衛門。いや〜さすが近松!面白かったです。
 ストーリーは不義密通物の悲劇、といったらありきたりなんですけど、その不義密通が暗闇での人違いでやむなく起こったというところがアイディアですね。
 冒頭近く、女房おさんと女中の玉が雄猫たちの鳴き声に身を焦がす三毛猫をあやす場面で、おさんが「男を持つなら一人にするものだ。間男すれば磔になる。粟田口(の刑場)に行きたいのか」と三毛を諭します。ここで近松が、「後の我が身を魂が、さきに知らせて」と、これからの悲劇的な展開を予告しているあたりがウマイです。

 もっともこの話、1683年(天和3年)に処刑された密通事件が題材で、1686年(貞享3年)に発刊された井原西鶴の「好色五人女」にも取り上げられ、誰もが知っている話だったようです。この人形浄瑠璃は、1715年(正徳5年)、三十三回忌を当て込んで上演されましたが、不義密通は意図したものではなかったというところが、冒頭にも述べたように近松の新機軸でした。

 玉と入れ替わって寝ているおさんのところに、茂兵衛が夜這ってきて、屏風の陰の布団に入っていくあたりまできっちり演じられるのにもちとびっくり。江戸時代の日本人の性に対する大らかさが伺えます。

 その後、玉の叔父・赤松梅龍のお玉に対する愛、そしておさんの両親のおさんへの愛のしどころが泣かせます。
 別れの時、物干しの柱にすがるおさんと茂兵衛が夕日に照らさ、磔になったかのような影が映ります。そして戸から顔を出したお玉の影は、まるで獄門首。あっと驚くような演出です。

 奥丹波に隠れ住んでいたおさんが、旅の万歳師に見破られ、急展開していきます。「万歳師の知り合いはいない」というおさんに対し、「そりゃそうでしょうけど、こちらは良く覚えてます。奥様は、高いところで立派な布団を敷いて、腰元を大勢引き連れてご覧になってましたなあ」というあたりも、サスペンスドラマそのまま。

 赤松梅龍が、おさん・茂兵衛の罪を晴らそうと、討ち取った玉の首を持ってかけつけますが、代官から大事な証人の首を斬るとはなんと早まったことを、と咎められ、事態はどん底に。え?代官って悪者じゃないんだ、公正な裁きが行われてたの?と、ぽん太は少しびっくり。
 やりきれない雰囲気の中、二人は引き立てられていって幕となります。

 ただ原作では、刑場に黒谷の和尚が駆けつけ、二人を救い出すというハッピーエンドが付いているそうです。


 呂太夫の語る、おさん両親と、おさんとのやりとりが、心にしみ渡りました。
 こんかいは最前列の席だったので、人形の細かい動きや、人形遣いさんの表情が見れて、とても面白かったです(そのかわり字幕はぜんぜん見えず、あわててパンフレットを買い、床本集を見ながら観劇しました)。


 ちとわからなかったのは、お玉の伯父・赤松梅龍が、お玉を「本縄」に縛ったことで助右衛門を咎め、棒で打ち据えるシーン。確かにお玉ちゃんは、歌舞伎でよくあるようにくるっと一周しばるのではなく、縄が体の前で交差するような形でがっちり縛られてました。捕縄術 - Wikpediaを見ると、「本縄は主に犯罪者の護送・謁見の際に用いられ、身分や職業、性別、用途によってそれぞれ異なる縛り方が用意されている」と書いてありますが、本縄をかける権利や、状況なども、いろいろと決まりごとがあったのかもしれません。

平成31年2月文楽公演
東京・国立劇場

2019年2月6日観劇

2月文楽公演|国立劇場
特設サイト

第二部

「大経師昔暦(だいきょうじむかしごよみ)」
  近松門左衛門 作

大経師内の段
  中  希太夫
     清丈
  奥  文字久太夫
     藤蔵
岡崎村梅龍内の段
  中  睦太夫
     友之助
  奥  呂太夫
     團七
奥丹波隠れ家の段
  茂兵衛、梅龍  三輪太夫
  おさん、助右衛門  南都太夫
  萬歳、役人  咲寿太夫
     清友

  女房おさん  和生
  下女玉  簑紫郎
  手代助右衛門  勘市
  大経師以春  玉勢
  おさん母  簑一郎
  手代茂兵衛  玉志
  下男七介  勘次郎
  下男伝吉  玉彦
  赤松梅龍  玉也
  岐阜屋道順  勘壽
  萬歳  玉誉
  役人  亀次

2019/02/04

【仏像】伊豆に国重文や平安仏がずらり・かんなみ仏の里美術館(静岡県函南町)付:桑原薬師堂、桑原三十三所観音霊場

 箱根のちょっと南に、平安仏や、重要文化財の仏像がある美術館があるのを知ってますか。ぽん太は以前から気になっていたのですが、こんかいご縁があって訪れることができました。
 場所は、熱海と三島の間にある静岡県函南町。ぽん太は以前、地表に現れた丹那断層を見に訪れたことがあります(【伊豆の不思議スポット】丹那断層公園(国指定天然記念物))。

【博物館名】かんなみ仏の里美術館
【公式サイト】・http://www.kannami-museum.jp 【住所】静岡県田方郡函南町桑原89番地の1
【拝観日】2019年1月24日
【拝観】毎週火曜日休館(※火曜日が休日の場合は、直後の平日)、拝観料300円
【仏像】 ◎国指定重要文化財 ●県指定 ◯町指定
◎阿弥陀如来及両脇侍像 鎌倉時代 實慶作
   中尊 檜 割矧造  像高89.1cm
●薬師如来座像 割矧造 像高110.0cm 平安中期
●十二神将立像 檜 割矧造 像高91.5cm〜105.4cm 平安時代/鎌倉時代/南北朝〜室町/江戸時代
 菩薩立像(?) 江戸時代
 菩薩立像(?) 江戸時代
◯不動明王像 木造 室町以降
●地蔵菩薩像 木造 平安時代
●聖観音像 木造 平安時代
●毘沙門天像 木造 平安時代
◯経巻上人像 木造 江戸時代以降
◯空海上人像 木造 江戸時代以降
【写真】公式サイトの中にあります。 ・所蔵品のご紹介|かんなみ仏の里美術館

Img_1708  山間の小さな町のなかに、モダンな建物が見えてきます。伸びやかで雅な感じがあり、いい建物です。写真には写っておりませんが、お堂のような四角錐の屋根がついてます。
 美術館の公式サイトに建物の紹介ページがあるのですが、設計者は書いてありません。ググってみると、「栗生明 + 栗生総合計画事務所」の設計のようです(かんなみ仏の里美術館|栗生明 + 栗生総合計画事務所)。ぽん太は初めて聞いた名前ですが、Wikipediaを見ると有名な人みたいですね。平等院鳳翔館は、ぽん太も行ったことがあります。
 こちらの真泉洋介氏のプラスマイズミアーキテクトのサイトに、栗生総合計画事務所在籍時担当物件としてかんなみ仏の里美術館が出ております。実質的な設計担当は真泉氏だったのかもしれません。
 竣工は2011年とのこと。けっこう新しいんですね。

 受付でチケットを買うと、無料でボランティア・ガイドさんが解説してくれるというので、よろこんでお願いいたしました。仏様や仏像についての基本知識はもちろんのこと、展示されている仏像の来歴や、この美術館が造られた経緯など、細かく分かりやすく説明していただきました。とっても参考になりました。ありがとうございます。足の手術、うまくいくように祈っております。

 展示室はガラスを多用したモダンな空間で、暗闇の中に、スポットライトに照らされた仏さまが浮かび上がるような感じ。

 中央に安置された平安時代の薬師如来さまの存在感がはんぱないです。回り込んで360度から見ることができます。
 像高1mちょっとでそんなに大きくははないのですが、顔から上体にかけての前後の厚みがあって、重厚感があります。お顔は丸顔でふくよか、肉髻も大きいです。衣紋の流れはけっこう様式的ですが、翻波式はみられません。でも彫りは全体に浅めな感じもあり、定朝様の影響が少し入り始めた頃の仏様さまのような気がします。素晴らしい仏さまだと思われます。

 薬師如来様の背後の壁に、十二神将が安置されております。像高1m前後と大きく、12体揃っているのが立派です。ただし造られた時代は、鎌倉、南北朝〜室町、江戸時代とまちまちです。どれがどうだか、メモしておかなかったらわからなくなってしまいましたが、やはり鎌倉時代のものが表情やポーズが躍動的で素晴らしく、時代が下がるにつれてポーズがぎこちなくなり、表情もマンガ的になっていきます。なぜ仏像の表現が鎌倉をピークに衰えていったのか、ぽん太はいまだにわかりません。

 そして国重文の鎌倉時代の阿弥陀三尊像。これも素晴らしいです。
 一見して慶派独特のはつらつさがあり、肉付きの良さ、空間感覚も見事です。しかし運慶のような躍動感や、快慶のような荘厳さはなく、柔らかく曲線的な印象です。お顔はなかなかの美形です。口元が引き締まっておりますが、威圧感はなく、普通の人のような穏やかな表情です。
 全体に金箔はほとんど剥げて、黒い漆の下地になっているのですが、観音菩薩の左手の肘から先だけ、金色に光っております。なんでも、壊れてしまった仏様の部分ぶぶんが保存されていたのですが、間違って違う仏様に取り付けられていたりしたものもあり、観音様の左手は最近正しく付け直されたため、色合いが異なるんだそうです。
 阿弥陀如来の墨書、両脇侍の朱書きにより、作者は運慶の兄弟弟子にあたる實慶(じっけい)であることがわかっております。
 實慶の名は、国宝の「運慶願経」のなかに記されておりましたが、彼が作った仏像は長い間みつかりませんでした。ところが昭和59年(1984)に修禅寺の大日如来の解体修理が行われた際、實慶という名前の記された墨書が見つかり、大騒ぎになりました。そしてさらに、この阿弥陀如来の中からも實慶の名前が出て来て、再びびっくり仰天となったそうです。
 この署名の写真が美術館に展示されているのですが、「運慶じゃないの?運慶にしちゃえ!」ってな感じで、「實」の字にしんにょうが付け加えられているのが面白いです。

 江戸時代の二躯の菩薩立像(観音と勢至か?)がありましたが、アフリカのお面のようなお顔で、ちと残念でした。
 室町以降に造られたの不動明王も、痩せこけていて、ポーズも固く、いまいちな印象。
 平安時代の聖観音と地蔵菩薩、毘沙門天は、素朴な地方仏で悪くありません。
 江戸時代の空海上人像と経巻上人像もありました。

 なかなか素晴らしい仏さまでしたが、ではなんで現在この地に、このような立派な仏さまたちがいらっしゃるのか、という疑問が湧いて来ます。
 ガイドさんの説明では、ここ桑原は箱根山から連なる尾根のひとつの傍にあり、箱根神社との繋がりがあったのではないか、ということでした。
 ぽん太の考えでは、現在も近くに国道1号線が走っており、交通の要所からちょっと離れた山あいという立地が関係しているようにも思えます。同じく東海道の近くにある、滋賀県甲賀の櫟野寺と、立地が似ている気がします。
 建久二年(1191)に作られた『筥根山縁起并序』という巻物があり、箱根山開創以来の歴史が記されております。原本は失われてしまいましたが、室町時代の写本があり、そのひとつは箱根神社の宝物館に展示されています。ここには、現在美術館がある桑原地区に、七堂伽藍を備えた小筥根山新光寺という大寺院が、弘仁8年(817)に建立されたと記されているそうです。この記述が事実かどうかはわかりませんが、薬師如来像はこのお寺の御本尊だったと言われているそうです。
 また、鎌倉時代の歴史書『吾妻鏡』には、石橋山合戦で戦死した北条宗時(北条時政の嫡男)の墳墓堂桑原にあったという記載があり、阿弥陀三尊は、このとき時政が造らせたものだと考えられているそうです。
 地元の人たちが大切に守って来た仏さまたちですが、明治維新の廃仏毀釈のおりには、あちこちに分散して保管せざる終えませんでした。そして明治30年代後半、地元の有志が資金を出し合って、美術館から5分ほどのところに桑原薬師堂を建設し、散りぢりになっていた仏さまたちを一堂に集めました。
 そして平成4年(1992)に阿弥陀三尊像が重文に指定されたこともあり、平成20年(2008)には薬師堂の仏像24躯が函南町に寄贈され、美術館が平成23年(2011)にが作られました。
 仏さまたちを守って来た地元の人たちの信仰心と熱意は素晴らしいですね。だからこの美術館の名前は、かんなみ仏の美術館ではなく、仏の「里」美術館なのでしょう。
 ただ、信仰を集めて来た仏さまたちが、美術品として展示されているのは、ちょっと残念な気もします。

Img_1720  こちらが桑原薬師堂です。立派なお堂ですね。

Img_1723  背後の山の斜面には、「桑原三十三所観音霊場」があり、10分ほどの順路に石仏が並んでおります。
 約200年前(文化三年・1806年)に作られたものだそうで、西国三十三所観音巡りを実際にすると日数がかかり、農作業に影響が出るので、有志がお金を出してこのミニ霊場を作ったんだそうです。
 いくつか崩れているものもありますが、全体に保存がいいです。
 山頂には、西国三十三所には入っていない善光寺如来、勢至菩薩、伊豆七不思議の一つを刻んだ手石如来があり、必見です。でも写真は撮り忘れました。

2019/02/02

【展覧会】「ワイングラス」と「取り持ち女」を初めて見ました「フェルメール展」東京の森美術館

 フェルメールの現存35作品のうち、9点が来日するというフェルメール展。残念ながら展示替えがあり、「赤い帽子の娘」は見れませんでした。もっともこの作品は、フェルメールの大家・小林頼子女史によれば偽物とのこと。そんなら、まあいいか。
 しかし、近年の日本でのフェルメール人気はものすごく、今回は初めて時間指定のチケットが導入されました。おかげで会場は超混雑まではいかず、大混雑ですみました。
 ただ、無料で借りられる音声ガイドは、たいして内容がありませんでした。

 で、こんかい観れた8作品のうち、ぽん太が初めてだったのは、「ワイングラス」と「取り持ち女」の2点です。

 「取り持ち女」は1656年という制作年がわかっており、フェルメールが24歳の時に描いた初期の作品。これまで宗教画や物語画を描いていたフェルメールが、風俗画を描き始めた頃のものだそうです。画面右下4分の1を占める布の色彩はどぎつく、人物の表情も下卑ていて、おっぱい鷲掴み。観客の「こんなの、僕たちが好きなフェルメールじゃない!」という声が聞こえてくる感じで、この絵だけあんまり混んでませんでした。

 「ワイングラス」は、1661年から1662年頃の作品というので、29から30歳頃。初期から中期への過渡期の作品になるのだそうです。構図はおなじみのフェルメール・スタイルで、向かって左に窓があって光が差し込み、テーブルがあり、人がいて、奥の壁には絵画、床にはフェルメール・タイル
 でも、リュートや、ステンドグラスの手綱を持った女性など、ちょっと小道具が多くて雑多な気がします。また色彩も、後年の淡さがなく鮮やかで、ちょっとどぎつい印象があります。男性が女性にワインを勧めるという題材も、「僕たちが好きなフェルメールとちょっとだけ違う」というところか。後年は隠す工夫をした、歪みが目立つ右奥のタイルも、まだあらわですね。

 そのほか良かったのは、「牛乳を注ぐ女」と「真珠の首飾りの女」です。
 「牛乳を注ぐ女」は、パンやミルクの容器の上の点々が光り輝いてますよね。絵の具じゃなくって、石英の破片とかが散りばめられているんじゃないかと思うほどです。また「真珠の首飾りの女」は、女性にふりそそぐ淡い光、所々に置かれたホワイト、夢見るような女性の表情が素敵でした。
 

 大阪展では「恋文」が出品されるようですが、これもぽん太は観たことがありません。大阪まで観に行こうかな?

フェルメール展

上野の森美術館
2018年10月5日〜2019年2月3日
(2019年1月17日鑑賞)

公式サイト

【フェルメールの出品作品】
(2019.1.17現在)

・牛乳を注ぐ女
The Milkmaid
1658-1660年頃 | 油彩・カンヴァス | 高45.5×幅41cm
アムステルダム国立美術館

・マルタとマリアの家のキリスト
Christ in the House of Martha and Mary
1654-1655年頃 | 油彩・カンヴァス | 高158.5×幅141.5cm
スコットランド・ナショナル・ギャラリー

・手紙を書く婦人と召使い
Woman Writing a Letter, with Her Maid
1670-1671年頃 | 油彩・カンヴァス | 高71.1×幅60.5cm
アイルランド・ナショナル・ギャラリー

・ワイングラス(日本初公開、ぽん太初見)
The Wine Glass
1661‐1662年頃 | 油彩・カンヴァス | 高67.7×幅79.6cm
ベルリン国立美術館

・手紙を書く女
A Lady Writing
1665年頃 | 油彩・カンヴァス | 高45×幅39.9 cm
ワシントン・ナショナル・ギャラリー

・リュートを調弦する女
Woman with a Lute
1662-1663年頃 | 油彩・カンヴァス | 高51.4×幅45.7 cm
メトロポリタン美術館

・真珠の首飾りの女
Woman with a Pearl Necklace
1662-1665年頃 | 油彩・カンヴァス | 高56.1×幅47.4 cm
ベルリン国立美術館

・取り持ち女(ぽん太初見)
The Procuress
1656年 | 油彩・カンヴァス | 高143×幅130cm
ドレスデン国立古典絵画館

2019/02/01

【オペラ】聖女のごときリエネ・キンチャのエリーザベト「タンホイザー」新国立劇場

 2007年演出の再演となる新国立劇場の「タンホイザー」。このオペラ、ぽん太も3回目の鑑賞となり、だいぶ聴きどころがわかってきて、楽しめるようになってきました。

 けっこう感動して、ラストは涙が溢れてきました。何が良かったかって、やっぱり、「どうしょうもない男が、女の愛で救われる」という、よくあるけど普遍的なストーリーかな? 
 タンホイザーは、ヴェーヌスの愛欲に溺れたかと思うと、それも飽きて現実に戻りたいと言い出し、歌合戦ではエリーザベトにさかんに投げキッスをし、同僚を傲慢にあざけり笑ったりし、皆に非難されるとュンとなり、エリーザベトに救われてローマへの苦行の旅を決意するものの、法王の許しを得られずに、またヴェーヌスの元に戻ろうとしたりします。かなりひどいヤツです。「タンホイザー」はまさに「悪人正機」の物語ですね。
 とはいえ、最後に杖に新緑が芽吹いて、タンホイザーが救われると、なんだか涙が流れてくる。チコちゃんによると、年とって、ぽん太の脳のブレーキが緩んだからだそうです。

 ヴァグナーはこういう人物が好きだったんでしょうか。「指環」のジークフリートも、悪人とはいえ自分を育ててくれたミーメに、ひどい仕打ちをしたりします。


 タンホイザー役は、新国立で何回か歌っているトルステン・ケール。いつもの4階席だったせいか、最初、倍音ばっかり響いてきてちょっと閉口しましたが、だんだんと地声が聞こえるようになりました。「ローマ語り」はなかなか良かったです。
 エリーザベトのリエネ・キンチャは、第2幕冒頭の「殿堂のアリア」では、恋に胸を焦がす女性の喜びを生き生きと歌い上げましたが、ちょっと声が定まりませんでした。しかし第2幕最後の毅然とした歌声は心に響き、第3幕の「エリーザベトの祈り」は心に沁みました。彼女の風貌と、真っ白な衣装があいまって、まさに絵画に描かれた聖女のようでした。
 ヴェーヌスのアレクサンドラ・ペーターザマーは、グレートマザー風。迫力がありました。
 ヴォルフラムのローマン・トレーケルは、誠実さが滲み出ており、「夕星の歌」は表情豊かな歌声で美しかったです。

 アッシャー・フィッシュ指揮の東京交響楽団の演奏は、4階席だったせいか、初日だったせいなのか、序曲で音が定まらず、迫力もなくて心配しましたが、だんだんと暖まってきたようでした。ホルンがちょっと不安定だったのが残念。
 新国立劇場合唱団はあいかわらず素晴らしく、第1幕のセイレーンの呼び声も幻想的でしたし、「大行進曲」も迫力がありました。
 新国立劇場バレエ団のみなさんもお疲れ様でした!でも、振り付けと、全身タイツみたいな衣装とメイクはいまいちだったかな。あんまりエロティックな感じがしませんでした。


 ぜんぜん話は飛びますが、ぽん太は今年の年末年始はイタリアに行っていたのですが、ローマのバチカン宮殿前のお土産やさんで、同じグループの人が「音楽の神様のメダルを買いたい」とガイドさんに相談したところ、「神様はひとりだけで、音楽の神様というのはいません」と言われてました。ローマ時代の神々の像が至る所にあるローマで、「神様はひとりだけ」というガイドさんの言葉は、キリスト教的にはその通りなんですけど、ちょっとびっくりしました。
 でもドイツとかではどうなんですかね。ヴェーヌスだって愛の女神だし、「指環」にもいろいろ神々が出てきますよね。ドイツではキリスト教的な一神論と、古くからの神々が、共存してるんでしょうか。無知なぽん太にはちとわかりません。

オペラ「タンホイザー」/リヒャルト・ワーグナー
Tannhäuser / Richard WAGNER

新国立劇場オペラパレス
2019年1月27日

公演情報|新国立劇場

指揮 アッシャー・フィッシュ
演出 ハンス=ペーター・レーマン
美術・衣裳 オラフ・ツォンベック
照明 立田雄士
振付 メメット・バルカン

領主ヘルマン 妻屋秀和
タンホイザー トルステン・ケール
ヴォルフラム ローマン・トレーケル
ヴァルター 鈴木 准
ビーテロルフ 萩原 潤
ハインリヒ 与儀 巧
ラインマル 大塚博章
エリーザベト リエネ・キンチャ
ヴェーヌス アレクサンドラ・ペーターザマー
牧童 吉原圭子

合唱 新国立劇場合唱団
バレエ 新国立劇場バレエ団
管弦楽 東京交響楽団

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