【文楽】大河ドラマを1日で見た感じ 「妹背山女庭訓」2019年5月国立劇場
5月の国立劇場文楽公演は、「妹背山婦女庭訓」の通し。これまで部分ぶぶんは見たことありますが、妹山背山の話しと、お三輪ちゃんの話がどう関係しているのかがさっぱりわからないぽん太とにゃん子、通しで見れるのはうれしいです。
こちらが特設サイト、そしてこちらが国立劇場のサイトです。
通しで見ると、本筋に枝葉の話が絡みながら、クライマックスへと進んでいく流れがよくわかりますね。江戸時代の人は、このような複雑な構造を持つドラマをよく作ったものです。歌舞伎でも、歌舞伎座などは名場面集になってしまっていて、それはそれで面白いけど、たまには通しをやってほしいもの。最近通しが減った気がします。ぜひ国立劇場の方で頑張って欲しいです。
第一部は若手中心。でも、これまで知らなかったストーリーが演じられます。蘇我蝦夷子が藤原鎌足を追い落とそうとする発端。雛鳥と久我之助の出会いは、腰元が気を利かせて仲を取り持つのが面白く、吹き矢の筒をつかって内緒話で思いを伝え合うというアイディアが秀逸です。後半には登場しない采女の局も絡んできます。
前半は、蘇我蝦夷子が謀反を企てる悪者なのですが、息子の入鹿は父の悪行を嫌って出家をしています。さらに謀反の証拠の連判状を帝に差し出し、蝦夷子を切腹に追い込みます。あれれ、入鹿って善人に描かれてるのかな〜などと思ったらさにあらず。器量の小さい父のやり方は生ぬるいと考え、父を殺して自分が帝の地位につこうという企みだったのです。う〜ん、やっぱり入鹿は悪いやつですね〜〜。
二段目は、天智帝を匿う猟師芝六の悲劇。これは泣けます。
咲太夫が芝六忠義を語りました。よいのですが、ちょっとキレがないです。太宰館の段の靖太夫は、顔を真っ赤にして熱演。倒れるんじゃないかと心配でした。人形遣いも若手中心でしたが、最後は玉男、勘十郎、和生が登場。さすがに舞台が引き締まりました。
第二部は、歌舞伎では見たことがある「妹背山の段」から。歌舞伎では左右に二つの花道がある「両花道」の演出ですが、文楽では左右に床があって、掛け合いになるんですね。蓑助の遣う雛鳥ちゃんがとっても可愛らしかったです。歌舞伎では高齢男性が演じるのを脳内変換しながら見るのですが、やはり人形の方が脳内変換しやすいです。それから歌舞伎では、大判事清澄が書を読んでる横で、白装束の久我之助が腹を切り、清澄が「早まったな〜」とびっくり仰天します。隣で腹を切ってるんだから気づけよ〜とツッコミたくなりましたが、文楽ではそういう変な感じはありませんでした。この段、泣けました。千歳太夫、声はでかいが、柔らかさがなくてカクカクしすぎて変な感じ。妹山の呂勢太夫と織太夫は、まだまだ楷書。
四段目は、いつもの通りひたすらお三輪ちゃんが可哀想。現代だったら完全にセクハラのパワハラですな。そのお三輪ちゃんは勘十郎が使いましたが、元気というかシャキシャキしてるというか。橘姫が求馬を訪ねてきたのを見て、腹を立てたお三輪ちゃんが求馬に対し、「何なのよこの女。求馬さんには私という許嫁がいるんだから、ちゃんと言いなさいよ」という感じで迫るあたりは、ちょっと大げさに滑稽に演じてました。
入鹿を討つ場面と、五段目は省略。こんかいの上演だけで、10時半に始まって終演が21時ですから、省略は仕方ないでしょう。
通し狂言「妹背山婦女庭訓(いもせやまおんなていきん)」
国立劇場
2019年5月文楽公演
【第一部】
2019年5月23日観劇
大序 大内の段
硯太夫
亘太夫
小住太夫
咲寿太夫
清允
燕二郎
錦吾
清公
小松原の段
久我之助 芳穂太夫
雛鳥 咲寿太夫
小菊 南都太夫
桔梗 文字栄太夫
玄蕃 津國太夫
采女 小住太夫
團吾
蝦夷館の段
口 亘太夫
清公
奥 三輪太夫
清友
二段目 猿沢池の段
希太夫
友之助
鹿殺しの段
硯太夫
錦吾
掛乞の段
睦太夫
寛太郎
万歳の段
織太夫
清志郎
ツレ 燕二郎
芝六忠義の段
切 咲太夫
燕三
三段目 太宰館の段
靖太夫
錦糸
人形役割
蘇我蝦夷子 玉佳
中納言行主 清五郎
大判事清澄(大内)玉勢
宮越玄蕃 勘市
皇室定高(大内)玉誉
采女 紋臣
藤原鎌足(大内)玉翔
荒巻弥藤次 文哉
久我之助 玉助
雛鳥 簑紫郎
腰元小菊 紋吉
腰元桔梗 玉誉
めどの方 文昇
大判事清澄(蝦夷子館より)玉男
蘇我入鹿 文司
天智帝 勘彌
藤原淡海 清十郎
禁廷の使 玉彦
猟師芝六 玉也
倅三作 勘次郎
女房お雉 簑二郎
大納言兼秋 玉輝
来屋新右衛門 玉勢
倅杉松 和馬
鹿役人 玉路
興福寺衆徒 亀次
藤原鎌足(芝六忠義)勘十郎
後室定高(太宰館)和生
注進 玉翔
青侍 大ぜい
家来 大ぜい
近習 大ぜい
腰元 大ぜい
官女 大ぜい
村の歩き 大ぜい
捕手 大ぜい
【第二部】
2019年5月12日観劇
三段目 妹山背山の段
背山 大判事 千歳太夫
久我之助 竹本文字久太夫改め藤太夫
前 藤蔵
後 富助
妹山 定高 呂勢太夫
雛鳥 織太夫
前 清介
後 清治
琴 清公
四段目 杉酒屋の段
津駒太夫
宗助
道行恋苧環(こいのおだまき)
お三輪 芳穂太夫
求馬 靖太夫
橘姫 希太夫
咲寿太夫
碩太夫
勝平
清丈
寛太郎
錦吾
燕二郎
鱶七上使の段
藤太夫
清来馗
姫戻りの段
小住太夫
友之助
同 金殿の段
希太夫
團七
人形役割
雛鳥(前) 簔紫郎
腰元小菊 紋吉
腰元桔梗 玉誉
久我之助 玉助
大判事清澄 玉男
後室定高 和男
雛鳥(後) 簑助
丁稚子太郎 紋秀
橘姫 一輔
求馬実は藤原淡海 清十郎
お三輪 勘十郎
お三輪母 簑一郎
宮越玄蕃 勘市
荒巻弥藤次 文哉
蘇我入鹿 文司
両氏鮒七実は金輪五郎 玉志
豆腐の御用 勘壽
金殿の官女 勘介
金殿の官女 玉路
金殿の官女 簑之
金殿の官女 玉延
官女 大ぜい
花四天 大ぜい
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