聖林寺の十一面観音様を拝んだ後、同じ東京国立博物館で開催されていた「聖徳太子と法隆寺」展に行きました。
さすが人気の聖徳太子と法隆寺、ちょっと密というか、ソーシャルディスタンスを考えないで寄ってくる人が多くて困りました。
でも、展示されている仏さまは素晴らしい。何度も行っている法隆寺のいったいどこに隠されていたのかと思いました。
【タイトル】特別展「聖徳太子と法隆寺」
【公式サイト】
【会場】東京国立博物館
【訪問日】2021年9月2日(会期:2021年7月13日〜9月5日)
【入場料】前売日時指定券:2,100円、当日券:2,200円
【出典目録】
出典目録pdf
【仏像】⦿国宝 ◎重要文化財
19 ◎如来および両脇侍像 朝鮮半島・三国時代または飛鳥時代(6〜7世紀) 銅像、鍍金 東京国立博物館(法隆寺献納宝物) お姿
21 ◎菩薩立像 飛鳥時代(7世紀) 銅像、鍍金 奈良・法隆寺 (初) お姿
24 ◎菩薩半跏像 飛鳥時代(7世紀) 銅像、鍍金 東京国立博物館(法隆寺献納宝物) お姿
25
◎釈迦如来および脇侍像 飛鳥時代 推古天皇36年(628) 銅造、鍍金 奈良・法隆寺 (初) お姿
26
◎菩薩立像 飛鳥時代(7世紀) 銅造 奈良・法起寺 (初) お姿
27 如来立像 飛鳥時代(7世紀) 木造、漆箔 奈良・法起寺 (初) お姿
35
◎聖僧坐像(伝観勒僧正) 平安時代(10世紀) 木造、彩色 奈良・法隆寺 (初) お姿
79
⦿行信僧都坐像 奈良時代(8世紀) 脱活乾漆造、彩色 奈良・法隆寺 お姿
81 ◎阿弥陀如来および両脇侍像 奈良時代(8世紀) 木心脱乾漆、漆箔 奈良・法隆寺 (初)
94 聖徳太子立像(二歳像) 鎌倉時代(13〜14世紀) 木造、彩色 奈良・法隆寺 (初)
135 聖徳太子立像(二歳像) 鎌倉時代 徳治2年(1307) 木造、彩色 奈良・法隆寺 (初)
お姿
136 聖徳太子立像(二歳像) 鎌倉時代(14世紀) 木造、彩色 奈良・法起寺 (初)
お姿137
◎聖徳太子立像(孝養像) 鎌倉時代(13世紀) 木造、彩色・截金 奈良・成福寺 (初) お姿
149 ⦿聖徳太子および侍者像 平安時代 保安2年(1121) 木造、彩色・截金 奈良・法隆寺 (初) お姿
151
◎如意輪観音菩薩坐像 中国・唐(8〜9世紀) 木造、素地・截金 奈良・法隆寺 (初) お姿
152
◎如意輪観音菩薩半跏像 平安時代(11〜12世紀) 木造、漆箔 奈良・法隆寺 (初) お姿
170-1
⦿薬師如来坐像 飛鳥時代(7世紀) 銅造、鍍金 奈良・法隆寺 (360度は初) お姿
171 ◎観音菩薩立像(伝金堂薬師如来像脇侍) 2躯 飛鳥時代(7世紀) 銅造、鍍金 奈良・法隆寺 (初)
172 ◎観音菩薩立像 飛鳥時代(7世紀) 銅造、鍍金 奈良・法隆寺 (初)
175 ⦿四天王立像 広目天 飛鳥時代(7世紀) 木造、彩色 奈良・法隆寺 お姿
176 ⦿四天王立像 多聞天 飛鳥時代(7世紀) 木造、彩色 奈良・法隆寺 お姿
181 ⦿阿弥陀如来および両脇侍像(伝橘夫人念持仏厨子) 飛鳥時代(7〜8世紀) 銅造、鋳造・鍍金 奈良・法隆寺 お姿
182 ◎観音菩薩立像(伝六観音のうち) 飛鳥時代(7世紀) 木造、漆箔 奈良・法隆寺 お姿
183 ◎勢至菩薩立像(伝六観音のうち) 飛鳥時代(7世紀) 木造、漆箔 奈良・法隆寺 お姿
184 ◎文殊菩薩立像(伝六観音のうち) 飛鳥時代(7世紀) 木造、漆箔 奈良・法隆寺 お姿
185 ◎普賢菩薩立像(伝六観音のうち) 飛鳥時代(7世紀) 木造、漆箔 奈良・法隆寺 お姿
186 ◎日光菩薩立像(伝六観音のうち) 飛鳥時代(7世紀) 木造、漆箔 奈良・法隆寺 お姿
187 ◎月光菩薩立像(伝六観音のうち) 飛鳥時代(7世紀) 木造、漆箔 奈良・法隆寺 お姿
182 薬師如来坐像 飛鳥時代(7世紀) 木造、漆箔 三重・見徳寺 (初) お姿
奈良時代の崇高で気品があり、ちょっと厳しさも感じられる聖林寺の仏様に続けて、法隆寺の飛鳥時代の仏さまにお会いすると、ほんわかとお優しく、装飾的で可愛らしいお姿に、思わず微笑んでしまいます。
如来および両脇侍像(19)は、大きな光背の前に三尊が並んだ形式。渡来仏とはいえ、よくあるお腹ポッコリでデフォルメされたお姿ではなく、ポロポーションが整っております。この仏様は、法隆寺献納宝物です。東京国立博物館を何度も訪れている人も、門を入って左手にある林の中の小道の先に、法隆寺宝物館という展示館があるのを知らない人が多いのでは? 設計はMoMAニューヨーク近代美術館や葛西臨海水族園で知られる谷口吉生。四角い池の向こうにシンプルな箱が置かれたような、素敵なデザインです。で、このなかに展示されているのが法隆寺献納宝物と呼ばれる300件余りの宝物です。なんでも1878年(明治11年)に、法隆寺から皇室に献上されたものが、第二次対戦後に国有となり、国立博物館に所蔵されたんだそうです。特に約60躯の金銅仏が、広いスペースに一つひとつガラスケースに納められてずらりと並んでいるのは壮観です。東博に行った際は、ぜひお立ち寄り下さい。
菩薩立像(21)は、微笑みを浮かべたお優しいお顔と、歯車のようなシルエットの装飾的な天衣が特徴。金銅の釈迦三尊像の脇侍と似ていて、止利派の作品と考えられているそうです。
菩薩半跏像(24)も法隆寺献納宝物の一品。半跏像は右手を頬に添えているのが普通ですが、この像は施無畏印のように手のひらをこちらに向けてます。脚を組んで「ヨッ!」と出迎えてくれたおじさんみたいです。
釈迦如来および脇侍像(25)は小さな一光三尊像ですが、向かって右の脇侍が欠けてます。止利派の作と考えられており、銘文から628年に蘇我馬子のために作られたとされてます。
菩薩立像(26)と如来立像(27)は法起寺の仏様。法起寺(ほうきじ)は法隆寺から徒歩20分ほど離れたところにありますが、聖徳太子が法華経を講義したという岡本宮に由来するお寺だそうです。菩薩立像は小さな銅造ですが、火災で焼かれた跡が痛々しい。如来立像は像高約1mの木造の仏さま。顔面などが後補であると指摘されてきましたが、最近のCTスキャンによる調査で、後頭部や胴体前面、左手などが製作当初の部材であることが証明されました。飛鳥時代の大きな木造の仏さまは珍しいですね。左手が体に伏せられているのもあまり見ません。歴史的に貴重な仏像です。
聖僧坐像(35)は平安時代の作。法隆寺西院伽藍の回廊の内側にある経蔵に安置されています。額に何本も刻まれた皺が印象的です。7世紀初頭に百済から来日し、仏教以外に天文、暦本、陰陽道などを伝えた僧観勒の像と伝えられています。
ついに出ました。国宝です。行信僧都坐像(79)は、鑑真和上像とともに奈良時代の肖像彫刻の傑作だそうで、いかにも押しの強そうなおっさんです。聖徳太子が亡くなって100年、奈良時代に行信が斑鳩を訪れた時、荒廃すること著しかったそうです。そこで行信は聖徳太子を供養するために、夢殿を含む東院を建立したのだそうです。ということでこの像は、夢殿の救世観音の隣に安置されています。
阿弥陀如来および両脇侍像(81)は、夢殿の奥にある伝法堂に安置されている。なんでも伝法堂には3組の阿弥陀三尊があり、他にも多くの仏像が隠されているらしい。たまに秘仏公開があるようですが、ぜひ参拝したいものです。
94, 135, 136, 137は、聖徳太子の二歳像と孝養像。二歳像は、太子が二歳の時に東に向かって手を合わせて「南無仏」と唱えた伝説に由来しています。さらにこの時、合わせた太子の手の間から仏舎利がこぼれ落ちたといわれてますが、136の法起寺の像をCTスキャンで調べたところ、両手の間に空洞があり、鉱物が納められていることがわかったそうです。会場には、そのこぼれ落ちた仏舎利として法隆寺に伝えられたものが展示されておりますが、太子信仰の中心となる遺物で、普段は決して見ることができないものだそうです。
また137の孝養像の内部に菩薩半跏像が納められていることがわかり、太子を菩薩の化身とみる信仰が伺えるそうです。
国宝の聖徳太子および侍者像(149)は、法隆寺西院伽藍の聖霊院に安置されてますが、普段は非公開の秘仏です。拝観できるのは3月22日のお会式(御命日法要)の時だけですが、ネットの情報では供物が高く積み上げられていてお姿が見えないとの噂も……。今回太子が自ら東京に出向いてきてくれたのは、有り難い限りです。太子様は、写実的で威厳に満ちたお姿ですが、従えている4人の従者は、日本昔話のようなユーモラスな姿で表されています。それでいて、とても高い技術で精緻に彫られています。なんでこんな表現になったのかぽん太にはちっともわかりません。
続いて如意輪観音菩薩様が2躯。151は中国・唐の坐像で、ちょっと外国っぽいというか、バタくさいです。
152の半跏像は、展覧会の入り口に展示されているもの。平安時代の「模刻」なのですが、その元になっているのが太子が創建した四天王寺の御本尊さまで、元の方はもう失われてしまっています。とても優美なお姿で、お腹ぷっくりが珍しいですね。
薬師如来坐像(170-1)は、金堂内陣東の間に安置された名品。こんかいは360度から拝めるのが有り難く、光背の裏側に書かれた、法隆寺創建のいわれが書かれた銘文も見ることができました。これは貴重です。
観音菩薩立像(171)は、金銅薬師如来像の両脇侍の日光・月光菩薩として安置されておりましたが、作風が異なるのと、頭上に阿弥陀如来の化仏があることから、観音菩薩と考えられております。
金堂配置の国宝の四天王からは、広目天(175)と多聞天(176)が来てくれました。後の四天王のような躍動感はありませんが、静かな中の怖さがあります。これもぐるりと回り込んで見れるのが貴重です。袖のプリーツ(?)が非常に細かく美しく作り込まれています。
国宝の伝橘夫人念持仏厨子に納められた阿弥陀如来および両脇侍像 (181)の前には、奥様方の人だかりができてました。それもそのはず、コンパクトで精緻で美しいですね。今回の展示では、厨子からお出ししてガラスケースに陳列されているので、間近から目を凝らして見ることができました。
182-187は、六観音とも呼ばれている、飛鳥時代の一木彫の像。元々はそれぞれ違うところに安置されていましたが、現在は大宝蔵院にまとめられており、いずれも作風が似ています。見ているとこちらも微笑み返したくなるほっこりしたお姿です。
最後は三重県は見得寺(けんとくじ)の薬師如来坐像。「なんで三重県の仏像がこんなところに?」と思うかもしれませんが、さもありなん。実はこの仏さま、平成10年に「発見」された、白鳳時代の仏様なのです。しかも像高80cmと大きく、上の六観音にそっくり。まだまだ新発見があるんですね〜。
以上、仏像だけの感想でしたが、今回の展覧会ではそのほかの展示物もいっぱい。コロナじゃなかったら大混雑かも。
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