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2022年4月の6件の記事

2022/04/30

【温泉】GoToで行った扉温泉・明神館が良かったので、今度は自前で再訪

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 昨年11月にGoToキャンペーンを利用して実質半額で泊まった扉温泉・明神館、とってもよかったので、今回は自前で行ってきました。前回の記事はこちらです(【GoTo温泉】一度泊まりたかった自然の中のリゾート・扉温泉明神館(★★★★★)2022/01/10)。

【旅館名】明神館
【温泉名】扉温泉
【住所】長野県松本市入山辺8967
【公式サイト】・http://www.tobira-group.com/myojinkan/
【宿泊日】2021年4月上旬
【泉質】アルカリ性単純温泉
【料金】スタンダードプラン、お鷹洋室:3,3100円くらい。 

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 今回泊まったお部屋です。料金のお安いお鷹棟を選択。窓の外を薄川が流れ、その向こうは樹林に覆われた山が広がります。4月上旬のこの時期、東京はすっかり春ですが、標高の高いここはまだ冬枯れで、新緑はまったく見当たりません。

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 前回は和室だったので、今回は洋室にしてみました。

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 こちらは寝湯「空山」です。冒頭の写真はこの宿の名物、反露天の立ち湯「雪月花」です。もうひとつ、露天風呂付きの大浴場「白龍」があります。

 無色透明のお湯は微かに硫黄の香りがし、お肌がすべすべになるアルカリ性の湯。ぬるめの設定で、ゆったりいつまでも入ってられます。

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 夕食も、前回は和食だったので、今回はフレンチにしてみました。会場はナチュレフレンチ「菜」です。

 メニューには食材の名前が書いてあるだけで、どのような料理かは出てきてからのお楽しみ、という趣向になっております。料理はその都度説明してくれるのですが、ぽん太には覚えられませんでした。

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 ミルフィーユ状になった大根のサラダ。崩していただきますが、いろいろな色や種類の大根が入っていて、大根の食べ比べです。

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 以下、説明なしで写真をご覧ください。

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 美味しゅうございました。食レポ能力はありません。

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 夜の立ち湯です。

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 朝食は今回も洋食。会場は昨日と同じナチュレフレンチ「菜」です。エッグベネディクトが美味しそうですね。

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 パンも冷めないように布の袋に入って出てきます。

2022/04/29

【神像】重文を含む神像群は必見!・特別企画展「箱根神社の御神像」箱根神社宝物館

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 久々に箱根神社を訪れたところ、宝物館で神像の特別展が開かれておりました。「箱根神社神像群」と呼ばれる神像8体のうち7体が公開されているとのことで、当然重要文化財も含まれております。

 前回訪れたのは2016年10月末。その時の記事はこちらです(【神社】万巻上人坐像(国重文)箱根神社(神奈川県箱根町)2017/05/13
)。その時万巻上人にお会いしたのは覚えてますが、神像を見たかどうかは、認知症の入り口に立つぽん太には定かではありません。

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 当日は春休みで天気も暖かく、平日だというのに箱根神社は家族連れで賑わっておりましたが、宝物館は我々以外に二組の見学者しかおりませんでした。

【展覧会】特別企画展「御鎮座1265年特別公開 箱根神社の御神像 ー信仰と歴史ー」
【会場】箱根神社 宝物館
【住所】神奈川県足柄下郡箱根町元箱根80-1
【拝観日】2022年3月下旬
【拝観】大人500円
【公式サイト】・https://hakonejinja.or.jp/hakone/#link_05
【仏像】◎重文 ◯県指定
箱根神社神像群
◎男神坐像 木造 彩色 平安時代 お姿
◎女神坐像 木造 彩色 平安時代 お姿
◯女神立像 木造 彩色 鎌倉時代 お姿
◯男神坐像 銅鋳造 鎌倉時代 お姿
 僧形神立像 木造 彩色 鎌倉時代
 男神立像 木造 彩色 鎌倉時代
 女神立像 木造 彩色 鎌倉時代

 柿本人麻呂像 木造 室町時代

常設展
◎万巻上人坐像 平安時代 お姿
 役行者像・前鬼像・後鬼像
 親鸞聖人像

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 第一駐車場の近くにある宝物館です。2007年の新築。あんまり風情はありませんね。でも中身はけっこうすごいです。こちらの有隣堂のサイト([座談会]箱根神社とその遺宝 −秘蔵されていた平安時代の神像を初公開−)、宝物館ができた時の座談会で、とても興味深い内容なので、一読をお勧めいたします。

 箱根神社は、奈良時代の757年、万巻上人(まんがんしょうにん)によって創設されました。箱根山に入峰した万巻上人は、箱根の最高峰・神山の三神、比丘(びく)形(僧形神)、宰官(さいかん)形(男神)、婦女(ふじょ)形(女神)を祀る社殿を造営し、「箱根三所権現」と消しました。以後、さまざまな時代に、信仰の対象となる神像が作られました。

 現在は8体の神像が伝えられております。今回公開されている8体から柿本人麻呂像を除いた7体と、今回公開されなかった室町時代前期の木造男神像1体の、計8体です。

 平安時代の男神坐像・女神坐像は重要文化財。お顔が似ていて同一の作者により、構造から11世紀頃の作と考えられるそうです。男神の鼻が高いことから外来神の特徴が伺えるそうです(文化財オンライン)。高貴で端正な素晴らしい像ですね。ぽん太は、なんか天皇陛下とお顔の雰囲気が似ているような気がします。体の表現が同時代の仏像に比較して大雑把なのは、下手なわけでも手を抜いたわけでもなく、もともと神様というものが姿形のないおぼろげなものだからですね。

 神奈川県指定文化財の鎌倉時代の女神は、プックラしたおばさんが片袖を頭にかぶってます。なんか能だか神楽だかでこんなポーズを見たことある気がするのですが、ぐぐっても見つかりません。

 鎌倉時代の銅像の男神坐像は、ちまちまっとしたお顔に、眉毛や唇の紅の彩色が残っていて、ちょっと嫌ったらしい貴族みたいな雰囲気です。

 残りの鎌倉時代の僧形神、男神、女神はよく似たお姿で、三体で祀られていたと思われます。リアルでありながら、ちょっと素朴な像。

 威厳や厳しさ、崇高さを感じさせる仏像と違い、なんかここの神像はほっこりしていて心が安らぎますね。

 さて、箱根神社神像群には含まれませんが、柿本人麻呂像は、片膝立てて足を崩し、ツンと上を向いたちんちくりんのおっさん。なんでこんな格好をしているのかと思いましたが、ぐぐってみると、人麻呂像は絵も彫刻もみんなこんな感じ。なんでやねん。よくわかりません。

 ただ一つ残った室町時代の男神立像、なぜ今回は公開されなかったのか……。ぼろぼろなのでしょうか? いつかお会いしたいです。

 2Fの常設展に行き、まず重文の万巻上人に再会。福禄寿みたいに頭が大きく、上体が細身ですっくと立ったお姿ですが、キャラが立ってます。このお方のおかげで今の箱根がある。ありがたい限りです。

 役行者像・前鬼像・後鬼像は、室町だか江戸だかの作で、頭巾をかぶり脛を出した定型的なお姿。前鬼・後鬼は両方とも男の姿で、持ち物も失われたのか、もともとないのか、ありません。お口は阿吽になってますね。

 親鸞聖人像は、聖人自作の像と伝えられているそうですが、表情も衣服もちょっとつたない感じ。

2022/04/28

【温泉】湯河原温泉 伊藤屋・お見送りが嬉しい登録有形文化財の老舗旅館

 オミクロン株が収まりつつある3月下旬、ぽん太とにゃん子は湯河原の伊藤屋に宿泊してきました。9年ぶり2回目。前回宿泊時の記事はこちらです(→【温泉】藤村も愛したレトロな宿/湯河原温泉伊藤屋(★★★★)/付:小梅堂・福泉寺の首大仏、2013/12/18)。

 明治21年創業、島崎藤村をはじめ多くの文人が宿泊した老舗旅館。大正時代に作られた客室は、登録有形文化財に指定されております。

【旅館名】伊藤屋
【温泉名】湯河原温泉
【住所】神奈川県足柄下郡湯河原町宮上488
【公式サイト】・https://www.itouya-net.jp
【宿泊日】2022年3月下旬
【泉質】ナトリウム・カルシウム-塩化物・硫酸塩温泉(低張性弱アルカリ性高温泉)
【宿泊料】23,650円程度(スタンダードプラン、【本館17.19番】大正十五年建築次の間付(登録有形文化財)、2人1室、1人分料金)

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  海沿いはすっかり開発されてしまった湯河原ですが、このあたりは古い建物が何軒か残っていて、なつかしい雰囲気が漂います。玄関と向かって左の建物は新しいですが、右側の本館と、正面奥に見える建物は、大正時代の部分が残っています。

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 古い建物が好きなぽん太とにゃん子は、登録有形文化財に指定された本館の客室を選択。正面の庭に面した17番のお部屋に通されました。落ち着いた和室で、障子や欄間の桟が細かくつくりこまれています。

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 床の間も付書院までしっかり作り込まれています。旅館ながら格式のある造りですね。

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 ガラス戸の桟の配置も面白いです。

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 欄間の彫刻も見事ですね。

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 この何気ない石垣も登録有形文化財です。素材は名石のひとつ小松石で、真鶴で採れる安山岩。一つひとつの石がかまぼこのように膨らんでいるのが特徴です。昭和初期のものとのこと。

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 さてお風呂は、本来は『男女別内湯+貸切風呂×2」という構成になっているのですが、コロナのおり、全ての浴室を無料貸切で利用するパターンになってました。まずは露天風呂ですね。開放感がないのは湯河原の温泉街では仕方ないですが、気持ちいいです。湯河原独特の肌に優しい柔らかいお湯です。

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 無色透明でちょっと味がします。アルカリ性のすべすべ系で、お肌がしっとりとします。意外と成分も濃く、湯口などに白い結晶が析出しています。

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 源泉温度が高いため加水をしております。循環濾過・消毒が入っているのがちと残念。

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 こちらは半露天の貸切風呂。

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 曲線的な形と、レトロなタイルが味わいある内風呂。大浴場を貸し切れるのはちょっと贅沢。

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 こちらはもう一つの内風呂。岩風呂になってます。

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 夕食です。温泉らしく華やかでウキウキしてきますね。メニューにない金目鯛の煮付けが付いてます。

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 こちらがメニューです。

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 日本酒の飲み比べを注文。地元神奈川の酒は抑えながら、全国の名酒を取り混ぜています。

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 桜蒸しなどの、この季節らしいお料理。

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 この葉っぱみたいなのは、サヨリの木の葉造り。不思議なかたちですね。ぽん太は初めていただきました。

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 デザートは、地元湯河原のみかんゼリーでした。

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 館内探検です。奥の客室に続く階段。手前側の蹴込板(縦方向の板)は擬木(ぎぼく)ですね。これは「偽物」ではなく造形的な「意匠」です。

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 面白い形の室内窓。

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 超レトロな流しです。

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 朝食です。干物が美味しゅうございました。

 出発時には、高齢のご主人と女将が見送って下さいました。そういえば9年前もこうだったな〜。お元気で何よりです。素晴らしい笑顔をありがとうござました。

2022/04/27

【温泉】湯沢の山の中の一軒宿、眼病に効く掛け流しの温泉・貝掛温泉

 東京都のまん延防止等重点措置が解除されたので、ぽん太とにゃん子は解き放たれるかの如く温泉に向かって飛び出しました。雪が見たいということで新潟県の貝掛温泉に行ってきました。これまで数回訪れたことがある宿ですが、こういうときは新しい宿の開拓よりも、ついつい安心できる宿を選んでしまいます。前回訪問時の記事はこちらです。

【温泉】「明治時代部屋」は雰囲気あり。夏も良い貝掛温泉(★★★★)(2012/08/02)

【旅館名】貝掛温泉(かいかけおんせん)
【温泉名】貝掛温泉
【住所】新潟県南魚沼郡湯沢町三俣686
【公式サイト】・https://kaikake.jp/
【宿泊日】2022年3月中旬
【泉質】ナトリウム・カルシウム-塩化物温泉(低張性弱アルカリ性温泉)
【宿泊料】19,250円程度(2人1室、1人分料金)

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 宿に到着です。今年は雪が多かったので、3月中旬になってもこんなに雪が残ってます。

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 玄関のある建物は、ぽん太が最初に泊まった時は真新しい和風旅館という感じですが、北国の風雪にさらされて、重厚な雰囲気になりました。あれはいつ頃だったのかな? 宿のホームページには築15年くらいと書いてあるけど、もっと古いのでは。ググってみると平成5年築と書いてあるサイトがありましたが(→秘湯感動紀行)、そうすると約30年前。それくらいだった気がします。

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 こちらは明治2年築の本館のたたずまい。ノスタルジックでい〜ですね〜。

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 泊まったのは玄関棟のお部屋。コロナの折り、布団はすでに敷いてあります。

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 温泉も素晴らしいです。露天付きの内湯が二つあり、時間で男女入れ替えとなります。広い方は写真を撮るチャンスがなく、狭い方の写真です。

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 開放感のある露天風呂。まだ雪が残っております。

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 無色透明で、ちょっと味があります。弱アルカリ性の柔らかいお湯。泉温は36.2度と低く、いつまでも入っていられます。ポンプを使わない自然湧出ですが、驚くべきは湧出量。毎分400リットルです。日本源泉湯宿を守る会の認定宿で、温泉の質は保証済み。

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 お食事どころの入り口で、イワナが炭火で焼かれています。もちろんあらかじめ焼いてあると思いますが、いい演出ですね。

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 新潟県は酒どころ。地元のお酒3種飲みくらべセットを注文。

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 お食事の献立です。

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 貝掛名物の薬膳玄米粥です。

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 鍋物は「日本海産鰤と佐渡牡蠣の粕鍋」。山深くにある宿ですが、新潟県は海産物も豊富。違和感はありません。

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 ご飯はもちろん魚沼産コシヒカリですね。ぽん太の好きなちょっと硬めの炊き上がりで、とっても美味しいです。

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 雪兎をデザインした「コシヒカリアイス」。窓の外の雪をバックにパチリ。

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 不動明王が祀られてますね。

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 朝食は、ノドグロの干物や、新潟名物栃尾揚げが美味しゅうございました。

2022/04/07

【登山】高尾山で初めて見たスカシダワラ(クスサンの繭)と福徳弁財天洞

 3月中旬のある日、ぽん太とにゃん子は、運動不足解消のために高尾山に出かけました。

 

【山域】奥多摩・高尾
【山名】高尾山(599.3m)
【登山日】2021年3月中旬
【天気】晴れ
【登山者】ぽん太、にゃん子
【コース】高尾山口駐車場11:57…(稲荷山コース)…13:34高尾山14:21…14:47高尾山薬王院15:01…15:14霞台園地…15:36琵琶滝…16:07高尾山口駐車場

 さて、登山口に立ってどの登山道を使おうかと思案。4月中旬並みの暖かい日だったので、平日とはいえハイカーも多かろうと思い、道幅の広い稲荷山コースを選びました。

 でも当日の暖かさとは裏腹に、花は全く咲いておらず、スミレの一輪もありませんでした。これまで寒い日が続いていたので、急に咲けといわれても、花の方も準備ができていなかったのかもしれません。

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 にゃん子が不思議なものを発見! ぽん太も初めてです。

 木の枝についた、落花生ほどの大きさのカゴのようなものです。なんか気持ち悪る。昆虫系かしら、それとも蔓性植物の実か何か?

 帰宅してから調べてみると、クスサンという蛾の繭で、スカシダワラという名前がついているそうです。「クスサン - Wikipedia」によれば、7月前半ごろに繭が作られ、9月〜10月に羽化するそうです。どこかに穴が開いていて羽化した後なのか、羽化する前に死んでしまったものなのか、よく見なかったので今となってはわかりません。

 それにしても現代芸術のような見事な造形ですね。にゃん子えらい! よくぞ見つけた。

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 山頂は、高校生だか大学生だかの団体がいて、けっこう混んでました。晴れですが雲が多く、富士山は見えなくて、みんな残念がってました。適当な場所を見つけて昼食をとりました。

 帰りは、これまで歩いたことがない道ということで、3号路と1号路の間あたりにある、薬王院に至る道を選択しました。道自体は山頂に至る資材運搬用の車道という感じで趣きはなかったのですが、思いがけない発見がありました。

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 それがこれ! この道は高尾山薬王院の裏手に降りてくるのですが、そこに「福徳弁財天洞」というものがありました。多摩地区に生息するぽん太とにゃん子は、これまで数えきれないほど高尾山に登っておりますが、こんなスポットがあるとは知りませんでした。

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 石段の向かって左に、新しそうな石像があります。琵琶を弾く女性、弁天様(=弁財天)ですね。隣にある案内板によると、この洞窟の中には弁財天が安置されていましたが、いつの時か無くなっていました。薬王院の27世範秀僧正が昭和天皇の即位を記念して、昭和元年に新たに弁財天像を造って安置したとのことです。

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 ということで、石段の上の洞窟に入ってみます。

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 入り口には一段下がってアーチがあります。お約束どおり、ぽん太は頭をぶつけました。アーチの上にはお地蔵様や仏具が置かれています。

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 洞窟は、十メートルほど進んだところに柵があって行き止まりになっており、そこになにやら仏像が置かれています。暗くて見えませんが、写真を撮って後からみると、このような石仏でした。これも弁財天ですね。上記の解説文に書いたあった昭和元年に造られた弁財天は、洞窟の外にあった弁財天ではなく、洞窟の中のこの弁財天だったのですね。

 多くの人は弁財天というと、美しい女神様が琵琶を抱いて七福神の船に乗っている姿を思い浮かべるかと思いますが、元々はヒンズー教の女神サラスヴァティーが仏教に取り込まれたものです。像容は、2臂像(腕が2本)と8臂像(腕8本)に別れます。2臂像はよく見る琵琶を弾く女神の姿で、音楽や学芸の神です。弁財天はヒンズー教ではサラスヴァティー川の化身とされていたことから、川辺や湖のほとりに祀られます。一方、8臂像は手に弓・箭・刀・矟(さく)・斧・長杵・鉄輪・羅索などを持ち、戦いの神の性格を持っております。ひとつの神様に、性格がまったく異なるふたつのお姿があるというのは面白いですね。

 上の写真を拡大してよく見ていただくと、頭の上にとぐろが巻いてあって、翁の顔があるのがわかります。これは蛇の体に翁の顔を持つ宇賀神(うがじん)と呼ばれる正体不明の神です。弁財天と宇賀神は日本で中世以降に習合し、宇賀弁財天と呼ばれます。頭上に宇賀神を戴き、持ち物にも宝珠や鍵が加わり、福徳神・財宝神としての性格が加わっております。高尾山の弁財天の洞窟は「福徳弁財天洞」と名付けられておりますので、宇賀弁財天でピッタリですね。

 ただ現在の弁財天は、上に述べたように昭和元年に造られたものなので、元々の弁財天がどのようなお姿でいつ頃作られたものなのかはよくわかりません。

 洞窟の中に弁財天が祀られる例は各地にあるようで、鎌倉の銭洗弁天が有名ですね。洞窟から湧き出る水でお金を清めると、金運が上昇するそうです。高尾山のこの洞窟からかつて水が湧き出ていたかどうか、ぽん太にはわかりません。

 なんでこんな山の上に弁財天が?という疑問もあるかと思いますが、修験道の始祖・役行者(えんのぎょうじゃ)が弁財天と出会ったという言い伝えがある六甲山周辺には弁財天を祀る寺が多くありあす。また大峰山の入り口にある奈良県天川村にも、天河大弁財天社があります。高尾山も山岳修験道が古くから行われていた山です。薬王院の本尊・飯綱大権現の起りである信州の飯綱山は役の行者によって開かれたとされており、神変堂(じんぺんどう)には神変大菩薩(=役行者)が祀られております(後述)。高尾山の弁財天は、役行者と関係があるのかもしれません。

 もうひとつ思い浮かぶのは、高尾山が古くから滝行の場であったという事実です。滝といえば水です。しかも現在高尾山に残るふたつの水行道場の滝の名は、「琵琶」滝と「蛇」滝。う〜ん、な〜んか宇賀弁財天っぽいですね〜。でもこれはぽん太の推測。信じるも信じないもあなた次第です。

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 薬王院飯綱権現堂です。もちろん立派な神社です。でも高尾山薬王院はお寺ですね。日本伝統の神仏習合がしっかりと残っているところが嬉しいです。彫刻の飾りがとても見事です。案内板によると、写真の拝殿は1753年(宝暦3年)に建てられたそうです。

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 さて、こちらが先に触れた「神変堂」(じんぺんどう)です。薬王院から降って行った場合、浄心門の手前の右側にあります。神変大菩薩(=役の小角=役行者)を祀っております。

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 中には役行者が祀られておりますが、ガラスの反射でよく見えません。見える範囲で、修験道の姿で岩座に座り、頭に頭巾。典型的な像容と思われます。

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 お堂の前には、左右に善童鬼(ぜんどうき)・妙童鬼(みょうどうき)の石像があります。前鬼・後鬼(ぜんき・ごき)とも呼ばれ、役行者が従えていた夫婦の鬼です。一般的な像容は、善童鬼は赤鬼で、役行者の進む道を切り拓くための斧をもっています。妙童鬼は青鬼で、霊水を入れた水瓶を持っています。この二つの像も、それに従っておりますね。

 さて帰路は、いつもの琵琶滝に抜ける道を下り、有喜堂の蒸し立てのまんじゅうを食べ、高尾山温泉・極楽湯で汗を流して帰りました。

2022/04/05

【仏像】@東京国立博物館・総合文化展2022年3月上旬

 3月中旬、特別展「空也上人と六波羅蜜時」を見学したあと、総合文化展(いわゆる常設展)へ。常設展といっても、定期的に展示替えがなされ、重要文化財などが次々と展示されるので、見逃す手はありません。

【展覧会】総合文化展
【会場】東京国立博物館 本館1室、3室、11室
【会期】
 1室:2022年2月1日〜3月13日
 3室:2022年2月1日〜3月13日
 11室:2022年2月1日〜5月8日
【拝観日】2020年3月上旬
【観覧料金】総合文化展:一般1,000円 (特別展入館者は、無料で見学できます)
【作品リスト】
 ・1室作品リスト
 ・3室作品リスト
 ・11室作品リスト
【仏像】◉国宝 ◎重文
1室
 菩薩半跏像 那智山出土 飛鳥時代・7世紀 E-14846 お姿と解説
 如来立像 法隆寺献納宝物 飛鳥時代・7世紀 N-193 お姿と解説
 聖観音菩薩立像(模造) 1躯 原品=奈良・薬師寺 昭和時代・20世紀、原品=飛鳥〜奈良時代・7〜8世紀 C-1830
3室
 聖徳太子立像 鎌倉時代・13世紀 C-1866 お姿
11室
◎弘法大師坐像 長快作 鎌倉時代・13世紀 京都・六波羅蜜寺蔵
◎吉祥天立像 鎌倉時代・13世紀 京都・六波羅蜜寺蔵
 奪衣婆坐像 康猶作 江戸時代・寛永6年(1629) 京都・六波羅蜜寺蔵
 司録坐像 江戸時代・17世紀 京都・六波羅蜜寺蔵
 司命坐像 鎌倉時代・13世紀 京都・六波羅蜜寺蔵
 薬師如来坐像 奈良時代・8世紀 C-318 お姿
◎釈迦涅槃像 鎌倉時代・13世紀 奈良・岡寺蔵
◎大日如来坐像 平安時代・11〜12世紀 C-311
◎十一面観音菩薩立像 平安時代・11世紀 奈良・當麻寺蔵 お姿
 阿弥陀如来坐像 鎌倉時代・12〜13世紀 静岡・願生寺蔵
◎広目天立像 平安時代・9世紀 福島・勝常寺蔵 お姿(向かって左です)
 千手観音菩薩坐像 南北朝時代・14世紀 C-306
 四天王立像 鎌倉時代・14世紀 文化庁蔵

 

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 1室には、飛鳥時代の金銅仏。あ、総合文化展は特に撮影禁止の表示がない場合、原則として写真撮影可です。これもありがたいですね。

 この時代らしい伸びやかでおおらかな仏さま。キャプションに、この仏像は那智山で出土したもので、56億7千万年後の弥勒菩薩がこの世に現れるのに備えて埋められたものだ、と書かれているのを読み、ぽん太はちょっとびっくりしました。だいたいこのような仏さまは奈良にあるもので、和歌山の熊野にある那智山から「出土」というのは珍しいです。飛鳥時代に熊野に仏像が祀られていたのでしょうか。当時の熊野は修験道の世界だったような気がしますが。また、未来に世に出ることを願って埋めたという点についてですが、チベット仏教では埋蔵経という考え方がありますが、経典を土の中に埋めておくと、それが必要となった時代に発見されるというものです。中には新作の偽物の経典を「大昔に埋められた埋蔵経を発見した」と言い張るようなやからもいたようですが、それは置いといて……。チベットでそういうものがあるのは知っていましたが、日本にも似たようなものがあるとは知りませんでした。しかも仏像を埋めるとは?

 菩薩半跏像 - ColBaseというサイトを見て腑に落ちました。飛鳥仏だから飛鳥時代に埋められたのかと思い込んでましたが、埋められたのは平安時代後期だったんですね。末法思想の元で、経典を後世に伝えようという考えから経典を塚に埋納するという信仰形態が生まれ、その塚を「経塚」と呼ばれました。経塚 - Wikipediaによれば、日本で最古のものは1007年に藤原道長が造営した金峰山経塚だそうです。

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 如来立像も同じく飛鳥時代のものですが、木造なのが珍しいです。像高約50センチとけっこう大きめです。同時代の渡来仏がまるで宇宙人のようなデフォルメされたスタイルなのと違って、日本風な素朴なお姿です。施無畏与願印が見慣れたものとは左右が逆なのも、古さを感じさせますね。もともとは法隆寺にあったもので、いわゆる「法隆寺献納宝物」のひとつ。法隆寺献納宝物とは、明治11年(1878)に法隆寺から皇室に献納された三百余の宝物のことで、その経緯はよくわかっておりません。戦後になって国有となり、東京国立博物館の所蔵となりました。

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 3室には聖徳太子の立像が安置されております。いわゆる「二歳像」で、数え年2歳の聖徳太子が旧暦2月15日の涅槃会(お釈迦様が涅槃に入られた=亡くなられた)の日に、東の空に向かって「南無仏」と唱えたという伝説に基づく、太子像の定型のひとつですね。本像は、鎌倉時代らしいリアルで迫力ある造形が魅力。お肌は子どもらしくプリプリしてますが、厳しい表情はとても2歳に見えないですね。

 4室に入って、六波羅蜜寺像の5体に関しては以前のブログ(【仏像】六波羅蜜寺の宝物館が引っ越し公開・特別展「空也上人と六波羅蜜寺」&総合文化展@東京国立博物館(2022/03/31))に感想を書きましたので、そちらをご覧ください。

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 薬師如来坐像は、奈良時代8世紀の木心乾漆像です。像高1mあまり。ちょっと面長で細くて切長の目ですが、あんまり威厳は感じられず、「あちゃ〜やっちゃった〜」って言っているお父さんのようです。衣紋の表現も薄くて様式的。胸も左右に分かれてませんね。右手の施無畏印もちょっと高さが低くて手のひらが内側を向いています。施無畏印の意味は「怖がらなくてもいいよ」というメッセージですが、もとから怖くないんですけど。なんかちょっと気が小さそうな仏さまですね。

 

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 釈迦涅槃像は奈良の岡寺の所有で、東京国立博物館に寄託されているもの。重要文化財です。像長約170cmでほぼ等身大。お釈迦様の入滅のお姿ですが、絵画が圧倒的に多く、彫像は珍しいそうです。そういえばぽん太も日本では見た記憶がありません。タイだかネパール・チベット・ミャンマーだか覚えてませんが、海外では馬鹿でかいのを見た記憶があります。右手を頭に添えたポーズは鎌倉時代以降に多いそうで、じっさい鎌倉時代の作ですが、線が浮き出したような衣紋の表現や、ゆったりした感じなど、ぽん太はなんかガンダーラ風な印象を感じます。すばらしい仏さまですね。

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 このとっても優美な大日如来様は、ぽんたはなんと3回目のご対面。っていうか、いつも展示されてるんじゃないの? 東京国立博物館の推しメンか? 平安時代後期の定朝様の美仏です。

 奈良の當麻寺の十一面観音様というと、本堂(曼荼羅堂)にいる通称・織姫観音(お姿)が有名ですが、それとは別の十一面観音様が来ておりました。撮影禁止だったので、写真はありません。「當麻寺だね〜」などと言いなが見ていたのですが、残念ながらゼ・ン・ゼ・ン覚えてません。もったいないことをしました。ネットで写真を探しても全く見つかりません。真剣に見ておけばよかった。1909年の重文指定となっているので、現在まで続いている1950年(昭和25)施行の文化財保護法の前の、1929年(昭和4)施行の国宝保存法のさらに前の、1897年(明治30)古社寺保存法時代の「国宝」指定ですね。現在は東京国立博物館に寄託されているようです。

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 静岡・願生寺の阿弥陀如来は、鎌倉時代の作。なんかこんな相撲取りいなかったけ?という感じの、力強く写実的な像です。

 次は福島県は勝常寺の広目天(重文)。ぽん太は勝常寺は、2018年に訪ねたことがあります(【仏像】国宝・重文の平安仏がいっぱい 勝常寺(福島県湯川村)(2018/09/06))。国宝・重文の平安仏がいっぱいありました。そこで四天王像を見たのですが、広目天だけは東博に寄託中とのことで拝むことができませんでしたが、こんかい初めてお目にかかることができました。お姿(一番上です)をご覧ください。す・ご・い迫力ですね〜。顎から喉にかけての肉付きが、マツコデラックスを超えてます。

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 さて、最後は美しい仏さまでお口直しを(わ〜広目天様ごめんなさい、鶴亀鶴亀)。南北朝時代の千手観音菩薩坐像と、鎌倉後期の四天王です。組み合わせれて配置されておりますが、元々は別の仏さまです。でも、ともに時代が近く、流麗で装飾性が際立っていて、いい組み合わせですね。大きさもちょうどいいです。千手観音さまは院派によるもので、光背の繊細な透かし彫りも見事です。この像も以前にお目にかかった気がします。東博の仏像の学芸院さんは、美仏好きか? 四天王は、躍動的なポーズと執拗な甲冑の表現が素晴らしく、現代のアニメに通じます。中尊と脇侍の、静と動の対比も面白いですね。

 四天王像は文化庁が所有とのこと。へ〜。文化庁が所有する仏像があるのか。ぐぐってみると(文化庁保管文化財一覧 - Wikipedia)、国宝・重要文化財に相当する文化財を売り渡す申し出があった場合、国が購入して文化庁が保管する制度があるそうで、順次国立博物館等に移管されるのだそうです。もうひとつ、国の機関が発掘した埋蔵文化財で所有者が明らかでない場合は国に帰属するという法律があるそうで、それによって文化財所有になっている文化財があるそうですが、それはぽん太の興味の範囲外です。

 国有品図版目録(令和3年3月現在)文化庁文化財第一課(pdf)を見ると、13ページに出てますね。像内墨書により鎌倉時代(元徳3・1331)の作で、平成12年買い取り、東京国立博物館貸与だそうです。

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